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王都にて 2

王都に着いた日は、移動で疲れているからゆっくりしたいと父様が言い出し、お部屋で荷物を整理するお手伝いをして、みんなで夕食を食べて、お風呂に入って寝ることにしました。

移動が疲れるって、紫紺の魔法でビューンと来たから一瞬だったのに、父様は何がそんなに疲れたのかな?


「おかた、トントン、しゅる?」


両手をグーの形に握って上下に動かして父様に聞いたら、にへらっと顔をフニャフニャにして頷いた。


「トントーン。とうたま、おつかれねー」


椅子の上に立って父様の肩をトントンとリズミカルに叩く。


「あー、幸せだぁ」


父様が気持ち良さそうな声を出すから、ぼくは頑張ってトントンと父様の肩を叩いたよ。


「父様……。仮にもブルーベル辺境伯騎士団の団長なのに、そのだらしない顔はどうかと思います」


兄様がスンッとした表情で父様の顔を見ています。


「いいじゃないか。最近は孫とアンジェやレイラの世話のため頻繁に母上が屋敷に来て気が抜けなかったし、今はフィルもセバスもいないし。俺は解放感に浸りたいし、かわいい息子の優しさに溺れたい」


「んゆ?」


溺れるのは危ないんじゃないかな?

兄様はこれ見よがしに大きく息を吐くと、ガサゴソと一枚の紙を広げた。


「あら、ヒュー。それはなあに?」


「紫紺。これはね、アリスターに頼んで手に入れてもらった、王都のお店のガイドだよ。ほら、おいしいランチを提供する店や、ここは人気のスイーツ店。こっちには手ごろな値段の雑貨屋」


兄様が指差す場所を興味深く紫紺は目を輝かして見ている。


「……すいーつ」


ぼくは甘いお菓子が大好きです。

真紅も白銀も大好きです。


「ふふふ。レンはスイーツ店に行きたいのかな? ほら、ここは前に王都に来たときにみんなで行ったレストランだよ」


「ああ、あの。ダイアナが蝶々姿でアタシたちに接触してきたレストランね」


ペロペロと紫紺が自分の前足を舐めて、くしくしと顔を洗っている。

かわいい。


「本当に俺が付き添わなくていいのか? ヒューも王都は今度で二回目だろ?」


「大丈夫です。アリスターもいますし、大通りの店以外には立ち寄りません」


兄様がキリッとかっこいいお顔で父様に応えると、父様は「う~む」と悩みながらもぼくたちだけでのおでかけを許してくれた。

ぼくは嬉しくて、父様の肩をトントンと元気よく叩いたよ。


「あ~気持ちいい」


父様ってば、肩が凝っているのかな?


















翌日。

ぼくがぐっすり眠ってしまい、ちょっとお寝坊している間に、兄様とアリスターは剣のお稽古を終えてしまっていた。

ぶー、です。


しかも、ご機嫌の父様が兄様たちの相手をしてくれたみたいで、アドルフたち護衛の騎士たちも大興奮でした。

ますます、ぶー、です。


しかも、朝食の席にはフィルとセバスの姿が見えないし、なんかソワソワしちゃう。


「レン。まだ怒ってる? 本当にごめんね。とっても気持ち良さそうに眠っていたから起こせなかったんだよ?」


はい、とぼくの口にトロトロのスクランブルエッグを運びながら、今日何回目かの謝罪を口にする兄様へ、ぼくは口をリスのように膨らませたまま、ぷいっと横を向く。


「ああ……」


「気にするな、ヒュー。お腹がいっぱいになればレンだって機嫌が戻るさ」


あっはははと笑う父様に、ぼくはジト目で不満を表す。

お腹が減って不機嫌なわけじゃないもん!


「相変わらずギルは地雷を踏みまくる男ね」


「放っておけよ。あいつ、セバスがいないから調子に乗っているんだ」


朝から塊のお肉をぺろりと食べた白銀が、上機嫌の父様へ同情の眼差しを向けている。


「ピーイッ」

<ギル。腹黒執事が戻ってきたら、八つ当たりされるのに>


「んゆ?」


ぼくは白銀たちの会話にこてんと首を傾げながらも、兄様がせっせっとぼくの口へと運ぶ朝食を噛んでごっくんしてました。


朝食を終えたぼくたちは早速アリスターたちと合流して、王都見物にでかけます。

父様はのんびりとお茶を飲んでぼくたちに手を振っていましたが、使用人が持ってきた白い封筒を見て顔色を変えました。


「あ、巻き込まれる前にでかけよう」


兄様がひょいとぼくを抱き上げて、スタスタと足早に馬車へと進んで行く。


「にいたま?」


「ほら、王都見物楽しみだね? アリスター、早くしろ」


「お、おうっ」


僕たちが馬車に駆け込むように乗ると、兄様は馭者を急かして出発させた。


「ま、待てーっ。待ってくれーっ。ヒュー、レン。一緒に王城へ行ってくれーっ」


父様が駆けて追いかけてきて、走る馬車へと手を伸ばしているけど、兄様はしらっと無視してそのまま馬車を走らせた。


「とうたま?」


「いいんだよ。父様にはお仕事ができたんだ。僕たちは邪魔しないように王都見物しに行こうね」


「あい!」


父様の仕事の邪魔をしてはいけません。


「……ヒュー。お前、確信犯だろ?」


慌ててたからいつもの馭者席じゃなくて馬車内に入ったアリスターがディディを抱っこして、ふうーっと溜息を吐いていた。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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