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祠と氷像 7

黒くて大きいわんちゃん、じゃなくて狼さんに変化できるお兄さんの名前はアランさんという。

ここでずっと祠を守っているんだって。

洞穴の外には、誰が作ったのかアランさんの像があるらしい。


えー、なにそれ、見たい!

ぼくが兄様におねだりしている間に、白銀たちは窮地に陥っていた。





















「いや、その、なんだな……」


つうーっと背中に嫌な汗をかく。


「しかし、しろがね? 白銀様が他の神獣様や聖獣様と仲良くなさっているなんて信じられません。あんなに他の神獣様たちの文句を言っておられたのに」


うるさい、黙れアラン。

俺はいま、お前の軽口のせいで命のピンチを迎えようとしている。


「ふーん。アタシのことも何か言っていたかしら? 今後の深ーい付き合いのためにも聞いておきたいわ」


やめろ、紫紺。

今後の付き合いが対等な仲間としてではなく、俺がお前に逆らえなくなる従属関係になりそうだ。


「俺様も知りたいぞ!」


真紅、お前はピイピイ鳴くだけの無力な小鳥でそこら辺に転がっていればいいんだよっ。

勝手に人化してんじゃねぇ。

しかも、むしゃむしゃ一人で菓子を食うなっ。


「いやはや、フェンリル様、いやいや白銀様の一番の喧嘩相手は神獣エンシェントドラゴン様でした。今は琥珀様ですかな? なんでも一番最初に創られてズルいズルいとそればかり。お酒が入るとその話が長くて我々も辟易としたものです」


アランは胸に手を当てしみじみとした表情で語るが内容が気に食わん。

もっと俺の武勇伝を話せ。


「そうそう、苦手としていたのは聖獣リヴァイアサン様でしたね。お名前は……瑠璃様でしたか? とにかく神界ではイチイチ小言がうるさいと文句を言っていました。瑠璃様はまだいいが、ヒステリックに説教をする聖獣レオノワール様とは一緒に酒も飲みたくないと姿が見えると逃げていたそうです。神獣フェンリル様ともあろう方が情けないですねぇ」


ア、アランさん。

ここに、その聖獣レオノワール様がいるんですけど……。


「あら楽しいお話ね、白銀。アンタ、アタシとお酒飲むのが嫌だったのね?」


俺は必死に頭を左右に振った。

もう、首がもげるほど激しく振った。


「め、滅相もないっ」


いや、これは本心だ。

あのときの俺は、正直瑠璃の爺さんや紫紺たちに文句や説教をされても仕方のない暴れぶりだったかな。

そうそう、悪いのは俺で瑠璃や紫紺は悪くない。

本当、本当だって。


「笑ってんじゃねぇよ。お前だって似たようなモンだろうが、真紅っ!」


ケラケラと子供特有の甲高い声で笑い転げている真紅の体をポコンと軽く蹴る。


「イッテェな! 白銀の奴、ぷーっクククク。後で紫紺に説教されるといいわ」


なんてかわいげのない鳥なんだ。


「そういえば、神獣フェニックス様についても何かと言われてましたな。なんで、あんなにバカなんだと嘆いてましたし。バカだしうるさいし弱いし、すぐ泣くしと散々な言いようでした」


しんみりと目を閉じて語るがアランよ……そこまで俺は言ってないと思うぞ?


「てめえ、白銀! 俺様の悪口がひどいぞ!」


目を三角にした真紅が小さい子どもの体で俺に飛びかかってきた。

ひょいと避ける俺。

ドビシャと地面に落ちるバカ。


…………。

一応、謝っておくか。


「スマン、真紅。昔のことだ水に流せ」


どうせお前たちだって俺のこと悪く言っていただろう?
















「それで、祭壇に祀られているのが精霊楽器なのかい?」


兄様が祭壇に置かれている楽器、たぶん琵琶だと思うけど、それを疑わしそうな眼で見る。

この世界には、琵琶っぽい楽器はないのかな?

ギターとかありそうだけど?


吟遊詩人さんとかは何の楽器を奏でているのかな?

ブループールの街に来るまで、あちこちを旅してきたアリスターに尋ねてみよう。


「吟遊詩人? いろいろだぞ。笛のときもあるしヴァイオリンとか竪琴とか。ユニークなのは太鼓とかかな?」


「うわぁ。たのちそう」


ぼくは頬に両手をあてて、キラキラと好奇心いっぱいの瞳でアリスターとお喋りしてた。

アリスターは、実際に会った吟遊詩人さんたちの話をしてくれたけど、突然片足を押さえてうずくまる。


「アリスター?」


「アリスター、あっちでディディが悪戯しているぞ」


いつのまにかぼくたちの後ろに立っていた兄様が、クイクイと立てた親指で祭壇によじ登るディディを指さす。


「おわっ。ディディ、何やってんだよ!」


アリスターは片足を手で押さえたままぴょこぴょこと走り出した。


「んゆ?」


なんだろう?

兄様がフンッと忌々しげにアリスターを見送っている気がするし、ディディは祭壇に登っているけど涙目ですごい不本意そう?

まるで誰かに無理矢理祭壇に登らせられているみたいに、悲愴な顔をしてこちらを睨んでいる。


「さあ、レンは僕と一緒にいようね」


「んゆ? あい!」


ひょいと兄様に抱っこされたぼくはゆっくりとした足取りで祭壇へと向かう。

あ、そうそう。


「にいたま。あれ、しろがねの。しろがねのものだって」


アランさんが教えてくれたよ。

あの精霊楽器は白銀に捧げられたものらしいです!

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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