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ドラゴンの卵を探せ 7

誤字脱字報告ありがとうございます!

いつも、ありがとうございます。

道化師の男……プリシラの父親を襲っていた黒幕も奴だったとは、まったく腹立たしい男だ。


お祖父様の領地であるアースホープ領で子どもたちの誘拐を企て、その作戦の練習とばかりに付近の商人や旅人たちを襲っていた。

その犠牲になったのは、商隊の護衛をしていたアリスターの両親だ。

しかも妹は道化師の男に連れられ、悪事に加担させられていた。

もし、僕の弟であるレンが同じようなことをさせられていたとしたら……僕は必ず奴を捕まえこの世に生を受けたことを後悔させてやることだろう。

……うん、アリスターも同じことを思っているから、そのときは手伝ってあげよう。

アリスターは僕の従者だけど、一緒に剣の修行をする親友だからね!


道化師の男は神獣聖獣である白銀と紫紺の手から逃げ、そのあともあちこちで悪事……いわゆる瘴気、しかも神気が混ざった瘴気をばら撒き、疑念と惨劇を齎し混沌を招こうとしていた。

厄介なことに、あいつはその瘴気を増幅させる魔道具を持っているようだった。


王都では王弟である公爵家に近づき、もう少しで第三王子が取り込まれ王家に古の瘴気が蔓延するところに、偶然僕たちが王都を訪れ事なきを得た。

道化師の男は、まさしく道化となってサーカス団に身を隠し、あちこちへと旅をしているらしい。

次に僕たちが奴の企みに気づいたのは、隣国の問題だ。

農作物が不作で困っている、その理由は国に居座っている聖獣のせいと誤解した王侯貴族から、僕たちブルーベル辺境伯……いや神獣聖獣と契約しているレンへと調査の依頼がきたんだ。

本当に聖獣がいるのか調査してほしいというより、問題の聖獣をどうにかしてほしいというお願いだったけど、実は道化師の男が仕組んだ魔法陣のせいだった。


捕らわれた土の精霊王も助け出し、問題の魔法陣も壊すことができたけど、まさか本当に聖獣ホーリーサーペントがいるとは思わなかったよ。

しかも、またまたレンと契約してしまうなんてね。


道化師の男が仕掛けた悪事を未然に防ぐことができているけれど、あの男の姿を見ることはできない。

僕はあいつを捕まえて、アリスターたちにしたこと、レンを傷つけたことを身をもって謝罪させたいのに!


もしかしたら、これはあいつを捕まえる好機なのでは?

ドラゴンの卵を盗んだのは、道化師の男ではないだろうか?

あの男なら、このドラゴンの国に忍び入り卵の一つも盗みそうだし、それぐらいの能力は持っていそうだ。

そして土の精霊王を摘まえることができたのなら、ここら辺一帯を騒がしく飛び回っている風の精霊たちにも気づいているだろう。


僕は考える。

ドラゴンの卵を無事に取り戻し、ブランドンさんを保護しブループールの街にいるプリシラと会わせる……前に、ちょっと道化師の男を捕まえようとしてもいいよね?

風の精霊たちを静まらせ油断させておいて、その動きを紫紺に追ってもらい、白銀と……真紅は無理だよね? じゃあドラゴンにも協力してもらって追い詰めて奴を捕まえよう!


「にいたま? たのしちょう」


クイクイと僕の上着の裾を摘まんで、レンがにぱっと笑う。


「うん? 楽しいというより、待ち遠しいかな?」


道化師の男を捕まえて、縄でグルグル巻きにしてやったら、とりあえず一発殴ってもいいよね?

















兄様、なんだか楽しそうにニコニコしている。

これから風の精霊さんたちに大人しくしてもらって、ドラゴンの卵を盗んだ悪い人を捕まえるのに、なんでニコニコしているんだろう?


「レン。ヒューのことは気にするな。あいつは今、悪い奴を捕まえたらどうしてやろうかな? って物騒なことを考えているんだ」


アリスターがぼくの肩に手を置いて、渋い顔をして教えてくれたけど、兄様はそんなこと考えないよ?


「んゆ?」


とにかく兄様は、悪い人を捕まえるのに気合いを入れていると思っていよう!


「そうだな。気合いは入っていると思うぞ、無駄にな……」


なんで、アリスターは遠い目をしているんだろうね?


それよりも……お空から侵入か……。

風の精霊さんがドラゴンの卵を探してあちこちビュンビュン飛び回っているらしいけど、ここは静かだよね?

でも山肌を覆う木々は右に左にと大きく揺れて、ビュービューと風の音が聞こえてきそうだ。

そんなに強い風が吹き荒れていたら、いくら魔獣でもお空は飛べないのでは?


「ふむ。我らドラゴンであれば、風の精霊たちの戯れなどどうでもいいが、他のか弱き者にはちと辛いかもしれぬのう」


赤い髪のおじさんは、ちょっと満足そうにフンフンと鼻息荒く、ぼくの疑問に答えてくれました。


「いや、ワイバーンなら……」


「ハーハハハハッ! 赤髪の小僧? もしやワイバーンが竜種だからとでも言いたいか? フンッ、あんな奴ら竜種などではないわ、トガゲよ、トカゲ。羽トカゲじゃ」


キーンと大きな声に耳が痛くなったので両手で耳を塞ぐと、腕を組んで大笑いする赤い髪のおじさんと、顔を顰めたアリスターが睨み合っています。


「ん? お主の腕に抱いているのもトカゲじゃな。小僧はトカゲ好きだったか、こりゃ悪いことを言ったな。ハーハハハハッ!」


「いや……俺は別にトカゲ好きじゃない……」


でもトカゲ呼ばわりされた火の中級精霊ディディが不満そうに目を半目にして、尻尾の先がボッと青い炎で包まれたよ?


「あっち! おい、ディディ」


アリスターがディディを両手で掲げて「熱い、熱い」と周りを駆けまわり始めた。


「何やっているんだ、あいつは……。ところで、この辺りにはワイバーンがいるんですか?」


「ああ。あいつらの巣なら、あっちの山の中にいくつかあるぞ」


赤い髪のおじさんが指示した場所はここから一番近い山です。

近いけど、ドラゴンが怖くてこっちに飛んでくることはないそうです。


「……ヒュー。来たわよ」


紫紺と白銀が川の方向に顔を向けジッと見つめていたのは、どうやらチルとチロが連れて来る水の精霊王様待ちだったみたいです。

川の水面がブクブクと泡立ち、バシャンバシャンと水柱が立っていきます。

噴水のように川の水が上へと溢れ出すと、そこからピョーンと二つの水玉がこちらへと飛び出してきました。


『レーン! おーさまつれてきたぞー』


『ヒュー。あいたかったわー』


お帰り、チルとチロ! ミッションコンプリートだね!


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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