表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
449/473

レンのスパイ大作戦 6

白銀と紫紺が弾丸のように飛び出し、問題の子どもたちの集団の中を走り抜けている間、ぼくはとってもピンチです。


あわわわっ、どうしよう。


抱っこしたディディの体をギュッと抱きしめるけど……ディディってトガゲじゃなくて精霊だから、他の人には見えないんだった!


ううーっ、白銀と紫紺が喧嘩を売ってしまった少年たちに、ぼくはギロリと睨まれています。

スパイ大作戦も失敗しちゃったし、頼りの白銀たちはどこかへ行ってしまうし、ぼくはどうしたらいいのかな?

う~んう~んと頭を悩ましていると、誰かが庇うようにサッとぼくの前に立ちはだかる。


「お前たちなんかに、俺様は負けないぞ!」


バッと両腕を広げて少年たちに威嚇する真紅の姿に、ぼくはホッとして嬉しくて足から力が抜けてしまった。


「しんくぅ」


「大丈夫だ、レン。俺様が守ってやるぞ」


フンフンッと真紅はやる気を漲らせているが、対峙する少年たちは真紅の姿にちょっと困惑している。


「……ガキ相手は、ちょっとな」


「ああ。さっきの奴らならともかく、こんなちびっ子はちょっとな」


コソコソと相談しているが、こちらの耳にもバッチシ聞こえています。


「誰がチビだーっ!」


やあああっと真紅が両腕をブンブン振り回して突撃していくけど、一人の少年にオデコを押さえられてしまい、その勇ましい握り拳は届かない。

チーン。


「貴方たち、何をやっているの」


真紅をどうしようかと思っていた少年たちは、その凛とした声に、真紅からパッと手を放しササッと左右に避け道を空けた。


「ミランダ嬢」


「ミランダ嬢、どうぞ」


数人の少年の呼びかけにその人……ミランダ様は鷹揚に頷き返して悠々と歩いていく。

その少女に気づいた子どもたちも、左右に避けて頭を軽く下げミランダ様を恭しく迎えている。


「あのこは……」


兄様に「結婚して」と迫った、ちょっと怖くてとっても迷惑な女の子では?

まるで女王様みたいに真ん中を堂々と歩いて進んでいく姿は、我儘に振る舞っていたその子と同一人物とは思えないなぁ。


「んゆ?」


女の子が着ているフリフリドレスの胸元を飾るキラキラ宝石のブローチに、なんだか違和感を覚える。

じぃーっと見つめていると、中央の石とその周りを飾る石はキラキラだが、右上にちょこんと付いている石はあまり輝いていない。


……あの石、他の子たちが持っていた黒いモヤモヤが出ていた石みたい。

でも、あの子の石からは黒いモヤモヤは出ていない?


「んゆ?」


あれれ? ぼく、間違えちゃったのかな?





























「戻ってきたわよ。あら? レンどうしたの?」


また絡まれたら怖いので真紅と一緒に端っこで白銀たちを待っていたら、やっと二人が戻ってきてくれました。


「どうした? 泣きそうな顔をして」


クリクリとした眼でぼくの顔を覗きこむけど、な、泣いてないもん!


「それより、しろがね、しこん、どうしたの?」


なんでぼくたちを置いてけぼりにして、どこかへ行ってしまったのかな?


紫紺はにっこりと笑うと、そっと手に握っていた何かを見せてくれた。

ぼくとディディ、真紅で覗き込んだそこにはコロンとした色付きの丸いガラス玉が数個ほど握られていた。


「これ……」


ぼくとディディには、()()が見えるので上体を仰け反らしたけど、真紅は興味津々に顔を近づけていく。


「くろい……モヤモヤ」


そう、このガラス玉からはまだちょっと黒いモヤモヤが湧いて出てきている。


「あのガキ共から奪ってきたのよ」


フフンと胸を反らす二人だけど、それは盗んできたの間違いでは?


「と、とにかく、証拠が必要だろ? あいつらが悪事を働いているって」


焦った風に白銀が早口で言う。


証拠はあったほうがいい。

このガラス玉はたしかに黒いモヤモヤを出している悪いモノだと思う。


「でも、なんで?」


なんでこのガラス玉をあの子たちが持っているの?

そして、同じようなガラス玉を身に着けているあの子は、黒いモヤモヤを出していないのはなぜ?


「あそこにいる子どもは全員、同じガラス玉を持っていると思うわ。女の子はアクセサリーにしていたみたいだったから奪えなかったの」


「あいつら同じ貴族の派閥なんだろう? ガキが率先して瘴気を巻き散らす訳がない。あいつらの親が悪いんじゃねぇの?」


むむむ、瘴気を増やすものは見つけられたのに、このガラス玉がどうして子どもたちが持っていたのかがわからない。


「むうっ。にいたま、そーだんしゅる」


わからないことは兄様に聞く。

兄様はなんでも知っているから、きっとこのガラス玉のこともぼくにわかりやすく教えてくれる。


「……さすがのヒューも、コレの出所はわからないんじゃないかしら?」


「それもそうだが。コレの浄化はどうすんだよっ。ダイアナを呼んだほうがいいんじゃないか?」


「はっ!」


わ、忘れてた。

そうだよ、黒いモヤモヤは浄化しないとダメダメです!

そのためには精霊さんにお願いしないと。


「ディディ?」


「ギャッ!……ギャギャウ」


クンクンとガラス玉の匂いを嗅いだあと、申し訳なさそうに首を左右に振るディディの姿になんとなく意味は伝わった。


「ディディでは浄化はムリですって。やっぱり神気が混じっているのね」


じゃあ、急いでセバスのところに戻って兄様を待って、ダイアナさんを探しに行かなきゃ!


でも……どこを探してもダイアナさんは見つからなかった。

ウィル殿下もどこに行ったのかわからないって……えー、どうしよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ