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最難関ダンジョン 5

風の精霊さんとその契約者を探しに最難関ダンジョンへ挑戦したい兄様と、自分の実力を測るために王都で開催される剣術大会に参加させたい父様との間に、戦いの火蓋が切って落とされた!

両手を握ってワクワクと二人を交互に見ていると、スーッとセバスが一枚の紙を差し出した。


「んゆ?」


「なんだ?」


父様がセバスが出した紙の上に視線を流すと、ポイッと兄様へ渡す。


「なんですか? 剣術大会の参加申請書じゃないですか」


「おう。黙ってこれにサインしなさい」


ニコッと圧をかける父様に、兄様の目が半眼になってその温度を下げる。


「い・や・で・す」


「ヒュー。欲しいものはないって言ったが、この剣術大会で優勝したら最難関ダンジョンの挑戦を許す。その際、我が騎士団の奴ら好きなだけ連れて行ってもいい。なんだったらセバスを連れて行ってもいいし、ブルーパドルから父上を呼んでもいいぞ」


ニヤニヤ笑いの父様はセリフとは反対のことが顔に書いてあるように見えます。

つまり、「優勝なんて無理だから、最難関ダンジョンに挑戦するのは許しません」って。


うぐぐっと悔しそうな顔をした兄様は、申請書をガシッと乱暴に掴むとセバスが渡すペンを手にとり、サラサラとサインをしてしまった。

兄様、いいの?


「……アリスター。お前も書いておけ」


「ああ、それはいいが。ヒュー、ちゃんと申請書を読んだのか?」


アリスターが兄様に気遣いながら、自分の分の申請書にサインする。


「ふふふ。もう遅い! よし、セバス、これをすぐに王宮へ送っておけ。あーよかった。毎回断るとアルフレッドの奴、グチグチとうるさいんだよな」


父様は両手を頭の後ろで組んで深くソファーに座りなおした。

とてもリラックスした表情です。

セバスも無表情だけど、アリスターから申請書を奪うように取り上げると、さっさっと魔道具に申請書をセットしてどこかへと送ってしまう。

ちなみに、父様のいう「アルフレッド」とは、ブリリアント王国の国王陛下のことです。


「ギル。完了だ」


「ふーわはははっ。よかったよかった。面倒事が一つ片付いたよ」


このあと、チョーご機嫌になった父様から、剣術大会の詳しい内容を聞いた。

聞いたら、兄様は愕然とした顔で机に突っ伏してしまった。


「そんな……僕の出場するのは年齢制限のあるお子様ランクだなんて……」


「ヒュー。だからちゃんと申請書を読めって言ったのに」


兄様の背中を慰めるように摩るアリスターは、ちょっと呆れ顔だ。

剣術大会は誰でも参加できるけど、やっぱりクラス分けしておかないと怪我をしたりするので、出場者は四つのクラスに分けられている。


高ランク冒険者や騎士団所属の騎士が参加する、剣術大会の真打、ゴールドクラス。

貴族子息や騎士見習いたちが参加する、剣術大会のショータイム、シルバークラス。

成人済が参加する冒険者、腕に覚えのある一般市民、衛兵など、剣術大会の賑やかし、ブロンズクラス。

そして成人未満の子たちが参加する、剣術大会の癒し、ヒヨコクラス。


兄様はこのヒヨコクラスの参加になる。

アリスターは成人しているからブロンズクラスだけど……。

兄様がヒヨコ……か、かわいいよね!















ガックリと項垂れた兄様はそれから重い足を引きずって屋敷へと戻り、家庭教師からの授業を受ける。

アリスターは別行動で、騎士団の新人が受ける座学教育に参加。


ぼくはどうしよう?

白銀と紫紺と一緒にトテトテと歩いて考える。


「レン。レンはヒューたちと一緒に王都へ行くのか?」


白銀が頭に真紅を乗せて問いかけてくる。


「んゆ? にいたまといっちょ。おうと、ウィルさまいる」


紫紺に頼めば転移魔法でバビューンと一瞬で移動できるし、今回は母様とリカちゃんとも一緒に王都に行けるかな?


「どうかしら? 剣術大会を観覧するのに周辺国からも人が流れてくるでしょう? 悪い奴らもくるからアンジェとリカは留守番じゃないかしら?」


紫紺がフリフリと長い尻尾を揺らめかせて歩く。


「うん、と。しこん、まいにち、いどう、へいき?」


もし、母様とリカちゃんがブループールの街でお留守番でも、会いたくなったら紫紺が転移魔法で移動してくれたら、ぼくは寂しくないんだけど。


「いいわよ。別に転移魔法なんて簡単だもの」


フフンと得意げにする紫紺はかわいいが、まだ転移魔法がコントロールできない白銀と、神気不足で使えない真紅は悔しそうに顔を顰める。


「ヒヨコクラス……ぼくもしゃんか、できる?」


コテンと首を傾げて聞いてみると、白銀と紫紺がぼくから顔を背ける。


「ピーイピイピイ」

<無理だろう。お子ちゃますぎるわ>


真紅が白銀の頭の上でゲラゲラと笑い出す。


「ぶー」


ぼくは剣術大会に出れないのか……つまんないの。















「リン!」


リンが見つけた脱出用の転移魔法陣を俺たちで確認しているとき、ふいに魔法陣が光だした。

このままダンジョンを脱出するならいいが、今までの脱出用転移魔法陣とは違う魔力の流れだ。

ミックもザカリーもボスモンスターとの戦いから戻らぬ体力のまま、なんとか武器に手を伸ばす。


「アル。これってもしかして……」


「アル、リン、ミック。これはさらに下層へ転移します!」


ザカリーの魔力探知で転移先がわかったが……さらに下層ってどういうことだ?

ここがこの最難関ダンジョンの最下層、このダンジョンのボスがいたところだろう?


も、もしかして。

俺はゴクリと喉を鳴らした。


冒険者たちの間で密かに語られる噂。

ボスモンスターを倒したあと、さらに強力なボスが現れるボスモンスタートラップ。


俺たちはボスとの連戦の予感に、ギリッと唇を噛みしめた。

魔法陣の光が消え、新しいフロアへと転移が完了する。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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