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【11月コミックス2巻発売!】ちびっ子転生日記帳~お友達いっぱいつくりましゅ!~  作者: 沢野りお
春花祭編

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笛の音を追って 1

ベッドの中、兄様に抱き枕にされながら、今日1日の楽しいことを指折り数えて思い出す。


ふふふ。

レストランの食事は、お祖母様がぼくでも食べやすいように、ワンプレートに盛り付けた料理を出してくれるようにお願いしてくれていた。

お子様ランチのようなプレートが嬉しくて、頑張って自分でスプーンを持って食べたんだよ。

兄様たちはハラハラしながらぼくを見てたけど、あんまり零さないでちゃんと食べれたよ。


食べられるお花で綺麗に飾られたフルーツタルトを食べてたら、夜空にパーンと花火が咲いた。

みんなでテラスに出て、色鮮やかな花火を見てたけど、ぼくはちょっと物足りない。

テレビで見た花火大会はいろんな形の花火があったのに、ここでは丸く菊のような花火だけ。


「もっと、いろんな、おはなのかたち、ないの?」


お祖父様はぼくの言葉にびっくり!考えたことがなかったらしい。

この世界の花火は、火薬じゃなくて魔道具と魔法で作って上げているんだって。

早速、いろんな花火を作るぞ!てお祖父様は張り切っていたよ。

ご、ごめんなさい、お仕事増やしちゃった。


お屋敷に帰ってきて、急いでお風呂に入って、白銀と紫紺のブラッシングして、楽しいことを思い出しているうちに、眠っちゃったみたい、ぼく。



なに?


~♪~~♪♪~

<…………で。…………で。………おい……。こ……。>


だれ?


♪~♪~~♪~♪~♪

<…………おい…………で……。こ……、おい…………。こっち……、……で……>


笛の音。

それと、女の子の歌声?


♪~♪♪~

<…………で。おいで。こっちに、おいで>


「んゆ?」


誰かが呼んでいる声に、眠い目を擦って起き上がる。

部屋は真っ暗で、たぶんお外も暗い、真夜中。

ぼくは何も見えない暗闇の中で、左右を見回す。

でも、誰も起きていない。

まだ、聞こえるんだけど……ぼくを呼ぶ声が…。


「だぁれ?」


誰も答えない。誰も……。


「んゆ?」


ぼくはコテンと首を傾げる。

なんで?なんで、兄様も白銀と紫紺も起きないの?

いつもは、ぼくが起きるとすぐに起きてくれるのに……。

横を見るとぐっすり寝ている兄様が。

おかしいな?

ぼくは、兄様の体を揺すってみる。


「にいたま」


小声で呼びかける。

兄様の寝息は乱れることもない。

え?おかしいよね?

ぼくはもっと強い力で、兄様を揺すりながら声をかける。


「にいたま。にいたま!おきて、にいたま!」


……起きない。

ど、どうしよう……、眠ったままの兄様に怖くなってきたぼくが泣き出す前に、ベッドの上にストンと重みが降ってきた。


「どうした、レン?」


「なに?トイレ?」


「しろがね。しこん」


よかった、ふたりが起きてくれた。

ぼくは自分に聞こえる笛の音と歌声。今も頭に響く呼ぶ声。

起こしても起きない兄様のことを上手に回らない口で説明した。


「は?」


「なにそれ?そんな笛の音なんて聞こえないわよ?」


「いやいや、それより、本当にヒューの奴が起きないぞ!」


白銀が兄様の体の上で、ぴょんぴょん飛び跳ねてみせる。

ちょっと痛そうです。

紫紺はベッドの上から下りて部屋を一周してから、首を傾げて見せる。


「特に魔法が使われている様子はないわねぇ。とにかくヒューを起こしましょう」


「どうやって?」


白銀が前足を、兄様の頬にぷにっと押し付けている。


「レン。精霊の泉でヒューに魔力を流したのを覚えてる?ちょっとやってみて」


「え?」


いいけど……。

ぼくは、両手を兄様の体に当てて、目を瞑り魔力か何かは分からないけど、流すイメージをしてみる。


「おいおい、危ないんじゃないのか?」


「すぐに止めるわよ」


紫紺は自分の前足を兄様の額に当てて、自分の魔力を流す。


「……んんっ」


兄様が身じろいだ!


「レン、手を放していいわよ。ヒュー、起きなさい!」


ビシッと額に猫パンチ!


「わっ!」


兄様が飛び起きました。







「今も聞こえるの?」


兄様に聞かれてこくんと頷きました。

笛の音と歌声はずっと聞こえてるし、「こっちにおいで」と呼ぶ声も頭に響いてます。


「うーん、僕がレンが起きているのに、気づかないのも不思議だし、こんなに騒いでたのに、護衛の騎士も父様も、あのセバスも気づかないのはおかしいな」


兄様は騎士を目指しているので、なるべく普段からも気配に敏感でいるよう訓練しているそうで、隣で寝ているぼくが起きているのに気づかないはずがないと、断言してます。

疲れていたら、無理じゃないのかな?まだ兄様だって子供でしょ?

でも確かにセバスさんが起きてこないのは、おかしい。

あの人、ぼくが夜のトイレに起きても気づくんだもん。


今、白銀は屋敷を見回りに行ってるから、みんながどうしてるかすぐに分かると思うけど。


「レンの呼ばれてる方向はどっち?」


紫紺が、窓の近くまで移動してぼくに尋ねる。

兄様は、ぼくを抱っこして窓まで運んでくれた。


「うんと……あっち」


ぼくが指差した方を見て、紫紺が目を眇める。

兄様は眉を寄せて、


「おかしいな。いくら祭でも、こんな時間まで灯りを消していないのは、あり得ない」


と呟いた。


祭の日は夜遅くまで灯りは点いてるが、やっぱり油がもったいないので、時の鐘が終わると消されるらしい。

でも祭のあったアーススターの街の方は、まだ煌々と灯りが点いていて明るい。


「あっちの方向から、あんまりいい魔力じゃないのが集まってるわね」


紫紺は嫌そうに言い捨てる。

例えるなら盗賊や凶悪な魔獣が、沢山いる感じがするらしい。


「あ!」


ぼくは、昼間に会った獣人のアリスターの言葉をようやく思い出す。


「どうしたの?レン」


あのね、と兄様に話そうとしたとき、白銀が猛スピードで部屋に戻ってきた。


「おいっ!ここの奴ら全員寝ているぞ!ギルたちだけじゃない、騎士たちも門番もだ!」


騎士たちは交代で護衛しているし、門番も交代で番をしているのに、みんなその場でぐっすり寝ていたらしい。


いったい、何が起こっているんだろう?




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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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