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ドラゴンの卵を探せ 1

誤字脱字報告ありがとうございます!

いつも、ありがとうございます。

赤い髪のおじさんと緑の髪のお兄さんがあわあわと慌てているのを遮るように、兄様が核心を突いた。


「ドラゴンの卵が盗まれたことはお聞きしています。もしかしてその探索に風の精霊に助力を求めた?」


「うっ! そのとおりじゃ、お客人。我らの卵が盗まれてしまい、山の中をあちこちと探したが見つからず、ちょうど神獣様の元を訪れていた風の精霊王様に事情を話し助力を……まさか、下界がこのような騒ぎになっているとは」


赤い髪のおじさんは額からぶわっと汗を流して、しどろもどろになりながら説明してくれました。

下界……そうか……ぼくたちが住むところを、ドラゴンさんたちは下界だと思っているんだ。

なんだか、面白くないような複雑な気持ちです。

ぼくの眉がちょっぴり寄って難しい顔をしていると、白銀がぺろりと頬を舐めてきた。


「風の精霊王か……。紫紺、奴が近くにいるかどうかわかるか?」


「さあね。あの子の神気のせいでよくわからないわ。どうせ、そのせいでドラゴンの卵の気配も掴みにくいんでしょ」


紫紺の推察に緑の髪のお兄さんが情けない顔で何度も頷いた。


「そうなのです。偉大なる神獣様の神気が強く、産まれたばかりの微弱なドラゴンの気配など消されしまい、追うことができないのです」


がっくりと項垂れてしまう目の前のドラゴンさん二人に、白銀は躊躇なく要求を突きつける。


「とにかく、お前らが言う()()が困ってんだ。いますぐ風の精霊たちを止めるんだな」


「そ、そんな。それではドラゴンの卵が……」


ひえええっと二人が顔を青褪めさせて白銀に縋ろうとするけれど、白銀はぷいーっと顔を背ける。


「ドラゴンの卵のことはお気の毒さま。でも下界は食べることができなくなってもっと困っているのよ。ドラゴンの卵一つに人の命をどれだけかけるつもり?」


紫紺が冷たい眼でドラゴンさん二人を睨みつける。


「し……しかし、このドラゴンの国で初めての卵なのです。それはそれは、皆、楽しみにしていまして……」


しょぼんと落ち込む赤い髪のおじさんの大きいのに小さくなった体を見たら、かわいそうになってしまった。


「初めての卵? 確かにドラゴン族では滅多に卵は産まれないでしょうけど、初めてなのですか?」


兄様がコテンと首を傾げて尋ねると、緑の髪のお兄さんが目元にハンカチをあてながらこの国の成り立ちを教えてくれました。














この世界で一番高い山の頂に創造神様が神獣エンシェントドラゴン様を遣わしてくださった。

ドラゴン……我らと同じドラゴンの神獣様……。


その姿を拝んだことも、その咆哮を聞いたこともないけれど、同じドラゴンだということに胸がざわついた。

もしや、創造神様は我らの王を遣わしてくださったのでは? では、我らは神獣様に仕えることが使命なのでは?

属性同士のドラゴンで集い群れていたドラゴンたちは、強く尊い神獣様が我らの王だと確信しその元へ馳せ参じたいと願うようになった。


「いや、全ドラゴンでおしかけるわけにはいくまい」


「そうじゃ、我らはこの世界で最強の種。この不安定な世界に秩序を齎すためにもまだ各々の地は離れられまい」


……いや、そのために神獣様や聖獣様がご降臨されたのでは? と思ったドラゴンもいたが、発言したのはドラゴンの中でも年長な者たちだったので賢明にも黙っていた。


「選ばれたドラゴンだけがお傍に仕えるべきだろう」


「そうじゃな。この世界にはまだまだ強く若いドラゴンが必要じゃ。その点我らはもう年老いた」


「そうだそうだ。残りの命は神獣様に捧げよう」


こうして、各属性ドラゴンの集落から強く()()のドラゴンが神獣エンシェントドラゴン様の元へと旅たち、近くの山に国を作った。

それ以降、各集落で強く年長のドラゴンは、その集落での役目を終えたら、このドラゴンの国で余生を送るようになった。


そのため、ドラゴンの卵が産まれることはなかったのだ……ここは余生を神獣エンシェントドラゴン様に捧げる者たちの国だから。


「……アンタたち、余生を送るドラゴンに見えないわよ?」


紫紺が片目を眇めて二人を見ると、ドラゴンさんたちはばつの悪そうな顔で俯いた。


「ああーっ、お前たちアイツの傍に行きたいからって集落を出てきたんだろう? 俺様にはわかるぞ! お前たちズルしたなぁ」


真紅が口の周りにお菓子の食べかすをいっぱいつけて元気に発言すると、ドラゴンさんは図星だったのか顔を赤らめた。


「そりゃ、まだまだ若いドラゴンだったら、卵も産まれるだろうよ。しかし強いドラゴンなら集落の……その属性ドラゴンの長だったんじゃないのか?」


白銀が言うには、ドラゴンも強さがすべての判断基準なので、一番強い人が一番偉い人……ドラゴンになるらしい。

つまり……。


「このドラゴンたちは、自分の属性ドラゴンたちを率いることより、エンシェントドラゴンに仕えることを選んだおバカさんたちよ」


ふうっと紫紺がため息を吐き、ドラゴンさん二人を軽蔑の眼差しを向けた。


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