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決勝戦 1

レンたちが危ない大冒険をして手に入れた瘴気を増幅させるガラス玉の入手場所を確定するのに、かなり手間取ってしまった。


王宮の騎士と我らブルーベル辺境伯の騎士たちを総動員して、剣術大会の屋台や出店を探しまわり、ようやくみすぼらしい商人がひっそりとガラス玉のアクセサリーを売っていたことを突き止めた。

幾人かの出店の商人が証言したが、その怪しいガラス玉を売っていた商人の顔や素性を知る者はいなかった。


そして、剣術大会が盛り上がる決勝日間近に、その姿は煙のように消えていた。


「それで、その商人が売ったのはホワイトホース家の令嬢たちだけなのか?」


「さあな、証言してくれた者たちはほとんど客などいなかったと言っている。買った者が他にもいる可能性は高いが、当の本人が姿を消してしまったから、もうわからないだろう」


アリスターの問いに、苦々しい思いで答えた僕は、今日の決勝に備えて防具のチェックを行っている。

かなり年下の子たちと剣を交わすので、手加減というか、一打か二打は受けようと決めていた。


気にしていないようで、試合中に浴びせられる罵声に、少し落ち込んでいるのかもしれない。


アリスターは反対に年上で戦いの経験値も違う相手との決勝だ。

念入りに武器と防具の点検をしないといけないだろう。


本来なら、アリスターは決勝まで進める腕前ではないが、なぜか相手が反則したり挙動不審にも審判に手を出したりして失格者が相次いだから、アリスターが決勝まで残ることができた。


ぞわり。


なんだか嫌な予感が背中を這いまわる。


「ヒュー。大丈夫だ。ダイアナ様がいないのは予定外だったが、チルとチロが水の精霊王様を連れてきてくれる。そうすればレンの力を使わずに瘴気を浄化ができるさ」


「ああ……。そうだな。きっと水の精霊王が浄化してくれるだろう」


でも、自分の心のどこかで水の精霊王は間に合わない気がしている。


レンの体はまだ小さい。

剣術大会の会場から溢れだした瘴気が会場の周りを漂い始めているのに、レンが浄化の力など使ったら……。


ぞわり。


また……嫌な予感が……。





























わああああっ!


今日も剣術大会の会場は大賑わいですっ。


兄様とアリスターは無事に決勝まで進むことができたので、ぼくが観戦することもお許しがでました。

よかった。


でも、瘴気の件があるからって、兄様も父様もお屋敷でお留守番してなさいって言ってたんだよ。


ぶーっ。


ぼくは、兄様とアリスターそれぞれの決勝戦を楽しみにしていたんだから、絶対に応援するの!


我儘を言って言って、うるうると泣く寸前まで我儘を言って、やっと許してもらいました。


残念なのは、王都は危ないからと、母様とリカちゃんが剣術大会に来る予定がなくなってしまったこと。


むむむ、残念です。


兄様とぼくとリカちゃんで王都をお散歩したかったな……。


お祖父様とお祖母様は王都に来られたけど、瘴気の件で父様と一緒に王宮へと行ってしまった。

どうやら、かわいい孫の試合を観戦するために王都に来たのではなく、瘴気の解決のために召集されたみたい。

お仕事たいへんね。


「あら、おかしいわね」


「ん? どうした、紫紺」


会場を見下ろせる大きな一枚窓に張り付いていた白銀と紫紺が、一か所をジッと見つめてごにょごにょ話している。


「どうちたの?」


ぽてぽてとぼくが歩いて近づくと、紫紺はぎゅむと顔を顰めた。


「あそこよ。例のホワイトバード公爵家の寄子貴族たちがいるところ」


ツンツンと紫紺の爪が示す場所へ、ぼくも顔を向ける。

あそこは黒いモヤモヤがもわもわっと湧いているから、あんまり見たくないけど……あれ?


「くろいモヤモヤ、ないの?」


観覧席にいる子どもたちは変わらず、つまらなさそうに試合を見ながら、時々文句を言っているようだ。

でも、黒いモヤモヤは出ていない。


「んゆ? にいたま、しあいじゃないから?」


あの子たちは兄様やアリスターの試合のとき、めちゃくちゃ悪口を言っていた。

それに関しては、ぼくは許さないぞ! ぷんすこ!


「黒いモヤモヤがない? それはレンじゃないと気づかないわ。アタシが注目したのは、あのヒュー大好きお嬢さんが自分の取巻きに囲まれているみたいなの」


んゆ?

だって、あの子は周りに友達をいっーぱい連れて、女王様のようにえばっていたよ?


ベターッと窓に張り付いて、あの子がいる場所を探す。


「あっ!」


兄様ぐらいの男の子が丸く囲んでいる真ん中に、あの女の子が一人で立っている。


「あんまり、仲の良さそうな雰囲気じゃないな」


ぼくの後ろでフンッと鼻で笑う白銀。


セバスはぼくたちの会話を聞いて、控えていたバーニーに矢継ぎ早に指示を出している。


「なんか、へん」


あの子が友達に嫌なカンジで囲まれているのも、黒いモヤモヤがないのも、なんか変!


ぼくが戸惑っていても、剣術大会の試合は進んでいく。

審判の掛け声で決勝戦の出場選手が両側からゆっくりと歩いてくる。


今日最初の試合は、ヒヨコクラスの決勝戦で、右側の出入り口から兄様の姿が見えた。

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