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出発 3

誤字脱字報告ありがとうございます!

いつも、ありがとうございます。

馬車はゆっくりとファーノン辺境伯領へと伸びる街道を進んでいきます。

そして、馬車の中はちょっとした緊張感に満ちていました。


「コホン。レン、もう一度瑠璃に聞いた話をしてごらん」


んゆ? その話なら父様にさっきしたよ? その前には内緒話として兄様にしたんだけど……兄様、内緒って言ったのに。


「そうよ、もう一度話して、アタシたちにも聞かせてよ」


「聞きたくないけど聞こうじゃねぇか」


白銀と紫紺が、やや眼が据わった状態でぼくの左右から鼻をツンツンとくっつけてくる。


「ぶーっ。だから、るりがね、いちばんたかいおやまに、どらごんいるって」


父様は天を仰いで息を大きく吐き、母様は頬に手をあてて「あらあらまあまあ」と楽しそう。

兄様はちょっと笑顔が引き攣っているかな?

そして、白銀と紫紺はがっくりと項垂れていた。


「そうか……あいつのねぐらはここだったか……」


「うっかりしていたわ。あいつ、地上だと存在感ないから……」


反対にギャーギャーうるさくなったのは真紅と翡翠です。


「ピーイッピイピイ、ピピーイ」

<おっし! あのぼんやり野郎めっ。久しぶりに力合わせしてやるぜ>


「えーっ、あの金ピカがいると僕の美しさが目立たないんだよねぇ。蹴っ飛ばしてやろうか?」


二人ともとっても好戦的な発言だけど、仲がいいの? 悪いの?

あっ、そういえば瑠璃が神獣エンシェントドラゴンがいることは内緒って言ってた……あうっ、ぼくも秘密にする約束破っちゃった。

兄様に文句が言えなくなってしまった。

しょぼぼん。


「いいか、レン! 高い山に登るのは危険なんだっ! 絶対に行ってはいけません。神獣エンシェントドラゴン様に会いたいかもしれないが、今回は母様のご用事で来たんだ。大人しくしていないと、ブループールの街へ帰っちゃうぞ」


「びゃっ!」


父様が珍しく目を吊り上げてぼくに厳しく言い含めるから、驚いて飛びあがってしまった。


「そうだね。今回は母様のお友達を慰めに行くのだから、大人しくしていようか? 帰るのが遅くなったらお祖父様とお祖母様が心配するよ」


隣りに座る兄様もぼくの頭を撫でながら、なんとなく神獣エンシェントドラゴンに会いに行かないように言い含めてないかな?


「俺もギルたちに賛成。俺はあいつに会いたくない」


「アタシも賛成。あいつと白銀が揉めたらアタシじゃ止められないもの」


プルプルと頭を振って嫌そうな紫紺の顔を白銀がじとーっとした目付きで見ている。


「ピイッ」

<ええーっ!>


「おや、会いに行かないのかい?」


翡翠がフヨフヨと白銀たちの前に浮かんで、ちっとも残念そうに感じない声音で聞いた。


「会ったところで、あのぼんやりと何を話すってんだ」


「真紅も諦めなさい。たたでさえ神気がないのに、あいつとやりあったら再起不能よ? あの子手加減下手だから」


「ピッ」

<そうだった。俺様、いま無力だった>


うん、神獣聖獣組みも懐かしい仲間に会うのを諦めたみたいだね。

ぼくは、今度こっそりと瑠璃に連れてきてもらって神獣エンシェントドラゴンとご挨拶しようーっと。


















森の中をアドルフさんたちブルーベル辺境伯騎士たちに守られた馬車は軽快に進み、予定より早くファーノン辺境伯領地に辿り着いた。

でも着いたのが夜だったから、今夜は門の周りの休息所で夜営をして、明日の朝に町へ入ることにしました。


母様がお友達からもらった手紙には入街許可証がファーノン辺境伯様のサイン付で入っていたので、夜でも門は開けてもらえるんだけどね、余計な騒ぎは起こさないほうがいいんだって。

夜営……キャンプみたいでちょっとワクワクする!

母様やリリとメグはかわいそうかな?


「そんなことないわよ。アースホープ領にいた頃は、お花摘みや果実の収穫、田畑作りと領地を駆けまわって野営もしていたもの」


母様は貴族子女としてはパワフルでワイルドな少女時代だったみたいです。


「母様とレイラ様の仲がいい理由がわかった気がする」


兄様も初めて聞く話だったのか、ちょっと唖然として呟いていたよ。

テントや天幕は父様やアドルフさんたちがパッパッと設営してしまったし、料理もリリとメグが手早く作ってくれた。

意外とバーニーさんが食材の下拵えとか、薄焼きパン作りとか器用にしていて、リリとメグからの評価が爆上がりでした。

クライブさんが一応辺りを警戒して見回りに行って、レイフさんが魔道具で結界を張っていたのを見て、紫紺はコテンと首を傾げて不服そう。


「アタシたちがいれば危険なんてないのに」


「紫紺。彼らはああいう仕事なんだ。白銀や紫紺がいることを当たり前にしたら、いざとなったとき鈍っているからな」


父様が、部下のアドルフさんたちの働きを満足そうに見ているんだけど、子ども扱いで何もさせてもらえなかった兄様とその見張り役のアリスターは不満顔ですが?


ぼく? ぼくは大人しくしているの。

手伝ってさらに手間を増やしてはいけません!


まあ、もう既にやらかしたあとなんだけどね……お皿を割ってごめんなさい。

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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