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不穏な人たち 2

んゆ?


黒いモヤモヤがあるのはわかるけど……この子たち誰だろう?

今日、試合をしていたのはみんな貴族家出身の騎士さんたちだから、こんなところに子どもが一人でいるのに気が付くとわらわらと寄ってきた。


「君……一人かい?」


優しそうな茶髪の騎士さんがしゃがんで話しかけてきた。


「ううん、しろがね」


ほら、って見せつけるように、騎士のお兄さんに向けて白銀の体を抱っこする。

ベチャッ。

あ、真紅が落ちちゃった。


「お、大人の人はいないのかな?」


「とうたま?」


コテンと首を傾げると、騎士のお兄さんはあからさまにホッとした顔で「そう父様はどこ?」と聞いてきた。


むむむ。

本当はぼくが聞きたいの。

そこの黒いモヤモヤを出している子たちは誰? って。


しかも、黒いモヤモヤは一人の子から出ているんじゃないんだよ? 騎士さんたちの周りにいる子、全員からモヤモヤが出ている。

ぼくは、スッと指して尋ねてみた。


「あの子たち、だあれ?」


質問に質問で返された騎士のお兄さんは複雑な顔をしていたが、迷子の言葉には逆らわず教えてくれた。

ちなみに、ぼくは迷子じゃないよ? お兄さんが勝手に迷子だって勘違いしているんだよ。


「ああ、あの騎士はホワイトバード家の騎士だからね。周りにはいるのはホワイトバード家と関係のある家の子たちだよ」


んゆ? ホワイトバード家って聞いたことがあったような?

白銀を抱っこしたまま首どころか体全体が傾いだぼくの耳に、タタタッと紫紺が走ってくる足音が聞こえた。


「しこん」


す、すごい!

白銀も紫紺も、知らない人の前ではお喋りしないようにしているのに、どうやってウィル様の騎士を連れてくるのかな? って思っていたら、騎士が身に着けるマントの端を咥えて走ってきている。

ウィル様の騎士はマントに引っ張られて中腰の体勢で転げそうに走っているよ!


「はあっ、はあっ。な、なんですか?」


「こんにちは」


「ああ、こんにちは。って、ウィルフレッド様のご友人! あわわわ、まさか自分がお会いすることになるとは」


ウィル様の騎士……ぼくの顔を見たらガクガク震えてきたけど、大丈夫?


「……こちらはどちらのご子息で?」


最初に話しかけてきた騎士のお兄さんがウィル様の騎士にぼくのことを確認すると、彼は口をパクパクと開け閉めして大きい声で言い放った。


「こ、こちらのご子息は、ブ、ブルーベル伯爵のご次男レン・ブルーベル様でしゅっ。あ、あのブルーベル辺境伯騎士団の団長様のご子息でしゅーっ」


あ、ウィル様の騎士さん、ぼくと同じで「す」が上手に言えないみたい。


「え? ええーっ!」


騎士さんとお揃いとニコニコしていたぼくに、周りにいた騎士さんたちの視線が集まる。


「あの……剣術大会連続優勝の……」


「ば、化け物揃いのブルーベル辺境伯騎士団の団長」


「騎士の憧れ……」


んゆ? 父様の人気がすごいみたい。

ぼくはファンサービスとばかりにニコーッと笑顔で手を振ってご挨拶して回ったのだった。





















「で? 結局なんだったんだ?」


王都のお屋敷、ブルーベル辺境伯のタウンハウスに戻ってきたぼくたちは、父様の前に立たされてお説教? 尋問? なんか悪いことしたかな?

別行動だった兄様とアリスターも交ざっているけど、当然父様がなぜ難しい顔をしているのかわからない。


「レン? 剣術大会で何があったの?」


「んっとね、えっとね」


兄様が優しくぼくに問いかけてきたから、ぼくはここまでのことを思いだしてみた。


「あ、しょうだ! あのね、きちさんたち、とうたまのこと、すごいって。みんな、すごいって」


剣術大会に出る強い騎士さんたちが、みんな父様のことを褒めていて、ぼくも息子として鼻が高いのです!

さすさすと自分の鼻を擦りながら、そう兄様にご報告すると、兄様はちょっと変な顔をした。


「紫紺。なんでレンは剣術大会に出場する騎士たちが集まるところに行ったのかな?」


「たぶん、ウィルの騎士に会いたかったんでしょ。……問題はそこじゃないのよ、ヒュー」


紫紺の目がキラリと光りました。


「黒いモヤモヤが見えたんだと」


白銀がお座りに飽きたのか、ドテンと体を横伸ばしにしている。


「黒いモヤモヤ? それってもしかして」


アリスターがディディの体をギュッと抱きしめる。


「レン。父様に内緒で席を離れたのは、黒いモヤモヤが見えたからなのか?」


いいえ、違います。

父様がセバスを揶揄って、セバスの逆鱗に触れたから、ぼくたちは避難しただけですよ?


騎士さんたちがいるところに行ったのは、ウィル様の騎士が見たかったから。

そこで黒いモヤモヤを出す子どもたちを見つけたのは、偶然です。


「父様? 僕が一緒にいられないときはレンのこと、くれぐれもよろしくと頼みましたよね?」


ぼくがなんで父様と離れたのかお話したら、兄様の頭ににょっきりと角が生えて、父様が怒られていました。


「すまん、すまん! それよりも、黒いモヤモヤだ。瘴気が王都に発生したなど、重要案件だろうがっ」


父様が兄様に攻められて、焦って話を変えたような気もするけど、確かに黒いモヤモヤは無視できない問題です。


「あ、そうそう。その黒いモヤモヤの発生元はホワイトバード家に関係する子どもたちですって」


興味なさそうに報告する紫紺の言葉に、父様はとうとう執務机に突っ伏してしまった。

父様、頑張って! 

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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