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忘れた探しもの 1

ちゃんと最初の目的どおり精霊楽器をゲットして、氷雪山脈近くの村に戻ってくることができました。

でも……冒険者ギルドでちょっと怒られちゃった。


そういえば、森まで連れていってくれた犬ゾリに帰りも乗せてくれるって言ってたっけ?

せっかく犬笛も渡したのにと、兄様とアリスターが叱られていました。


白銀と紫紺?

そ知らぬ顔でプイッと顔を背けていたよ。

しょうがないなー。


では、ぼくが代表して、ペコリ。


「ごめんなちゃい」















そして一夜明けて、長旅っぽく村を出て適当な場所で紫紺の転移魔法の出番です。


「よろちく」


「ええ、任せておいて」


バインと胸を叩いた紫紺はチチンププイと呟いて転移魔法を使う。

この呪文はぼくが教えてあげたんだ。

かわいいでしょ?


あっという間にブループールの街! 父様たちがいるお屋敷!


「ただいまーっ!」


ウクレレを背負ってレン・ブルーベル、無事に帰ってきましたーっ!


……で、忘れてた。

後日、呆れた顔のダイアナさんに額をツンツンと小突かれるまで、すっかり忘れてた!


「あー! かぜのせーれーさんのおともらちわすれてたーっ!」


精霊楽器が増えても奏でる人が揃わないとダメじゃないか!


「おバカさん。あともう一つ、光の精霊を探すのも忘れてたでしょう?」


ダイアナさんのキレイな赤い爪がぼくの頬をツンツンとする。

うー、イタイよ。


「ダイアナ、やめてあげて。レンだって頑張ったじゃないか。ちゃんと精霊楽器を見つけてきたんだし。……これ、楽器?」


ウィル様がダイアナさんのツンツン攻撃を止めてくれたけど、ウクレレを見て首を傾げるのは止めてください。

父様も母様もセバスもみんな、ウクレレが精霊楽器だって信じてくれないんだもん。

ちゃんと、音が鳴るでしょう?


「ああ、レン。弾いてみようとしなくても大丈夫だから」


ぼくの前からバッとウクレレを奪ったウィル様は、引きつった顔でウクレレをダイアナに渡す。


「まったくレンやそこの頼りにならない神獣聖獣はまだしも、ヒューまで一緒にいて何をやっているの?」


「すみません。でも、風の精霊も光の精霊もいなかったですよ? チロの話では氷雪山脈では氷や水の精霊たちの領域みたいですね」


兄様が紅茶のカップを片手にスラスラと説明する。

う~ん、チロと同じ水妖精のチルも似たようなこと言ってたかもしれない。


「そもそも氷雪山脈地帯は白銀の守護地だったから、アンタたち精霊は忌避する場所でしょ? 旨味もない土地にいるわけないじゃない」


紫紺がフンッと鼻で笑う。


「紫紺、それで言うと風の精霊は琥珀の近くに集まることになるぞ? またあそこに行くのか? 俺はイヤなんだが……」


白銀が顔を顰めると、ぼくのズボンのポケットからぴょこんと土人形が顔を出す。


「ええー、おいでよ白銀。ボクのところには強い風がビュービュー吹いてるよ。きっと風の精霊がいっぱいいるよ? ま、精霊王もいるけど」


あ、風の精霊王様はまだ琥珀の近くでウロウロしているんだ。

ダイアナさんとウィル様はぼくのポケットの中にいる土人形こと、琥珀にビックリしている。


「そ、それはなに?」


ダイアナさんが口の端をヒクヒクとさせて指差す琥珀の土人形は、ぴょんと元気よくテーブルの上へと飛び乗ってブンッと尻尾を一振り。


「やあ! ボクは神獣エンシェントドラゴンの琥珀だよ」


「し、知っているわよ、神獣エンシェントドラゴンってことは。私が聞きたいのは、なんでその神獣エンシェントドラゴンが土を捏ねた不格好な人形の中にいるのってこと!」


ヒドイなぁ、不格好じゃないもん。


「ちょうどいい依り代だったから。動きやすいぞ」


琥珀はその場でクルリと一回転してみせた。


「はああああっ。もういいわ。とにかく風の精霊の好みそうな場所とあのバカが立ち寄りそうなところを、あとで紙に書いて送るわ」


ダイアナさんは痛そうに額を手で押さえて、ウィル様と転移魔法でお城へと帰っていった。

ぼくは兄様と顔を見合わせてちょっと困った顔です。


「また、おでかけ?」


「そうだね。風の精霊に気に入られる人を探し出すまで、ダイアナは許してくれそうもないね」


兄様も眉尻を情けなく下げてしまっている。


ぼくも忙しいのに。

リカちゃんと遊んで、マイじいと剣の訓練して、母様とご本を読んで、父様のお仕事のお手伝いをして。


「あと、にいたまとまちへおでかけ。アリスターとかくれんぼ。しろがねとしこんとおいかけっこ。しんくのおせわ」


「ふふふ。いっぱいやることがあるね」


「あい」


ぼくの横で真紅が文句を言っているが、ちゃんとお世話しているでしょ。

アリスターが腕を頭の後ろで組んで、「あーあ」と情けない声を出す。


「どうした、アリスター?」


「だってよ、楽器と精霊の契約者が揃ったらどうなるんだ? 俺は楽器の練習をしなくちゃいけないのか? そんなことになってみろ、気が滅入るじゃないか」


アリスターは両手をガン見して口をへの字に結んだ。


「……そういえば封印の楽曲とかあるのかな?」


「げえええっ。難しいのは勘弁してくれ」


確かに精霊の力を増幅させる曲を演奏すると思うと練習が必要かもしれない。

しかも、封印する力を補助するなんて、どんなに難しくて美しい曲なんだろう。


ぼくはまだ聞いたとのない幻の曲を想像して、うっとりと目を閉じた。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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