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ドラゴンの国へ 5

誤字脱字報告ありがとうございます!

いつも、ありがとうございます。

ドラゴニュートの村、そこを治める長さんは、ぼくたちをドルフさんから紹介されいろいろあったあと、腕を組んで「うーん、うーん」と長い時間悩んでいます。

ぼくたちは座布団の上に正座……は兄様たちが馴れていないから、ちょこんと膝を抱えて座っています。


長さんも最初は和やかにご挨拶してくれたけど、白銀と紫紺が神獣聖獣とわかったら、慌てだした。

自分は一段高いところに座っていたのに、おこがましいとか身分が合わないとか騒ぎだし、今はぼくたちと同じ場所でちんまり正座しています。


「ふわはははっ。この俺様にひれ伏すとはいい心がけだ」


子供姿で腕を組み仁王立ちで居丈高な態度の真紅を見て長さんはぎゅむと眉を顰めた。


「……真紅……じゃない、フェニックスよ。控えておけ」


「そうよ。偉そうにしないで」


白銀と紫紺の体に押されて、真紅はすってんころりと座布団の上に寝転がる。

ぷんすかぷんすかと真紅は怒るが、長さんは口をあんぐりと開けていた。

白銀が「フェニックス」って呼ばなければ、真紅が神獣ってわからなかったんだね。


「ま……、まさかそのお子さまが……神獣フェニックスさま?」


ブルブルと震えたあと、ドルフさんと一緒に頭を深々と下げていたよ。

そして、改めてご挨拶したあと、ドラゴンの国へ行く話になると長さんは眉を下げて困り顔になった。


「長? ドラゴンの国へは自分が案内しますよ? どうしたのですか?」


「う、うーん。しかし、今はなぁ……」


「長? きっとドラゴンの国の者たちもお喜びになられますよ?」


「うむ。しかし、うーん」


……と、こんなやりとりがずっと続いている。

ドラゴニュートはエルフ族同様長命な種族でゆっくりと歳を取っていく。

長さんも若い男の人の外見だが、年齢はロバートお祖父様よりもうーんと年上で三百歳越えでした。


「……レン。ドラゴンの国へ連れて行ってくださいってお願いしてみてくれないかな?」


兄様がぼくにひそっとささやく。


「ぼく?」


自分に人差し指を向けて確認すると、兄様とアリスターがこくんと頷いた。

むむむ、重要任務を仰せつかってしまった。

たぶん、ぼくが親指に嵌めている指輪のせいだろうけど。


「あ、あのぅ」


ぴょこんと右手を挙げて恐る恐る声を出すと、長さんが片目だけ開けてぼくを見た。


「なんでしょう、お客人」


「えっと、ええっと……。ド、ドラゴンのくにへ……い、いきたなぁ……」


長さんのクワッとした目に段々と声が小さくなり、俯いてしまった。


「そ、それは、そのですね。ああ……あんなことさえなければ、喜んでご案内しますのに」


「あんなこと?」














ぼくが親指に嵌めている遺跡で手に入れた指輪には、意味があるらしいです。

どうも、この指輪は彼らが崇め奉っている神獣エンシェントドラゴンに認められた印と思っているようで、少しでもエンシェントドラゴンの何かに触れたいと願っているドラゴンやドラゴニュートたちには垂涎の指輪(もの)となっている。

そのエンシェントドラゴンの微かな思いを感じ取ろうと、指輪の持ち主は彼らに重宝されるのだが、今回は少々事情があって対応に悩んでいるみたい。


「エンシェントドラゴン様に認められる方など早々居られるわけがなく、お客人も久しぶりなのです。本当ならば我自身でドラゴンの国へと案内したいとこですが、今は……」


くっと悔しそうに顔を歪める長さんに、案内役は自分では? と戸惑うドルフさん、ぼくたちはその事情を知りたくてうずうず。


「があああっ、面倒な。そのドラゴンの国に起きている事情とやらを話せ!」


「そうね。案内なんて別にいらないのよ? アタシとこいつがいるから」


「俺様も。俺様も、忘れるなっ」


ぴょんぴょんと飛びはねて紫紺にアピールする真紅だけど、紫紺はつーっと視線を逸らす。


「ふぅっ、仕方ありませぬ。ドルフ、ここで聞く話は他言無用ぞ」


「はっ」


「実は……ドラゴンの国では、探しものをしているのです」


探しもの? それが事情なの?


「僕たちをドラゴンの国へ案内するのを渋る理由と風の妖精たちの姿が見えなくなった理由は同じですか?」


兄様がキリリとかっこいい顔で尋ねたのに、ドルフさんも長さんもツーンとして答えてくれない。


「ううっ」


なんだか悲しくて悔しくて、ぼくの両目が熱くなってきた。

途端に視界がぼやけて、喉の奥がヒックヒックとして、唇を噛んだ。


「おいおい、ヒューはレンの、お前らの客人の兄だぞ? ぞんざいに扱うと客人に嫌われるぞっ」


白銀ががバッと勢いよく立ち上がり、長さんに向かってガウガウッと吠えるように捲し立てる。


「なんとっ! それはご無礼を。ただの人族と思って侮っておりました。お客人許されよ。理由は同じじゃが、風の妖精たちは追っているのだ」


「追う?」


「そう。ドラゴンの国から大事なものを盗んだ奴らを探し追っているのだ」


探しものって盗まれたものだったの? 風の妖精たちが総出で追っているとは、ものすごく逃げるのが上手な盗賊さんなのかな?


「レン? 何を考えているかわかるけど、盗人をすごいとか感心しちゃダメよ」


ぷにっと紫紺の前足が頬に押し付けられた。


「差し支えなければ、ドラゴンの国から盗まれたものを教えていただけますか?」


兄様が長さんに尋ねると、今度はすんなりと教えてもらうことができる。


「それが……卵なのだ。百年ぶりに生まれたドラゴンの卵が盗まれたのだ」


た……卵? それって、人で考えると……。


「あ、あかちゃんが、さらわれた」


そうだよね? 卵ってドラゴンの赤ちゃんだよね?

わあああっ、たいへんだーっ!


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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