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不穏な人たち 5

兄様の試合には、ホワイトバード公爵家の寄り子貴族の子息たちの席で黒いモヤモヤが噴出。

その黒いモヤモヤのせいか、兄様への悪口が雨あられと振ってきた。


アリスターの試合では、興奮した試合相手が反則上等と襲いかかってきて、アリスターに反撃され撃沈。

その口から黒いモヤモヤが零れ落ちた。


んゆ?

つまり、どういうこと?


「瘴気が蔓延しつつあるってことかな? でも、王家の調査では今回の剣術大会の催しで道化師の男が絡んでいるものはなかったって」


「じゃあ、別の何か、瘴気を増やすような魔道具か?」


兄様とアリスターが難しい顔で話し合っているけど、二人はそれどころじゃないでしょ!


「むー、にいたま! アリスター!」


「なんだい、レン?」


「どうした、レン?」


クルッとこちらを向いた二人に、ぼくは目をギロリと光らせて、ビシッと指して言います!


「あらあら、レン。人に指を向けちゃダメでしょ」


ペシンと紫紺に優しく手を叩かれました。


「目つきがトロンとしているぞ? 眠いのか?」


白銀、ぼくは目をキリリとしたの! 眠くないからふさふさ尻尾でぼくを包まないで!


「もーうっ! にいたまとアリスター。けんのくんれん。ゆーしょーしゅるの!」


瘴気の問題は父様たちに任せて、兄様たちは剣術大会で優勝することに集中して! とぼくが訴えたら、二人は顔を見合わせたあと声を出して大笑い。


「アハハハッ。た、確かに僕たちは優勝しないとね。父様から最難関ダンジョンへの挑戦を許してもらえなくなる」


「ははははっ。ヒヨコクラスでヒューが負けたら大変だからなっ。俺たちは優勝しないとな」


もう、何がそんなにおかしいの?


「しろがね、しこん。にいたまたち……へん」


「大丈夫よ。レンが自分たちの心配をしてくれたのが嬉しかったのよ」


「放っておけ。ヒューたちは剣術大会に集中させておけばいいのは間違いない。瘴気の件はギルと王家に任そうぜ」


そうだよね? でも、ぼくも父様のお手伝いします! 黒いモヤモヤがどこにあるか、ちゃんと教えるもの。


「そもそも、瘴気がホワイトバード公爵の派閥から発生しているなら、関係者を調べればすぐにわかるだろう」


「そうだな。ホワイトバード公爵の親戚にホワイトホース侯爵がいて、その方が宰相様なら話は早いと思う」


兄様とアリスターも頷いて納得すると、ぼくへと手を伸ばし二人でぼくの頭をナデナデと撫でまくる。


「あー、レンはかわいいな」


「レンはいい子だな」


なんで? 黒いモヤモヤの難しい話をしていたのに、どうしてぼくがかわいいって話になるの?


「んゆ?」


首をコテンと傾げてみたけど、答えは出なかった。

むむむ。
















最難関ダンジョン。


ボスモンスターを無事に倒し、冒険者としての名声を得られるよりも、武の名門ブリリアント王国ブルーベル辺境伯家の者としての矜持を守ったことのほうが嬉しい。

これで、兄たちにも認められる……と思ったのがいけなかったのか、俺たちパーティーはボスモンスタートラップにかかってしまう。


ボスモンスターとの連戦だ。


こちらは、満身創痍、積み重なった疲労、そして最難関ダンジョン踏破したとの気の緩みから、相手に遅れを取ってしまう。

なんだかんだで、互いに致命傷を与えられないまま、時間だけが過ぎて俺たちの生存確率がどんどんと下がっていく。


ポーションも尽きた、リンとザカリーの魔力も尽きる。

ミックの素早さは失われ短剣を持つ手さえも震えている。


ここは……パーティーのリーダーである俺が覚悟を決めて、最後の一撃を……敵だけじゃない味方さえもダメージを負うかもしれない一撃を打つ。

コントロールできない最大限の魔力で、渾身の攻撃風魔法をぶっ放す!


ブルーベル辺境伯の直系には、武に才能がある者と知恵者が交互に生まれ領地を繁栄させていくという噂がある。

これは、ほぼ本当のことだ。


先代である親父は武に才能がある者だった。

正直、周りに能吏がいなければ満足に領地経営はできなかったと思っている。


そして今代は知恵者として貴族の当主から一目置かれている次兄のハーバードだ。

嫡男であるはずの長兄ギルバートは、能力不足だったわけでも人格に問題があったわけでもなく、辺境伯の継承を辞退した。


おそらくブリリアント王国で五指に入る剣術と、下手な領主より才覚ある学、そして部下から忠誠を誓われる懐の深い人格者なのに辺境伯の椅子を求めなかった。

ちなみに末の息子である俺には辺境伯継承の話など、最初からなかったけどね。


……そのままでも強いが、兄ギルバートは魔法の能力も桁違いに強い。

その兄が俺にいつも言っていたのは「全力で魔法を使うな!」という戒めだ。


俺の魔力量は、実は父や母を越える。

そして……魔力コントロールの能力は、たぶん貴族の子どもと同レベルだろう。

どうやっても、特訓しても、山籠もりしても、俺は自分の魔力をコントロールすることができなかった。


「……下手したら山が吹っ飛ぶと言われたが、ケルベロスごとダンジョンが崩れることはないよな?」


俺は胸に湧く嫌な予感を無理やりに押し込めて、静かに風属性最大攻撃魔法の詠唱を始めた。



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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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