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ドラゴンの国へ 7

ドラゴンの国へ訪問の先触れとして行っていたドルフさんがぺいっと入口から放り出されてきました。


んゆ?

しかも、あちこちボロボロで心なしかドルフさんが萎れているようです。

兄様とアリスターが慌てて駆け寄って、ドルフさんの体を支えます。


「大丈夫ですか? どうしたんですか?」


「わあっ。ポ、ポーションを飲ませよう」


兄様に抱き起されたドルフさんの顔には三本の引っ搔き傷があって、そこからつうーっと血が流れていました!

アリスターがポーションを飲ませてあげると、しゅわわわと傷が消えていきます。


「だいじょぶ?」


ぼくが声をかけると、ドルフさんはへにょりと眉を下げて情けないお顔になりました。


「申し訳ありません。ちゃんと説明したのですが、卵のことで気が立っているみたいで聞き耳を持たず。一撃で追い出されてしまいました」


「ううん。いいの。いたいのいたいの、とんでけー」


ぼくはドルフさんの頬を撫でて、ぶんっと腕を上へ振り上げた。

これで痛いのはお空に飛んでいき、ドルフさんは痛くないはずです。


「何やってんだ、レンは?」


「しいーっ。アイツの怪我の治療よ」


白銀と紫紺がコソコソと話していると、真紅がババァーンと前に出てふんぞり返って鼻息荒く言います。


「俺様がやり返してきてやる!」


なんとなく、ワクワクして嬉しそうだよ?


「ダメよ。喧嘩しに行ってどうするのよ」


真紅の背中に頭をゴツンとぶつけて紫紺が諌めると、真紅はぷうっと頬を不服そうに膨らませた。


「そいつが役に立たなかったなら、俺らがトカゲにわからせてやればいい」


白銀が胸を張り牙を剥き出して笑う。


「……。とにかくアタシたちが行けば大人しく中に入れるでしょう。ヒューたちはここで待っていて」


紫紺がゆっくりとドラゴンの国の入口となっている岩の狭間へと歩いていくと、白銀が焦ったように追いかけていく。


「えーっ、俺様を置いていくのかーっ」


真紅が大きな声で叫ぶけど、紫紺は尻尾をひと振りしただけで、振り向かずに行ってしまった。


「にいたま?」


「うん。たぶんドラゴンの国には入れると思うけど、なんだか不安だね」


「……絶対、力業で入国させるつもりだろう」


アリスターが肩を落として呟くと、ディディが心配そうにアリスターの手をペロペロと舐めていた。














しばらくその場で待っていると、いきなり兄様とアリスターが深ーくため息を吐いた。


「……やっぱり」


「嫌な予感はしていた」


白銀と紫紺が岩と岩の狭間から姿を現しこちらへと戻って来るのが見えると、ぼくの隣りに座っていた真紅がジタバタと暴れ出した。


「ずっりぃ、ずるいぞ! 二人してすとれす? 発散してきたなぁ」


「んゆ?」


真紅の言葉にぼくが目を凝らして白銀たちを見ると、二人の後ろからズルズルと何かが引きずられてくる。


「にいたま、あれなあに?」


不思議な物体を指差して、兄様へ顔を向けるとくしゃっと顔が歪んだ。


「あ、あれはね。た、たぶん……ドラゴンの国の……ドラゴンかなぁ」


「……んゆ?」


ドラゴンの国の人……いや、ドラゴンさんかぁ……でも、なんで白銀たちに引きずられているの?


「待たせたな」


「ドラゴンの国へ入れるわよ。行きましょう」


満足げにふさふさと尻尾を振ってお座りする二人に、とりあえず労いの頭なでなでをしておこう。

なでなで。


「ひいいいぃっ。幼子が殺されるぅ」


「ぎいやあぁぁぁっ」


「「うるさいっ」」


ぼくが白銀と紫紺に触れると、後ろにいる引きずられていた人たちが騒ぎ出した。

ドラゴンさん……人の姿をしているから、ドラゴンに見えないけど、ドラゴンさん?


「白銀と紫紺。この人たちはどうしたのかな?」


兄様がやや引き攣った顔で尋ねると、二人はコテンと首を傾げる。


「案内人だ」


「ドラゴニュートを追い出した門番よ」


「つまり、ドラゴンの国の人……ドラゴンなんだね」


コクリと二人が頷くと、またまた後ろの人の姿をしたドラゴンさんたちが騒ぎ出す。


「た、助けてくれ、人の子よ」


「この恐ろしい魔物から我らを解放してくれ」


「あら、躾が足りなかったかしら」


ちょっと失礼な言葉に紫紺が爪をシャッキーンと伸ばして、ドラゴンさんを威嚇した。

きゅっと唇を引き結んで静かになる二人、ぷるぷる震えて涙目です。


「しこん、めー。かわいちょう」


ドラゴンさんに同情したぼくは紫紺の首に抱き着き、紫紺を止める。


「あら。しょうがないわね」


紫紺の爪が元に戻り、にこやかな顔でペロンとぼくの顔を舐める紫紺。


「あの幼子は何者じゃ」


「あの子はもしやエンシェントドラゴン様が遣わした神の子では?」


「んゆ?」


ぼくは白銀と紫紺、真紅の友達で兄様の弟、レン・ブルーベルですよ?

何か誤解しているドラゴンさんたちに困惑していると、ここまで案内してきたドルフさんがバーンと仁王立ちして声高に叫ぶ。


「そうだ! この方こそエンシェントドラゴン様がお認めになられた客人だ! さあさあ、ドラゴンの国へ案内せいっ」


……元気になるのはいいけど、急に偉そうになったのはなんでなの?

そして、ドラゴンさんたちは、ぼくに向かって「ははー」と頭を下げなくてもいいいから、普通にしてよ!

兄様の背中に隠れてぷくっと頬を膨らますぼくなのでした。

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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