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レンのスパイ大作戦 2

今日も剣術大会の観客席の一部からは、黒いモヤモヤが出ています。


「むうっ」


もう! 今日も兄様とアリスターの試合があるのに、しかも決勝に進めるかどうかの大事な試合なのに!


「どうちよう」


父様は連日王城に呼ばれて会議というお話し合いをしているらしい。

ディディは解放されたので、今日はぼくたちと一緒にいます。

ディディは火の中級精霊だから、黒いモヤモヤがちゃんと見えるのです!


「ディディ。あれ、けせる?」


「ギャウ」


ぼくが指さした方向を見て、ディディはコテンと体ごと傾げた。


「どうやら、浄化できる瘴気とできない瘴気があるみたいね」


眼差しをキツくした紫紺が不機嫌そうに尻尾をうねうねとさせると、白銀も鼻をフンッと吹いて牙をむき出しにして唸る。


「ちっ。やっぱり神気が混ざっていやがるのか」


二人は瘴気を見ることはできないし、浄化も使えないけど、なんとなく嫌な空気は感じるのかな?


「ピーイッピイ」

<俺様が全員やっつけてやる>


真紅……どうやら黒いモヤモヤを出しているのは、まだ兄様やアリスターと同じ年齢の子たちだから、乱暴は止めて。


「んゆ?」


そうだ!

ここにいても、ぼくは何もできない。

せめて、父様たちの役に立ちたい!


それには、敵情視察してくるのがいいのでは? 子どもばっかりの観覧席なら、ぼくがウロウロしていても目立たないと思う。

そう白銀たちに訴えると、紫紺がちょっとかわいそうな子を見る目でぼくを見ている?


「あの子たちはヒューと婚約したい子の取巻きでしょ? レンは、その子たちとバッチリ顔を合わせているでしょ?」


「うん」


そうだけど、たぶんあの子たちはぼくを覚えてないと思う。


「にいたま、いないもん」


金髪碧眼の王子様みたいな兄様が横にいないと、ぼくだってわからないと思うよ? ぼく、どこにでもいる地味な子だもん。


「いやいや。え? そうか?」


白銀は否定はするものの、自信がないらしく頭を抱えて考えこんでいる。


「ぼくとディディ、あっちいく。くろいモヤモヤ、しらべてくるの」


黒いモヤモヤが見えるのはぼくとディディだけだから、白銀たちはお留守番です。


「「反対ーっ!」」


「ぴゃーぁっ」


び、びっくりしたぁ。

急に大きな声を出したら驚くでしょ!


「ダメよ。レンとトカゲだけで元凶の場所に行くなんて。危ないわ!」


「俺も行く。俺がボディーガードとして、一緒に行く」


うわわっ、白銀、鼻息が荒いよぅ。


「ダメ! しろがね、いっちょだと、バレちゃう」


ぼくのことは覚えてなくても、白いワンちゃんと黒いネコちゃんを連れていた子どもは印象が強い。

白銀たちと一緒だと、ぼくがレン・ブルーベルだってバレちゃうでしょ!


「レン様? いったい何を話されているので?」


部屋の隅っこで内緒話をしていたのに、セバスが背後からぬうっと出てきた。


「わっ!」


「何を話していたのか、このセバスにも教えてください」


ニコニコと笑顔のセバスだけど……なんか怖い?

白銀と紫紺は互いの体を抱き合って、ブルブルと震えていた。



























「許可できません」


セバスが淡々とした口調で、スッパリとぼくの要望を却下しました。


えー……そんなぁ。

しょぼんと落ち込むぼくとディディ。

そうだよ、ディディだって大好きなアリスターのために何かしたいよね?


「とにかく、レン様とディディだけでの行動はダメです」


だって、セバスが一緒だったら警戒されちゃうし、騎士がついてきてくれてもブルーベル辺境伯騎士団の騎士ってバレちゃうもん。


「ぶーっ」

頬を膨らませて抗議をするけど、セバスはニッコリ笑顔で動じない。

んゆ? 兄様や父様はぼくが頬を膨らますと、すぐに譲ってくれるのに? あれれ?


「ピーイッ」

<いいこと、思いついた>


真紅が一際高い声で鳴くと、白銀の頭からクルクルと回転して転がり落ち、ピシッと翼を広げて立ち上がる。

そして、ボワッと。


「俺様が一緒に行ってやるぞ!」


人化した姿で真紅は誇らしげに胸を反らしていた。


「……」


セバスが無言で真紅を見つめる。


「セ、セバス。いい? いっても、いい?」


真紅は神獣だから、真紅が一緒だったらいいよね?

だが、セバスはゆっくりと頭を左右に振ると無情にも告げる。


「ダメです」


「ええーっ!」


ぼくが不満を訴える前に真紅が大きな声をあげ、果敢にもセバスの手の甲をペシペシと叩いている。


「そうですね……。白銀様と紫紺様は体の大きさが変えられましたよね」


「本来はもっと大きな姿だぞ」


「ええ」


白銀と紫紺は、ぼくと一緒に街で住むために体を小さくしてくれているんだよ。


「……小さくなれませんか?」


「だから、小さいだろうがっ!」


ガオーッと白銀が怒鳴ると紫紺はパシンと白銀のお尻を叩いた。


「イテッ!」


「うるさいのよ白銀。セバス、その小さいってどういう意味?」


探るような紫紺の視線を真正面から受け止めて、セバスは気持ちのいい笑顔で言い放つ。


「もちろん、人化した姿で小さく。例えばヒューバート様やアリスターぐらいの姿になることはできますか?」


「はあ?」


「なるほどね。おもしろいじゃない」


……んゆ? それってどういうこと?


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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