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ドラゴンの国を探そう 2

神妙な顔をして並んだぼくと兄様を前にして、父様はコホンと咳払いしてから顔を厳しく引き締めて話し始めた。


「いいか。俺は仕方なく許可を出した。本当はヒューもレンも危ないことはしないで大人しくここにいてほしい」


チラリとぼくたちの顔を確認する父様に向かって、真面目な顔を崩すことなく頷いてみせる。


「だが、ファーノン辺境伯領地の窮地も放っておくことはできない。原因がドラゴンはともかく、精霊たちによるものでは太刀打ちできないだろうと納得もする。しょうがなく、本当にしょうがなく二人がドラゴンの国を探すことは認める」


父様はキュッと口を結んだあと、グイッとぼくたちに顔を寄せて一言、一言区切るように言葉を発する。


「絶対に無茶をするな! ドラゴンの国を見つけたら戻ってきなさい。いいな」


「はい、わかりました」


「あい!」


ぼくは父様の言葉にはいっと右手をあげて返事をしたけど、兄様はなんだかニッコリと《《いい》》笑顔でお返事していた。


「ヒュー。わかっているな? 無茶なことはするなよ」


「ええ、もちろんです。アリスターの監視の目もありますし、かわいいレンも一緒ですから、無茶なことはしません」


ニコニコ顔の兄様をどこか胡散臭げに見やる父様の攻防は、セバスの「準備ができました」の呼びかけで止められた。

セバスが小さな鞄をぼくと兄様、やや大きい鞄をアリスターへと手渡す。


「この中には万が一を考えて、野営の道具や非常食、防御の魔道具などが入ってます。あとは細々とした生活用品で……」


主に従者であるアリスターへ鞄に入っている物の説明をするセバスを横目に父様は、まだ疑いの眼を兄様に向けていた。


「ギル。俺たちも一緒なんだから、そんなに心配するな」


「そうだぞ。俺様が一緒だったらどんな魔獣もドラゴンもワンパンで片付けてやる」


白銀が獣姿でキチンとお座りして胸を張ると、人化したお子様姿の真紅が腕を組んで鼻息を荒くする。


「……本当に、大丈夫だろうか……」


父様の心痛は増々ひどくなってしまったらしい。


「やあねぇ。アタシもいるわよ、ギル。最悪、ヤバそうなら転移魔法で戻ってくるわ」


スルッとしなやかな尻尾を父様の右足に絡ませた紫紺に、父様は半泣きで抱き着き縋った。


「頼むぞーっ、紫紺。ヒューやレンも、白銀も真紅もやらかしそうで俺は心配だっ」


「んゆ?」


なんで、ぼくまで? 父様ったら心外です!

プクッと頬を膨らませていると、セバスがぼくの手に小さな革袋を持たせてくれる。


「セバス?」


「お小遣いですよ、レン様。もしヒュー様と逸れてしまったときのことも考えて、お渡ししておきます」


お小遣いってお金?

キラキラと眼を輝かして、この世界で初めてのお小遣いにテンションが上がるぼくに、兄様は後ろからギュッと抱きしめてセバスに不満そうに文句を言う。


「僕がレンと逸れるわけないでしょう。絶対に一緒にいます! レン、だからそのお小遣いは途中にある遺跡村でお土産を買うのに遣おうね」


「あい!」


お土産を買うとは、つまりお買い物をするということですね!


「わーい、たのちみ」


「いやいや。俺たちドラゴンの巣を探しに行くんだよな? 結構ハードなことだろう? 緊張感はどうした、そこの兄弟」


アリスターがぼくたちに呆れて呟いたら、セバスがポンッとアリスターの肩を叩いた。


「諦めなさい。貴方がお目付け役なのですから、頼みましたよ」


セバスからのプレッシャーにアリスターの尻尾がピンッと立ちました。

















紫紺が翡翠を連れて探索に行き、待っているぼくたちがびっくりするほどの速さで戻ってきた。

ちなみに翡翠は、フェアリーホワイト山脈を巡っている間はぬいぐるみから解放され久々のユニコーン姿で闊歩してきたらしい。

戻ってきたらすぐにぬいぐるみに戻され、無表情なセバスに首をキュッと掴まれてどこかへと連れ去られていった。


「ドラゴンの国がどこかまでは見つけることができなかったわ。あいつら風の精霊王の力を借りて結界を作っているみたい。しかもあいつのテリトリーだから神気がうまく広げられないの」


スノーネビス山にいる神獣エンシェントドラゴンの神気が強すぎて紫紺の神気が飲み込まれ霧散してしまうから、探査や検知などの魔法は精度が落ちるんだって。


「怪しいのは、こことここ。スノーネビス山の手前の低い山と裏手の険しい山。どちらかにドラゴンたちはいると思うわ」


トンと紫紺のかわいい前足が指し示した場所は、スノーネビス山の手前のやや低いなだらかな山と裏側の山頂が剣先のように尖った険しい山だった。


「ああ、ここに村があるみたいだね」


兄様がファーノン辺境伯家の執事から借りた本と地図を見比べている。

どうやら、ファーノン辺境伯家とその領地の歴史や特産品、出没する魔物や棲息図などが書いてある、代々の領地経営の教科書とされている本らしい。


「むら?」


山の途中にある村? 前の世界なら登山する人用の山小屋があったり、観光地となっていてお店があったりしたけど、そういうことなのかな?


「この山には前時代の遺跡があって、その遺跡を調べにくる学者やトレジャーハンターたち用の村だって。まだ、昔の魔道具なんかが出土されるらしいよ」


兄様の持っている本を横から覗くと、イラストのない文字ばっかりのページで、ぼくの眉がへにゃりと下がった。


「前時代……」


「それって……」


「俺様たちが……」


なにやら白銀たちがズズーンと落ち込んでいるようだけど、どうしたの?


「ヒュー。白銀様たちの前でそんな話するなよ。前時代って白銀様たちが暴れる前ってことだろう?」


あ、そうか!

白銀たちが他の神獣聖獣たちと大喧嘩した時より前の時代ってことだね。


「大喧嘩……」


「そんな簡単に……」


「俺様、もう少しで消えるところだったのに……」


「んゆ?」


あれれ? 今度はぼくの言葉でみんながしょんぼりしちゃった。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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