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ドラゴンの卵を探せ 6

ぶーぶーと文句を垂れながらチルとチロは川へと飛んでいく。

その後ろを水色の長い髪をキレイに結った女の人が付いて行った。

チルには好きなおやつチケット五回分、チロには兄様のスペシャルスマイルで交渉成立できました。

これから二人は川のお水で妖精の輪(フェアリーサークル)を作り水の精霊王様に伝言……できたらこちらへ来てもらって風の精霊王様をコントロールしてもらいたいです。


『こんなかわだと、あっちいけないぞ』


『……しょぼ』


ドラゴンの国に流れる川を「しょぼい」と言ってはいけませんよ?

緑の髪のお兄さんのこめかみがピクピクしていたけど、水の妖精たちの補助になればと水色の髪のキレイなお姉さんを呼んできてくれました。

水属性の強いドラゴンさんなので、水魔法でたっぷりと水を補ってくれるらしいです。

よかったね、チルとチロ!


「おいおい、ヒュー。あっちで大量な水が噴き出してトルネードしているけど、大丈夫か?」


「……大丈夫でしょ。仮にも水の妖精と水属性のドラゴンなんだから」


「ほへぇー」


すごいねぇ、川のお水が全部お空へとクルクル巻き上がっていっちゃった……あれ? チルとチロもクルクル回っているけど、大丈夫?


「これで風の精霊たちはなんとかなるね」


兄様が爽やかな笑顔を浮かべているけど、本当に風の精霊たちを止めることができるのかな?


「ブランドンさん。とりあえずドラゴンの卵が戻ってくるまではここにいてください。問題が片付いたら一緒に山を下りましょう」


「ええ。よろしくお願いします」


ぺこりと頭を下げるブランドンさんに見送られて、ぼくたちは緑の髪のお兄さんに一緒に、最初に案内された場所へと戻ります。


ブランドンさんはここに連れてこられたときの怪我は治っているそうですが、長い間の逃亡生活と、体に蓄積されていた瘴気のせいで、体が弱っているんだって。

ドラゴンさんたちの看病で少しずつ良くなってきて、ここ最近では昔のように動けるようになってきたらしい。


緑の髪のお兄さんが自慢げに言うには、ドラゴンさんたちは最強種族であると同時に最も神獣聖獣に近い種族として多彩な能力に恵まれているとか。


「その一つが、光属性のドラゴンが持つ能力。浄化です」


「浄化……それは各精霊たちが持っている能力ですよね?」


兄様が驚いて問うと、緑の髪のお兄さんは鼻の穴を大きくして頷きました。


「そうです。我らは創造神様から精霊にしか与えられなかった浄化の力を行使できるのです! ま、そうは言っても劣化版の能力で、効力は微々たるものですけどね」


たははは、と恥ずかしそうに笑って頭を掻く緑の髪のお兄さんに、ぼくたちは互いの顔を見合わせた。


「そうね……。確かにドラゴン族は単純な力もそうだけど、魔法にも長けた種族だったわ」


紫紺が苦虫を百匹噛み潰した顔でうんざりと呟くと、隣の白銀もしょっぱい顔をして相槌をうつ。


「そうだったな。プライドが高くて負けず嫌いの厄介な()()だった」


なんだか昔のあんまり楽しくない思い出に浸っているみたいだから、そっとしておこう。

緑の髪のお兄さんたちドラゴンは、それぞれの属性の精霊たちから新しい魔法を教えてもらって日夜能力の向上に励んているらしい。


「えらいのー。すごいのー」


ドラゴンさんたちとっても強いのに、まだまだ頑張っているのは尊敬できます。

パチパチと小さな両手でいっぱい拍手しました!














赤い髪のおじさんたちと改めて向き合って話し合いですけど……どうするの、兄様?


「そうだぞ、ヒュー。風の精霊王様のことは他の精霊王様に頼むとして、ドラゴンの卵を見つける手段が俺らにはないぞ?」


頼みの綱の紫紺もドラゴンの卵探しは難しいって、ぼくたちもこの広い山を探して歩くのは厳しいですよ?


「うん。風さえ止めば、いいや風の精霊たちがこの場を去ってくれれば、もしかして……と思っているよ。ねえ、紫紺」


「なに? ヒュー」


「あのね。ドラゴンの卵の気配は読みにくいけど、魔力の強いものを見分けることは可能? そのう、魔力の強いものが移動しているとか?」


「? そうねぇ、その強いものの度合いにもよるけど、魔力の強いものが広範囲に動いているならわかると思うわ。ただ、それがドラゴンだと難しいわね」


ここは、あちこちにドラゴンさんがいて、ドラゴニュートさんたちもいて、極めつけは神獣エンシェントドラゴンが山頂に棲んでいるから、ドラゴンの気配は読みづらいんだものね。

兄様は紫紺の言葉に少し考えてから、赤い髪のおじさんへと真剣な眼差しを向けた。


「ここは出入りに厳しい場所ですよね? こっそり人やドラゴン、他の種族、魔獣が出入りすることはできますか?」


「いや。決して我が種族の力に驕り高ぶった発言ではない。難しいと思うからこそ、ドラゴンの卵を盗まれるという現状に対応ができないのだ。誰人も同族のドラゴンさえ気づかれずにここに入ってくることはできない……はずだ」


赤い髪のおじさんは、ぐむっと唇を引き結ぶと目を瞑って眉間に深いシワを刻む。


「……ですが、上からはどうでしょう? 又は精霊たちの仕業とか?」


兄様が人差し指を空に向ける。


「……上? まさか空からか? 確かに精霊たちの仕業なら卵も易々と盗めるだろうが……。いや、あ奴らはそんなことはしない」


赤い髪のおじさんはフルフルと頭を振るとため息を吐く。


「僕も精霊たちの仕業とは思っていません。でもここに侵入ができるとなると、隠蔽魔法に長けた種族か、同族のドラゴン。もしくは空から侵入できる種族じゃないかと思うんです」


空からの侵入? お空を飛んできたの?


「ああ、だからヒューは魔獣がここに入れるか尋ねたのか? 空からの侵入……従魔を使って空から入る可能性もあるな」


アリスターがぐるりと空を見回して空を飛べる魔獣をブツブツと呟く。


「それでもドラゴンたちに気づかれないで卵を盗むのは至難の業だよ。つまりそれだけの能力があるんだ。そして、今、そいつはその能力のせいで身動きができない」


「「「?」」」


「能力、たぶん魔力だと思うけど。そんなに強い魔力持ちなら、ここら辺一帯を風の精霊たちが飛び交っているのに気付いている。そしてその理由にも。だったらまずは身を隠すだろう?」


「魔力が強ければ、精霊たちの姿が見えるだけじゃなく、言葉も聞こえるかもしれない」


「そうだ、アリスター。精霊たちが卵を探してあちこちを飛び回っているのを、盗んだ本人はどんな気持ちで知ったのか。そして、精霊から逃げることは難しいはずだ」


赤い髪のおじさんはゴクリと喉を鳴らし、震える声で兄様に尋ねた。


「では、犯人はまだ近くに潜んでいるのか?」


「僕は、そう考えます。だから奴が動いて紫紺がその気配を辿れるように、風の精霊たちには大人しくしていてほしいんです」


ニッコリと笑った兄様をぼくはめちゃくちゃカッコイイとうっとりしたけど、アリスターと白銀、真紅は「ひえええっ」と怯えていた。


「いいわね、ヒュー。その作戦気に入ったわ!」


紫紺はやる気MAXでシャッキーンと爪を伸ばしていました。

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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