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剣と恋 5

王都での日々が穏やかに過ぎていきます。


兄様は剣術大会予選その日に本選出場を決めました!

さすが兄様、すごいねーっ! と大喜びしているぼくを見て、深い深~いため息を吐いていたけど、なんで?


アリスターはもう大変。

とにかく出場人数が多いのと、実力の幅が広すぎることで、対戦するアリスターもお疲れ気味。


「ド素人相手に怪我をさせないように気を使っていたら、手練れが襲いかかってくる。もう訳がわからん」


でも予選を繰り返していくと、素人さんレベルは姿を消し、実力者が揃ってくる。

アリスターもようやく本気を出して戦えると意気揚々と予選に参加していたよ。


まあ、置いてけぼりのディディの機嫌は悪くなる一方だけど。


「えっと、剣術大会の最終日はプラチナクラスの決勝戦。これ俺が観戦しないと陛下がブチブチうるさいから行く。あとは、アリスターが出場する本選とヒューが参加する、ヒ、ヒヨコクラスの決勝な」


ププッと笑って観覧席の予約をセバスに頼む父様に、兄様はギリギリとした鋭い視線を飛ばしている。


「なんだよ?」


「なんでもありません」


でも兄様のほっぺ、ちょっと膨らんでいるよ?

ぼくが珍しそうに兄様のお顔を覗いていたら、兄様は顔を横に背けてしまった。


「喜べ。ヒューの決勝にはアンジェもリカも応援にくるぞ。どうする? 父上と母上も招待するか?」


父様のニヤニヤ笑いが止まらない……あ、止まった。

ガツンとセバスに拳骨をもらった父様はソファーの上で悶絶している。


「……父上、お仕事頑張ってください。いこう、レン」


兄様はフンッと鼻を鳴らして、ぼくの体をひょいと抱き上げるとスタスタと足早に部屋から出て行ってしまう。

あ~あ、父様、とっても痛そう。


「あいつ、ヒューよりガキだな」


「成長しないのね」


トコトコと兄様の隣を並んで歩く白銀と紫紺まで父様に呆れている。

おっかしいな? 父様はとっても強い騎士様でブルーベル辺境伯騎士団の団長様なのに?

ぼくがむむっと首を捻っていると、兄様はメグとリリに外出の用意をするように頼んだ。


「にいたま、おでかけ?」


「ああ、そうだよ。大会当日までヒマだろう? 少し街へ出て遊ぼう」


「あそぶ?」


「あら、ヒュー。それは素敵な考えね」


「俺、屋台で肉の串焼き食いたい」


わーい! 兄様とおでかけ楽しいな!


こうして、剣術大会が始まるまで父様が兄様を揶揄ったり、兄様とおでかけしたり、たまにウィル様とお茶をしたりして王都生活を楽しんでいました。


















やってきました剣術大会です!


でも、今日は兄様もアリスターも出番はないの。

開会式なんだって。


父様が自分だけ開会式に出るのは退屈だから一緒に行ってくれって頼むから、ぼくたちも来ました!

大きな、前の世界でドーム球場とかの大きな施設のような場所にいっぱいの人が集まっています。


すごいです!

興奮して馬車の窓に張り付いてキョロキョロとしていると、クスクスと兄様に柔らかく笑われてしまいました。


「ほら、あそこで馬車を預けて、あっちから中に入れるんだよ」


「んゆ? あっち?」


みんなはそっちの大きな入り口に並んで入っていますけど?


「いつもと同じだ。俺たちは招待された貴族だから、待たずに特別待遇で中に入れるんだ」


ドヤ顔の父様にぼくは目を大きく開いて驚きます。

すごい、ここでもVIP待遇なんだ!


セバスが言うには、貴族と平民のトラブルを防ぐためなんだって。

貴族と問題を起こした平民は、とても厳しい罰を受けるんだってさ。

せっかく楽しい剣術大会に来たのに、そんな酷いことはダメです。


だから、ぼくたちもちょっとズルいけど、貴族専用の入り口から入ります。

わーい! やったね。


馬車を下りて、人が多くて危ないから兄様と手を繋いで歩きます。

白銀と紫紺は父様の肩にそれぞれ乗っていて、ディディはアリスターが抱っこしています。

真紅? あ、真紅は父様のポケットの中で熟睡中でした。


入り口でブルーベル伯爵家の紋章をセバスが見せると、観覧席までの案内で騎士さんが同行してくれることになりました。

この騎士さんはぼくたち専用の騎士さんなので、何か飲みたいものや食べたいものがあったら頼んでいいんだって。

VIP席ってすごいね! ちょっとドキドキワクワクしてきました。


どうも、特上席が用意されていたみたいで、これから五階まで階段を上るそうです。

うん、騎士さんが不安そうにぼくを見ているよね?


「あ、レンはぼくが抱っこしていきます」


兄様がぼくへと伸ばされた案内役の騎士さん、父様、セバスの手をスルーして、ぼくをささっと抱き上げます。


「にいたま?」


兄様がぼくを抱っこして五階まで階段を上るのは、ツラいのでは?


「大丈夫だよ。ちゃんと鍛えているからね!」


うっ! バチコーンと久しぶりの兄様のウィンク攻撃に撃沈です。

ぷしゅうぅぅぅぅっと顔を真っ赤にして、兄様の胸へ顔を擦りつけて隠しましょう。


「あら」


「なにやってんだ、レンとヒューは?」


「ぐぐぐぅっ。いつもいつもヒューばっかり、ズルいぞ」


いよいよ、剣術大会が始まります!


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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