出会い 2
とりあえず、転生してすぐにフェンリルとレオノワールと出会えました。
これからも一緒にいてくれるそうで、ひと安心。
フェンリルは、ぼくが住んでいたアパートの前を散歩していたおばさんが連れていた柴犬のタロよりも大きい。
倍以上大きい。大型バイクぐらい大きい。
白っぽくみえてた毛の色は、キラキラ輝く白銀色だった。
ふさふさと生えていてちょっと長い毛。脚はどっしり大きくて、とってもカッコいいです!
レオノワールは…なんだろう?猫科の動物だと思うんだ…。でも猫ちゃんと違って耳が三角耳じゃなくて丸いの。
んー、虎とか豹とか…黒豹?みたい。顔も狼のフェンリルより丸みがあって、黒っぽい毛は紺色?紫?……艶々してとってもキレイ。
短毛でスベスベしてそう。体の大きさはフェンリルと変わらないけど、しなやかな柔らかさを感じる。
「……んー」
「どうしたの?さっきから難しいお顔よ?」
ふたりとは仲良くなりたい。
「お友達」になりたいの!でも、フェンリルとレオノワールって呼ぶのは変じゃない?
ぼくのこと「人間」って呼ぶのと同じだよね?
「ふたりには、お名前にゃいの?」
フェンリルとレオノワールは互いに顔を見合わせて、フルフルと首を振る。
「ねぇよ、名前なんざ。なに?お前、俺たちに名前でも付けようって…」
「いいの?ぼくが、お名前つけて、いいの?」
「…お、おう。付けられるものなら付けろよ…。たぶん、無理だが…イテッ」
また、フェンリルのお尻がレオノワールに叩かれた。
レオノワールはちょっと困った顔でぼくを見てる。
待ってて、お名前考えるから!
フェンリルは…銀色の毛に冴えた青の目の色。アオ…。ブルー……。
うーん、あっ、そうだ。じゃあ、レオノワールの名前も同じように付けたほうがいいかも!
レオノワールは…黒?紫?の毛と淡い黄緑色の目。うーん、やっぱり毛の色かな?
ぼくは、ビシッとフェンリルを指差して「しろがね!」、今度はレオノワールを指差して「しこん!」と叫んだ。
そうしたら、ぼくの胸の中から金色のリボンがシュルルルと伸びて、白銀ことフェンリルと、紫紺ことレオノワールの首に巻き付いてリボン結びになって、ポワッと光って消えちゃった。
なんだろう?でも、なんとなくふたりのこと、もっともっと大好きになっちゃったみたい。
「…嘘、だろ」
「あんたが、付けろって言ったんでしょ。でも、まさか…。シエル様からこの子にこんな力があるなんて、聞いてないわよ」
「……お名前、イヤだった?」
ふたりが喜んでくれない。
むしろ、戸惑ってるみたい。
お名前が嫌だったのかな?
「あー、違う違う。お前が神聖契約なんてするから、驚いただけだ」
「しんしぇいけいやく?」
「私たち、神獣聖獣と結ぶ契約のことよ。魔獣に対して行う従魔契約みたいなもの。私たちの主が貴方になったってことよ」
「……あるじ……」
そ、それは友達じゃないよね?あれあれ?ぼく…友達になりたかったのに、間違えちゃったの?
うっ……。
「わーっ、なんで泣くんだ!俺たちに名前が付けられたんだぞ!それなのになんで泣くんだよっ。ふつー、俺たちに名前を付けられる強い力を持ってる奴なんていないのに。泣くな!喜べ!俺たちの主人になったんだぞ!」
「びゃあああ。ちゅじん、やーの。ともだち、ともだちなのー」
えぐえぐっと泣き出してしまう、ぼく。
泣きながら、自分でもビックリだ。こんなに大きな声を上げて泣いたことなんて、ない。
静かにしないとママやママのお友達に痛いことされた。泣いても誰も助けてくれないことも知ってた。
なのに、なんでこんなに泣くの?
もしかしたら、体に心が引きずられているの?だってぼく、3歳になっちゃったんだもん。
だから、我慢できないの?
「ほらほら、泣き止んで。アタシとお友達になりましょ。紫紺って素敵な名前ね。アタシは気に入ったわ。これからは紫紺って呼んでね?」
ポロポロと零れるぼくの涙をペロペロと舐めてくれる、紫紺。
っひく。友達になってくれるって…。嬉しいな。
なんか、泣いて無理やりになってもらった気もするけど……。
「あい。ともだちれしゅ。ぼく、レン」
「レン。ほら、泣き止んで。ここは森の中なんだからいつまでも居たら危ないわ。人のいる街まで行きましょう」
うん。うん、もう泣き止むよ。そうしたら、森を出て街に行って……。
「レン。俺も友達でいーぞ。白銀って呼べよ」
ふぁさ、と目の前に尻尾を差し出して、白銀が言う。
ぼくは、泣き笑いながらそのふさふさな尻尾を抱きしめた。
「あい。よろちく」