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雪と氷の世界へ出発! 6

雪の森の木と木の間隔が少し広いところで、ぼくたちは魔獣狩りの練習をします。

……兄様はぼくを抱っこしているから両手が塞がっているよ? 大丈夫?

本当に、魔獣を魔法で攻撃するつもりなのかな?


「白銀と紫紺は僕たちのフォローをお願いする。アリスターはなるべく剣で攻撃しろ。雪で覆われているとはいえ、森の中で強い火魔法は問題がある。僕は後方でお前の打ち損じを水魔法で迎撃する」


「そりゃいいけど……。ヒュー、大丈夫か?」


アリスターはとっても心配そうな目で、兄様に抱っこされているぼくを見る。


「にいたま?」


ぼくは、戦闘の邪魔にならないように白銀か紫紺におんぶしてもらえばいいのでは?


「水魔法もちゃんと練習しているから、レンのことは僕に任せて。チロももちろん協力してくれるよね?」


兄様の呼びかけに、チロは定位置となっている兄様の肩からピョンと飛び立ち、くるりとぼくの周りを回ってみせた。


『まかして! ひゅーはさいきょうよ!』


なんだろう? チロがめちゃくちゃ張り切っているのが、不安でしょうがない。


でも、ぼくの契約妖精であるチルは、見渡す限り雪・雪・雪景色! に興奮してバッビューン! と出かけて行ってしまった。

いつもの森と違うんだから、迷子にならないでよ?


「じゃあ、ヒューたちの戦闘訓練といこうか。まずはこいつらだっ!」


白銀がニヤリと悪そうに口端を歪めて笑うと、ひらりと体を動かす。

その背後からぴょーん、ぴょーんと飛び跳ねてきたのは、真っ白な体毛で額に鋭い銀色の角を持つ兎さんだーっ!


「にいたま!」


魔獣と初めて接近するぼくは、思わず兄様の上着を掴んでしまった。


「大丈夫だよ。こいつらはホーンラビットの亜種かな?」


兄様は何匹も一斉に襲ってきたのに、冷静に一匹ずつの動きを確認してアリスターに「右だ」「後ろにいるぞ」と指示を飛ばす。

兄様、かっこいい……。

アリスターの足元にいるディディも、ボボーッと尻尾から火の玉を出して兎の顔面に攻撃しているよ。


『ひゅー、やるわよ』


チロのやる気に兄様が答える。

片手を兎に翳して、キリリと決め顔で詠唱した。


「ウォーターボール」


ポワンと水の玉が兄様の手のひらから兎へとピューッと飛んでいく……けど、兎に当たる前にバッシャンと弾けてしまった。


「んゆ?」


「ウォーターボール!」


兄様が立て続けに幾つものウォーターボールを投げつけているけど、やっぱり相手の前でバッシャンと弾けてしまう。


「ちっ。水属性の耐性が強いか」


「ヒュー。無理しないで剣を使えよ」


アリスターがバシバシ兎を倒しながら兄様へ助言をするが、兄様はムッと顔を顰めてさらにウォーターボールを乱射する。

ふえっ、さ、寒い。


「に、にいたま……」


そんなにウォーターボールを無駄撃ちしないで。

魔力切れを起こしたら、バッタンって倒れちゃうんだよ?


「レン……」


兄様は自分の魔法が魔獣に効かなくてちょっと情けない表情になっていた。


「あ、あのね。みずのたまがだめなら、こうすれば?」


こしょこしょと兄様の耳に内緒話、兄様の肩にいるチロにも聞こえているはずだ。


「よしっ! チロ、頼む」


『ええ。任せて』


そして二人が力を合わせて叫ぶ。


「『ウォーターアロー』」


矢のように標的へと飛んでいく水の矢……いや外気の寒さで矢じりから凍っていく魔法の氷の矢は、スコーンと兎の眉間に刺さった。


「やった!」


よ、よかったねぇ。















「てこずりすぎじゃねぇか?」


「あら、白銀。充分じゃないの。倒した兎の数が三十を越えていたわ」


「ピイピイピイ」

<こいつら食ったらうまいのか?>


真紅の言葉に紫紺と白銀は、ハッとした顔をして慌てて兎を集めだした。

紫紺の収納魔法でしまっておいて、今日の晩ご飯になるんだろう。


ううーっ。


「おい、レン大丈夫か?」


「つ、つべたい」


アリスターがぼくを心配して声をかけてくれたよ。

ぼくね、ゾクゾクと寒くてお顔がピキピキと冷たくて痛いのに、頭がボーっとしてきちゃったんだ。


「レン! たいへんだっ。あちこち水滴がかかって、しかも凍っているじゃないか! ああ、顔が真っ赤だ」


兄様が手袋を外した手をぼくの額にそっと当てる。

ふわわわっ、冷たくて気持ちいい。


「きもちいい……」


へらっと笑ったら、兄様がこの世の終わりみたいな壮絶な顔をして絶叫した。


「レーンー! 熱がある! すごい熱だよーっ」


ああ……だって兄様とチロの魔法の水がびしゃびしゃぼくにかかっていたからね、そりゃ寒いよね?


「……つべたいよー」


ガクッ。


「レン?」


「おいっ、レンがたいへんだぞ? どうしよう、どうしよう」


「ピイ」

<あれ? こいつ、死んだ?>


「「真紅ーっ!」」


なんか真紅がものすごい失言をしたとかで、白銀と紫紺にボコボコに殴られたらしいんだ。

でも、ぼくはもう頭がグワングワンしてて体がブルブル震えてて、ちっともそのときのこと覚えていないんだ。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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