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ドラゴンの国へ 2

ぼくを射った弓を真紅に蹴られた男の人は、ギロッとこちらを鋭く睨みつけた。

もう少しで頭に弓矢が刺さるところだったぼくは、そんな男の人の睨みにガクブルです。


アリスターは剣の柄を握る手に力を入れ、ぼくと兄様を守るように立っている。

兄様はぼくを背中に庇い、剣をスラッと鞘から抜き男の人へ切っ先を向けた。

白銀と紫紺は牙を剥き出し威嚇して、ややお尻を高く上げて臨戦態勢だ。


そんな緊迫した状況で、初撃を華麗にキメた真紅がこちらに戻らずに、問答無用で攻撃してきた危ない男の人の顔をジロジロと見ていた。


「んん? お前もしかして、竜族か?」


グイッと男の人の顔を両手で掴んで、真紅は男の人の目を至近距離で覗き込む。


「な、なにをするっ。離せ、このガキ」


ブンブンと頭を振って、真紅の体を怪我をしていない腕で払い除けようとすると、真紅はゴツンと男の人へ頭突きを放った。


「フンッ」


「いてぇーっ!」


うわぁ、すごい音がしたけど、真紅って石頭なの?


「おい、白銀、紫紺。こいつ、竜族だぞ」


真紅はこちらに顔を向けて、頭を押さえて痛みに蹲っている男の人を指差した。


「竜族ってドラゴニュートのことかしら?」


「ああ? あいつら絶滅したんじゃねぇのか?」


白銀と紫紺はきょとんとした顔で真紅の言葉をやや疑っているようだ。


「にいたま、りゅーぞく、なあに?」


「う、うん。その……種族の一つでね、ドラゴンと人族との混血児、ドラゴニュートと呼ばれる種族だよ。力も魔力も人族より強くて長寿、知能も高く器用で、稀にドラゴンの羽を持っていて空が飛べる者もいるとか」


へー、空が飛べるなんてすごいね!

ドラゴンの羽が背中にあるってどんな感じなんだろう?


「いや、ヒュー。それよりもドラゴニュートは例の神獣と聖獣の争いで絶滅した種族の一つだろう? まさか生き残りか?」


アリスターが困惑顔で、ドラゴニュート情報を追加してきた。

さっき白銀も「絶滅した」って言ってたし、本当にあの人が竜族、ドラゴニュートなんだろうか?

そして、なんでドラゴニュートさんがぼくたちに弓矢で攻撃してきたんだろう?

じっとぼくたちが注目していると、ようやく頭突きの衝撃から回復したのか、頭を摩りながらヨロヨロと立ち上がった。


「あっ!」


「うわっ、本当にドラゴニュートだ」


「ほんと。生き残っていたのね」


「んゆ?」


どうして、アリスターと白銀たちは彼がドラゴニュートだとわかったの?


「レン。ここからだと僕たちには見えにくいけど、たぶん彼の目の瞳孔の形だと思うよ」


兄様がこそっとぼくの耳に囁いたけど、あの人とぼくたちの瞳孔の形が違うってどういうこと?

アリスターは獣人で五感がぼくたちよりも優れていて、白銀たちも神獣聖獣のスペックの高さで離れていてもよく視えるから、ちょっと離れていてもあの人の目の瞳孔の形が確認できたみたい。


「どうこう?」


ムムム、どんな形なの? ぼくも見たい。


「あのね、彼は爬虫類、つまり瞳孔が縦に長い形なんだよ」


兄様に教えてもらったぼくは、咄嗟にディディの目を覗きこんでしまった。


「ギャ?」


うん、火の中級精霊だけどトカゲ姿のディディの目を確認すると、確かに瞳孔が縦に長い形でした!


「トカゲと一緒にするなーっ!」


「んゆ?」


ぼくたちの話が聞こえていたのかな?

もしかして、地獄耳ですか?















「にいたま、どうしよう」


「そうだね。面倒なタイプだったみたいだね」


ぼくと兄様はちょっとウンザリとして、目の前の深々と土下座する男の人、ドラゴニュートのドルフさんを見下ろした。

危険人物なので紫紺の蔓の魔法でぐるっと縛って尋問しようとしたんだけど、彼がぼくの親指に嵌っている指輪を見た途端、顔を真っ青にしてあわあわと慌てだした。


「すみません」「お許しください」「客人とは思わずつい攻撃をしてしまいました」と繰り返し謝罪をする彼に、紫紺も蔓の魔法を解除して事情を聞こうとしたら、自由になった体でガバッと土下座したまま顔を上げずに謝罪を続けるというカオスな状態になってしまったの。


「そんな指輪にこんな効果があったとは」


白銀がぼくの親指に嵌った指輪に顔を近づけて見るけど、何か特別な力が宿っている指輪ではないと思うよ。

ついでに一緒に入っていた笛も彼、ドルフさんに見せたけど、笛に対しては無反応だった。


「さあ、いい加減に顔を上げて、事情を説明してくれ」


アリスターがやや乱暴にドルフさんの肩を掴んで上体を起こすと、そのまま兄様の前へズズイッと押し出した。


「ドルフはドラゴニュートなのかな?」


兄様が柔らかい声で尋ねると、ドルフさんはツーンと顔を横に向けた。


「んゆ?」


さっきまでしつこいぐらい謝罪していたのに、また態度が反抗的になりましたけど、なんで?


「お前らに話すことはない」


「いやいや。お前、土下座して謝っていたじゃねぇか」


アリスターが胸倉を掴んで激しく揺さぶるけど、ドルフさんは目を瞑って完全無視している。

ドルフさんは、黒い髪の毛をツンツンに立てて、金色の瞳、鼻が高くて唇は薄い、シュッとした整ったお顔をしていると言えばいいのか、少し冷たい印象の顔立ちです。

背が高くてそんなにムキムキな感じはしないけど、ヒョロヒョロでもなく、肩幅が広くて手足が長いモデル体型で羨ましいな。


そして、そんなカッコイイ人が不愛想でこちらを警戒していると、こちらとしても親しみが持てないわけで、特に兄様と白銀の機嫌が悪くなるのです。


「アリスター、どけ。俺がガブッとやってやる」


「ダメだよ、白銀。こういうタイプは痛みに強いから。どうしようか……フフフ」


うわーっ、兄様の笑顔が怖い! 目が全然笑ってなくて怖い! アリスターが震えるぐらい怖いよ!


更新が長いこと滞ってしまい、申し訳ございません。

まだしばらく更新が難しい日が続きます。

少々、予定が重なってしまいましたので、6月までは更新が難しい状況です。

皆様に嬉しいご報告ができるよう頑張りますので、しばらくの間ご容赦ください。

いつもご愛読くださりありがとうございます。

あと、誤字脱字のご報告も助かっています。

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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