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最難関ダンジョン 1

新章開始します!

いっちに、さんし。

いっちに、さんし、ごーろく、ななはち?


「んゆ?」


しちはち、だったけ?

両手を上に上げたまま、ぼくは首を横にこてんと傾げる。


ブルーベル辺境伯の領都、ブループールの街にあるブルーベル辺境騎士団の訓練場の端っこで、剣のお稽古前の準備体操中です。

ぼくの目の前では、兄様やアリスター、アドルフたちが模擬剣で訓練しています。

一段高いところにマイじいと父様が腕を組んで睨みをきかせてるんだよ。

でも、白銀が言うには後ろに黙って立っているセバスが一番怖いんだって。

そうかな?


氷雪山脈地帯の冒険から帰ってきた兄様とアリスターは、ますます剣のお稽古を頑張るようになりました。

もっと強くなりたいんだって。

ぼくも、もっと強くなりたい!

なので、今日も白銀と紫紺とおまけに真紅で、剣のお稽古をしています。


「ピーイッ!」

<俺様はおまけかよっ!>


おまけって言うと真紅が拗ねるから、気をつけなきゃ。

心の声が外に出ていたぼくは、自分の口を両手で塞ぐ。


「おまけじゃねえか」


白銀が自分の頭の上で悠々と寝そべっていた真紅をギョロリと目玉を動かして睨もうとする。


「いつまでたっても神気が溜まらないんだもの。お荷物扱いされてもしょうがないでしょ」


ブンッと振った紫紺の尻尾に当たって、ポトリと真紅が白銀の頭の上から落ちた。

真紅はボワンッと即座に人化すると、涙目で白銀と真紅を睨みつける。


「俺様だって神気を溜めたいわっ。こんなレンみたいなちびっ子姿なんて屈辱なんだぞ!」


「ちつれいな!」


ぼく、ちびっ子じゃないもん。

ちょっとは大きくなったもん……なったよね?


「んゆ?」


あとで兄様に頼んで背を測ってもらおうっと。


「早くしないと騎士団の早朝訓練は終わってしまうのでは?」


ぼくたちとちょっと離れたところでぬいぐるみ姿の翡翠が呆れた声でツッコミを入れる。

あ、そうだった。


「くんれんしなきゃ」


ブンブーンと愛用の木剣を握って、いざ勝負!














いい汗をかいて水浴びをしてサッパリ。

お着替えしてから、みんなで朝ご飯を食べよう。

兄様と一緒にお手々繋いでやってきた食堂には、父様がズズーンと背後に真っ黒な何かを背負って座っていた。


「……くろいモヤモヤ?」


「いいえ、違います。旦那様は少し気分が落ち込んでいるだけです。弱いので」


「おいコラ、セバス! 俺は弱くないっ。こ、こんなものがテーブルに置いてあったら、ちょっとは考えこむだろう?」


父様が手に数枚の紙を持ってセバスに文句を言っている。


「父様? それは何ですか?」


兄様がトコトコと父様に近寄り、その手に持つ紙を確認しようとすると、父様は焦った顔でその手を高く掲げてしまった。


「……父様?」


「とうたま?」


そんなに高いと、紙に何が書いてあるか見えないよ?


「ギル。往生際が悪いぞ」


セバスがバッと父様の手から紙を奪い取り、ササッと兄様に恭しく渡す。


「これは……僕とレン宛の手紙じゃないですか」


「ぼくも?」


手紙をくれるなんて、誰だろう?

兄様がしゃがんでぼくにも見えるようにしてくれた。


「これ、るり?」


「ああ、こっちは瑠璃からで、こっちはダイアナからだね」


二枚の紙の間で目をキョロキョロ。


「ヒュー。それは瑠璃とダイアナから風の精霊が集まりやすい場所と光の上級精霊が目撃された場所のリストだ。イタタタ」


父様がお腹を押さえて呻きだした。


「だいじょーぶ? とうたま」


俯いた顔を下から覗くと、父様は無理やり笑ってぼくの頭を撫でる。


「いいんだ。セバス、胃薬くれ」


父様ったら、お腹が減り過ぎて痛くなっちゃったんだ。

早くご飯を食べて、瑠璃とダイアナからの手紙を読もうっと。


ぼくと兄様が席に着くと、リリとメグが後ろに控えて給仕のお兄さんたちがお皿をテーブルに並べていく。

今日も美味しそうな朝ごはんです。

キュルルル。


「あ、おなか、なったの」


いっぱい食べてグングン大きくならないとね!


「セバス。この薬が尋常じゃないぐらいに苦そうなんだが?」


「よく効くそうですので、薬湯を一気にお飲みください」


父様がヒーヒー泣きながら、濃い緑色のドロドロしたスープを飲んでいた。

ぼく知ってる。

あれ、青汁っていうんだよね?





















「ほぼ瑠璃とダイアナが記した場所は重なっているな。瑠璃のリストにはなにやらマークが付いている場所があるが?」


兄様とアリスターが二人からのリストと地図を並べてにらめっこしています。


「ああ、瑠璃様のリストには特に重要だと思う場所にマークが付いているらしいぞ。だったら先ずはこのマークがある場所から調べたほうがいいな」


ぼくがテーブルの端から背伸びして覗き込んでいても、兄様とアリスターはぼくにチラリとも視線を向けず、難しいお話しているの。


「にいたま? アリスター?」


「「……」」


「んゆ? にいたま? アリスター?」


どうして、ぼくにお返事してくれないの?


「あ、あー、レンにはつまらない話になるから、白銀たちとお庭で遊んできたら?」


ブンブンと頭を横に振ってイヤイヤします。


「そうだ、レン! 奥様のところでリカちゃんと遊んできたらどうだ?」


アリスターの提案には、ちょっと心が動きましたが誤魔化されません!


「にいたま! アリスター!」


ぼくたちを仲間外れにしちゃダメです!


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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