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不穏な人たち 3

ぼくが王都で開かれている剣術大会で黒いモヤモヤを発見したせいで、父様のお仕事が増えました。


黒いモヤモヤは「瘴気」といって、人でも動物でも魔獣でも、誰でもが持っている悪い感情から生まれるものらしい。

だったらそんなに騒がなくてもいいじゃないかと思うけど、実は「瘴気」が増えると周りの感情も引きずられて、悪いことをする人や魔獣が増えてしまう。


最も悪い黒いモヤモヤは、神獣や聖獣たちが持つ「神気」が混ざったモノ。

まるで誰かに操られるように悪いことをしてしまうし、兄様の足の怪我がずっと治らなかったみたいに怪我や病気が酷くなったり、大事なものが壊れたりするんだ。


その黒いモヤモヤは見つけたらすぐにキレイにしなきゃいけない!

でもね、「浄化」という能力がなければ「瘴気」をキレイにすることはできないんだって。

普段の「瘴気」なら、自然に消えていくんだけど、「神気」が混ざった「瘴気」は「浄化」じゃないとダメ。


そのために創造神シエル様は、精霊たちに「浄化」の能力をあげたんだよ?

そう、力のある精霊たちにしか「浄化」はできないんだ。

あんなに強い白銀や紫紺も、頭のいい瑠璃も優しい桜花も、「浄化」は使えないんだよ。


だから、父様は黒いモヤモヤが発生した原因を特定するために働かなきゃいけないの。

まずは王様に報告だよね!


「やだぁ、行きたくない~っ」


うん、父様は王城に行きたくないって駄々をこねてます。


「……いつまでそこにいるつもりです? 早く行きなさい。約束の時間に遅れるでしょう」


セバスが父様の後ろ襟を掴んで引っ張るけど、父様も机にしがみついて離れない。


「なにやってんだ?」


「ギル……レンの教育によくないわよ?」


机の上には白銀と紫紺がちょこんと座って、そんな二人のやり取りを呆れた顔で見ている。

うん……机の上に座るのは白銀たちもお行儀がよくないと思います!


「……手紙で報告でもいいじゃないか。セバスが使いで行ってこい」


「レン様が見た瘴気は重要案件中の重要案件ですし、そもそも極秘中の極秘です。国防の要である辺境伯様の代理で謁見するのは、貴方でしょうが!」


グイーッと引っ張ると、父様のジャケットがびよーんと伸びちゃう。


「それに、問題の子どもの調査にホワイトバード公爵家当主とホワイトホース侯爵、つまり宰相も同席するんです。観念してとっとと行ってこい! バカギルバート!」


……とうとう、セバスが父様を机から引っぺがすのに成功し、ついでとばかりにお尻を蹴っています。

さすがにね、王様と宰相様と公爵様をお待たせしてはいけません。

ちなみホワイトバード公爵様は、兄様のお怪我を治そうと診てくださった王族の主治医様です!


「さて、旦那様もようやくお出かけになられましたので、私たちも行きましょうか?」


「あい!」


ぼくとセバスはお出かけです。

白銀と紫紺と真紅も一緒。


どこへ?

ふふふ、もちろん剣術大会の会場ですよ。

しかも、今日はアリスターと兄様の試合があるのです。

見に来ちゃダメって言われたけど、黒いモヤモヤの調査のためだからしょうがないよね!

やったぁーっ! 兄様の試合の応援ができるぞーっ!


「……ギャウッ」


んゆ? ディディの悲しい鳴き声が聞こえたような?


「ディディは旦那様と一緒に王城へ。瘴気と浄化の説明補佐として同行していただきました」


あ……忘れてたけどディディって、もうお喋りできるんだもんね。

いつも「ギャウッ」で通じていたから、すっかり忘れていたよ。

うん、父様とディディ、お仕事頑張ってください!















いつもの観覧席に座って兄様の出番を待ちます。


わくわく。

今日はヒヨコクラスの試合があって、その後にブロンズクラスの試合があります。


兄様は今日を入れてあと二つ試合に勝つと決勝戦! アリスターはあと三つ勝てば決勝戦です。


ぼくと白銀たちべたぁーと窓に張り付いて観戦しているけど、セバスは入れ代わり立ち代わりやってくる騎士さんと真面目なお話をしていました。


「ほら、ヒューの姿が見えるぞ」


白銀の尻尾が向いている方向に、キラキラと金髪が輝く兄様の姿が見える。


「わあ、にいたま。かっこいい」


革の簡易な胸当てに剣を持って立っている姿は、絵本で見た勇者のようです。


「レン。ヒューだけじゃなくて会場全体を見てちょうだい。どこかに黒いモヤモヤはある?」


トントンと紫紺の前足で足を叩かれたぼくは「ハッ!」として、急いで辺りをキョロキョロと見回した。


「ん~。うう~ん。んゆ? なんかあっち、やー」


ビシッとぼくが指で示した場所へ、セバスに命じられた騎士さんがダッシュで向かっていく。


ピクピクッ。

白銀のお耳が動きました。


「なんか、聞こえるぞ?」


白銀が会場から何か聞こえるというので、ぼくもお耳を窓に張り付けて聞いてみます。


「……はずかしい」


「子どもの試合に出て……」


「貴族の子が……小さい子を……」


「あれで……ブルーベル辺境伯もたいしたこと……」


むむむ?


「もちかちて! にいたまの、わるぐち?」


なんで、兄様が剣術大会を観に来た人たちから悪く言われているの!

ガビーン! とショックを受けたぼくは、ヨロヨロと後退りぺちゃんと尻もちをついた。


「どうしました? レン様、大丈夫ですか?」


セ、セバス……兄様がみんなに悪く言われているの。

そんなの、そんなの……ぼく、いやだよ……。

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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