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不吉な予感 3

今日は、兄様たちと一緒に王都の教会へ行きます。

久しぶりにシエル様にお会いできるかな?

何度か教会に行ってお祈りしているけど、ちっとも会えないの。

日本のお仕事が忙しいのかな?


ガッタンゴットンと馬車に揺られてシエル様のことを考えるぼくに、白銀と紫紺がしょっぱい顔している。


「あの方なら一方的にレンのこと知っているわよ」


「ああ……きっと今も空からお前を見てやがるぜ」


え? それ本当?

馬車の窓から空を見ると、黒い鳥が真横に移動して飛び去るのが見えた。


「んゆ?」


コシコシと目を擦って、もう一度外を見てみるけどもう黒い鳥さんの姿はなかった。


「とりしゃん、よこにとべる?」


ぼくが首を傾げて質問すると、兄様は突然の問いに目をパチパチと瞬かせた。


「え? 横に……飛べると思うけど。は? 真横にそのまま飛ぶの? それは……無理じゃないかな?」


方向転換することもなく、真横に飛行移動するのは無理……だよね?


「すごいとりしゃん! まよこ、とぶ」


では、ぼくが見た黒い鳥さんは、ものすごくすごいのではないだろうか!

ぼくが馬車の中でフンフンと興奮してるのを兄様は苦笑していたけど、真紅は面白くなかったみたい。

白銀の頭の上でバササッバササッと小さな翼を動かして猛アピールしてきた。


「ピイピイッ。ピピィッ」

<俺様だってできる。真横に飛べるぞ!>


ぷぎゅう。


「嘘おっしゃい。アンタ、満足に飛ぶこもできないじゃない」


紫紺の前足で白銀の頭の上から落とされて、いつものように踏まれる真紅が憐れです。

ぼくはそっと真紅を抱っこして、よしよしと撫でてあげました。


<飛べるもん。俺様飛べるもん>


いじけないでよ、真紅。


















そして……今日もシエル様にはお会いできませんでした。

王都の祈祷室……ステンドグラスはピンク色でかわいい桜花の部屋だったよ。

鱗の一枚一枚が微妙に色が違っていて見てて飽きない、素敵なステンドグラスでした!


でも、お会いできなかった……お友達が増えたこと、お話したかったのにな。

ちょっとしょんぼりしてたぼくに兄様が気を遣って、馬車で帰る前に教会にお祈りに来る人たちに人気の焼き菓子屋さんに行くことにしました。

そんな、お菓子でこの切ない気持ちがどうにかなるなんて……ぐうぅぅぅっ。


「ふふふ。早く食べたいんだね。じゃあここのベンチで座って待っていて。アリスター、屋敷の者たちにも買うから付き合ってくれ」


「それはいいが、レン一人で大丈夫か?」


「失礼ね。アタシたちがいるじゃない」


「そうだぞ。むしろ手加減するのが面倒だ」


アリスターの心配そうな顔に、白銀と紫紺が任せておけと胸を張る。


「いってらっちゃい」


ほくはベンチに座って兄様とアリスターに手を振る。

大丈夫。大人しくここで座って待っています。

白銀と紫紺もぼくの隣に座って、一緒に待っていようね。


「アリスター、行くぞ」


「ああ。いいか、レン。大人しくじっとしてろよ? じっとしてるんだぞ」


兄様はお店へスタスタと歩いていくのに、アリスターは何度もこちらを振り返って確認している。


ふふふ。

大丈夫だってば。


……大丈夫?

……大丈夫じゃなかったかも。


兄様たちがお店の中へと入っていってからしばらくして、ぼくの前に兄様と同い年ぐらいのきれいな服を着た女の子が仁王立ちしてきた。


「んゆ?」


「あなた。そこの、のほほんとしているあなた」


「……こんにちは?」


のほほんとしているつもりはなかったけど、右を見ても左も見てもぼくしかいないから、ぼくのことだよね?


「このわたくしに挨拶するなんて、平民のわりに礼儀があるのね。褒めてあげるわ」


「……ありあと?」


なんだろう? 褒められたのに褒められた気がまったくしないなぁ。

両隣りにいる白銀と紫紺が小さく唸っているし……この子だあれ?


「ねえ」


「ひゃあ」


急に女の子が大きな声を出すからびっくりした。

ドキドキする胸を手で押さえて女の子を見ると、彼女はキラキラと目を輝かして白銀と紫紺を指差していた。


「これ、ちょーだい」


「……? え、な、なあに?」


あれあれ? ぼくの聞き間違いかな?

この子ってば、白銀と紫紺をモノみたいに「ちょうだい」って言わなかった?


「なに? 平民のくせに、貴族のいうこと聞けないの? このわたくしに、このケモノを寄越しなさい」


女の子は眉をぎゅっと寄せて目を吊り上げた。

ええ? 待って待って。

白銀と紫紺を寄越せなんて命令に頷くわけにいかないもん。


「だめ! しろがねとしこん、ぼくのおともだち」


バッと利用手を広げて白銀と紫紺を守る。

女の子の後ろにいた大人の女の人と男の人が怖い顔をして、ぼくを睨みつけるけど、ダメだもん!


「レン、そこどけ。こいつら噛みついてやる」


「風の刃で切り刻んでやるわ」


白銀と紫紺がぼくにしか聞こえない小さい声で怖いことを言い始めちゃった。

もう、どうしたらいいのかわからなくて頭がグルグルしてきちゃったよーっ。

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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