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ドラゴンの国へ 1

とにかくここから一旦外へ出ようとなったぼくらは、上に登る選択はしなかった。

どうやら兄様たちがここまで来たルートはかなり厳しい道のりだったみたいで、アリスターは同じルートで戻ることに難色を示し、兄様はぼくのことを心配して反対した。

たぶん、白銀たちがいたらどんな道でもスイスイと進めると思うんだけどな。


「あと、もしプリシラの父親を追っていた一味が残っていたら面倒なことになる。僕たちがプリシラの居場所を知っているとバレるのはまずい」


兄様の言葉にぼくも深く頷く。

プリシラお姉さんには、瑠璃が護衛として水の中級精霊エメを派遣してくれて、今も一緒にブルーベル辺境伯騎士団の寮に居る。

悪い奴らが来てもエメや騎士団のみんなが助けてくれるし、万が一瘴気で攻撃してきてもエメなら浄化ができるから問題なし!

でも、他の人を人質にされると困っちゃうよね。

例えばキャロルちゃんやセシリア先生とか。

二人の強力な護衛でもあるアリスターとセバスは、ぼくたちと一緒にファーノン辺境伯領に来てしまったし。

マイじいたちが守ってくれると思うけど、相手は瘴気を操る正体不明の道化師の男だし……。


「こっちからあっちへ空気が流れている。もしかしたら出口か他の場所へ移動できる階段か何かあるかもしれない」


アリスターが「あっち」と指差す方へ、ぼくたちはゆっくりと歩いて移動することにした。

とりあえず、プリシラお姉さんのお父さんの冒険者カードは紫紺の収納魔法でしまっておいてください。


「いいわよ。帰ったらあの子に渡してあげましょう」


うん、そうだね。

でも、海底宮殿にいるベリーズ侯爵さまたちやプリシラお姉さんにお話しするの、難しいな。

とっても心配しているのに、今回わかったことは随分と不穏なことばかりで……もっと心配しちゃうかも。


「にいたま」


ギュッと兄様の上着の裾を握ると、その手を兄様の手がポンポンと優しく叩く。


「大丈夫。きっと生きているよ。見つかったのは冒険者カードだけなんだから」


……うん。

ぼくはそのまま兄様の温かい手を握って俯きがちに歩きにくいデコボコ道を歩いた。












「おおーっ、抜けたぞ!」


ぼくたちを先導するように歩いていたアリスターが一際大きな声で叫ぶ。

ぼくも外の空気に触れて、ホッとした。

下へ落とされて不思議空間から脱出したあと、ここまでかなり長い時間歩いた気がする。

遺跡の中を探検していたはずなのに、通ってきた道を改めて見ると、洞窟以外の何ものでもないね。

そして、目の前には山、山、山々です。


「あれ? スノーネビス山の側面に出たかな?」


兄様が上着のポケットから地図を出してゴソゴソと広げて見比べてみる。

遺跡村があるやや低い山の奥にスノーネビス山があり、そのまた奥にある山の辺りがドラゴンの国がありそうな場所だと紫紺は予想していた。

そして、遺跡を抜けたぼくたちは、スノーネビス山の側面に面した場所にいる。


「じゃあ、ここからあの山までがドラゴンの国……あるのか? 本当にそんな国が?」


アリスターはガシガシと赤い髪を掻いて、不服そうな顔をする。

ここまでの間、遺跡村の人たちにも話を聞いたけど、誰もドラゴンの話をしなかったもんね。

目撃情報もないし、ほとんどの人は神獣エンシェントドラゴンにまつわる伝説やお伽話と思っているみたいだった。


白銀と紫紺は厳しい目をスノーネビス山の頂上、雲に隠れて見えないけどその場所を見つめている。


「しろがね? しこん?」


なんで、神獣聖獣仲間がいるはずのところをそんな怖い顔で見つめているの?


「放っておけ。俺様だってあいつがいると思ったら背中がムズムズする」


真紅が肩を竦める。

うーん、なんでみんな仲良くできないのかな?

神獣エンシェントドラゴンって独りぼっちで山の上でその地を護っているんでしょ?

きっと、白銀たちに会えたら大喜びすると思うんだけどなぁ。


「このまま登山するのは勘弁してもらいたいな。紫紺、一度遺跡村へ転移で戻ろうか」


兄様の言葉にみんなが兄様へ意識を向けたとき、ぼくの目の前にシュンと何かが通り過ぎた。


「んゆ?」


な、なんか前髪がハラハラと切れて下に落ちていきましたけど?


「レン!」


ガバッと兄様に抱きすくめられて、剣を抜いたアリスターがぼくたちの前に立ちふさがり四方へ視線を飛ばす。


「レン、大丈夫か?」


白銀と紫紺がすぐに両脇を固めてくれるけど、一体なに? 何があったの?


「そこだーっ!」


真紅が叫びながらタタタッと駆け出して、ピョンと飛び上がると勢いよくドロップキックを繰り出した。


「っつ!」


小さな子どもの姿の真紅の攻撃では致命傷を与えることはできないが、真紅の足はたまたま不審者の利き腕に当たったらしい。

ポテッと握っていた弓を落として、蹴られた腕を庇い蹲る人がいた。

弓……も、もしかして、ぼくのこと弓矢で射ろうとしたの?

ハッ! だから前髪が切られたの? もう少しで大惨事じゃないかーっ!


「ひいっ。に、にいたま。こ、こあいよぅ」


今さらながらガクブルして兄様にギュッと抱き着いた。

ぼくに痛いことしようとしたこの人は、誰なの?


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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