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不吉な予感 7

父様が、白銀と紫紺をぼくたちから奪おうとした少女の家と、その主家であるホワイトバード家にも抗議文を送ってくれることになりました。

父様はついでに国王陛下たち王族の耳にも入れると、企んだ笑みを浮かべています。


「よかったね」


これで白銀と紫紺とずっと一緒です。


「俺たちはずっと一緒だって」


「そうよ。何があっても一緒よ」


白銀と紫紺が両側からギューッと体を押し付けてくるから、ぼくも両腕で白銀たちをギューッと抱きしめました。


「俺様、腹が減った」


いつの間にか人化した真紅は欠伸をしながら、セバスにお菓子の追加をお願いしています。


「ところで、レンの肩にチルがいないのはいつものことだが……、ヒューの肩にチロがいないのは珍しいな?」


「んゆ?」


父様の不思議そうな顔に釣られて兄様の肩にいるチロを探してみるけど、いない。


「チロ?」


チルはブループールの街とは別の場所に来れば、必ず「情報収集だ!」と飛び出して行ってしまうので、定位置のぼくの肩に戻ってくるのは夜ご飯前だからいいとして。


チロは兄様大好きで、ずっと兄様の肩にいて、兄様の金髪をひと房握ってうっとりと兄様に見惚れいるのが通常です。

なのに、いないなんておかしいね?


「本当だ。いつの間にいなくなったのかな? 教会までは一緒だったのに」


わっ! 大変です!

兄様に何も告げずに姿を消してしまうなんて、チロに限ってそんなことがあるのだろうか?


「そこら辺フラフラしてんだろう?」


「王都に来るのが初めてじゃないし、そのうち帰ってくるわよ」


妖精や精霊から嫌われがちな神獣聖獣だから、チルとチロに対してもちょっとクールな対応になってしまいます。


「にいたま?」


「大丈夫だよ。王都にはチロの好きそうなかわいいモノが沢山あるからね。きっとお店巡りでもしているんだよ」


そうかな? 王都のお店はキラキラしていてリボンやレースがいっぱいあって、紫紺も「かわいいーっ」と叫んでいるからチロもかわいいモノが欲しくなったのかな?

あとでチロが戻ってきたら、どこに遊びに行っていたのか聞いてみようっと。




















翌日、王都屋敷のお庭を兄様とゆっくり散歩していた長閑な午後に事件は発生した!


「アリスター、どうした? お前は今日、僕を裏切って剣術大会ブロンズクラスの参加申込みに行ったはずだろう?」


兄様がちょっとムッとした顔をします。

今日は剣術大会でも一番参加希望者の多いブロンズクラスの参加申し込み日でした。


この日で既に参加希望の三分の一が落とされるそうです。

でも誰かと試合をするとかじゃなくて、武器を素振りしてもらって冒険者ギルドのギルドマスターや騎士団の隊長さんが判定するらしい。

当然、アリスターは参加資格を得たんだよね?


「ああ、無事に予選に参加できることになった。でも本選以外は複数人による試合だから、ちょっと困ったことになって……」


アリスターは尻尾も耳もへにゃりと垂れ、グイッとディディを抱き上げてこちらへと差し出す。


「ん?」


「んゆ?」


ディディがどうしたの?


「頼む。こいつを預かってもらえないか?」


アリスターはガバリと頭を下げるけど、ディディはそのお願いが不服そうでジタバタしている。

短い手足がパタパタと動いて、かわいいねーっ。


「そんなほんわかとしている場合じゃないんだ……」


あれれ? アリスターがなんだかものすごく疲れたようにがっくりとしてしまった。


「一対一で戦うときもそうだけど、予選みたいに何人とも入り乱れて戦うとなると、足元をチョロチョロするこいつが気になって……」

チラッとディディに視線を投げるアリスターに、ディディはこてんと首を傾げていた。


「確かに気になるが……精霊だぞ?」


ディディは火の中級精霊だもの。

試合中の人の足をヒラリヒラリと避けるのは簡単なのでは?


「気になるだろう? いくら他の人に見えていないと思っても、蹴っ飛ばされないかとかぶつからないかとか」


んゆ? 見えていないって何が?


「それに、もし俺が負けそうになったら、ディディは火の魔法を使って相手を倒しちまうかもしれない」


それはあるかもね。

だって、ディディはアリスターのことが大好きだもの!


「ねえねえ、みえないって、なあに?」


トコトコとアリスターの傍に行って、ツンツンとズボンを引っ張れば、どんよりとした顔のアリスターが怪訝そうにぼくを見る。


「ディディ、みえない?」


「え? 他の人には見えないだろう? 特に王都では姿を隠していたはずだぞ? な?」


アリスターの言葉にディディがうんうんと頷く。


「ああ、レンは忘れちゃったかな? レンは見える人だからね。本当はチルやチロみたいな妖精は魔力が余程高くないと見ることはできないし、精霊は反対に自分たちが姿を見せたいと思った人にしか見えないんだよ?」


妖精も気にいった人には姿が見えるように細工してくれるけどね、と兄様が続ける。

そうだっけ? じゃあ、本当はチルとチロもみんなには見えないの?


「チルとチロは、もう長いことブルーベル家にいるからね。ほとんどの人は慣れて見えることができるはずだ。でもチルとチロ限定で他の妖精を見ることはできないよ」


兄様がわかりやすく説明してくれる。

プリシラお姉さんと契約しているエメもドロシーちゃんと契約しているチャドも、もちろんダイアナさんも姿を見せたい人の前にだけ見えるようにしているんだって!

びっくり!

たぶん、ぼくの周りの人には見られても大丈夫だと信じて、姿を隠していないのだろうって。

そうなのかな?


「だから、王都や他の場所ではディディは俺たちには見えるけど、他の人には見えていないはずだよ。見えていたら、あの白銀たちが欲しいって騒いでいた女の子に目をつけられていたかもしれない」


ホーッと胸を撫でおろしているディディ大好きなアリスターには指摘しないけど、トカゲさんのディディをあの子が欲しがったかは謎です。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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