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手紙 1

新章にて更新を再開いたします。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

でも、ちょっと仕事が忙しいためしばらくはゆっくり更新となります。

その日、一通の手紙がブルーベル辺境伯領都、ブループールの街の冒険者ギルドに届けられた。

そして、その手紙は差出人の身分と宛先からギルドマスターの手に渡り、ギルドマスターの顔に深いシワを刻むこととなった。

ただ、運の良いことに宛先の人物に縁のある者が冒険者として活動しており、しかもさっきからギルドマスターの執務室にて呑気に茶を飲んでいる。

当然、茶代としてその手紙の配達を押し付けられた冒険者は、不思議な顔を隠しもせずブルーベル辺境伯自慢の騎士団へと向かって行った。


「アンジェ義姉さんの知り合いなのかな?」


アルバートは白い封筒に赤い封蝋の手紙に書かれた差出人に首を捻る。


「こんな遠い国の辺境伯とどうやって知り合ったんだ?」


「ええーっ! 差出人は男かよ? だ、大丈夫か? ギルバート様キレないか?」


リンは過去、アンジェリカに言い寄ろうとした愚かな貴族子息が、ギルバートの怒りに触れて醜態を晒したのを何度も見ていた。


「いんや。差出人は辺境伯夫人だよ」


ピラリとリンにも見えるように封筒を掲げると、アルバートはふんっと鼻を鳴らした。


「また、面倒事じゃなければいいんだがなぁ」


隣国の騒動に巻き込まれたかわいい甥っ子たちは、先ほどまた厄介な聖獣を抱え込むことになってしまった。

ただでさえ気苦労の多い長兄ギルバートは、最近、俺やセバス相手に立ち合いを挑むことが増えた。

やめてくれーっ、セバスはともかく俺に対して殺気を込めて剣を奮わないでくれーっ。

ギル兄のストレス発散が剣なのは知っているけど、最近では鬼気迫りすぎて怖いわっ。


俺は手に持つ白い封筒を果たして義姉さんに渡していいものなのか、暫し迷うのだった。














ドキドキする。

ぼくがアリスターのために紐を編んで作ったお守り。

そのまま渡すのはちょっと寂しいから、母様に頼んでキレイな布で包んでリボンを結んでもらった。


「どうしたんだ?」


呼びだしたアリスターは、もじもじするぼくに不思議顔です。


「えっとね、うんとね」


何度もやり直したから編んだ紐はヨレヨレになっちゃったかもしれない。

もしかしたら、剣を使うのに邪魔になるかもしれない。

もしかしたら……喜んでもらえないかもしれない。

だんだんと悪い考えになるのを、ブルンと頭を振って追い出して、目をギュッと瞑って勢いでプレゼントを差し出す。


「こりぇ、あげゆの!」


「へ? こ、これか?」


ぼくの勢いにちょっと腰が引けていたアリスターは、差し出された赤い袋を受け取りリボンをシュルルルと解いた。


「ん? なんだこれ」


袋の中には、ぼくがウィル様に教えてもらった組み紐にキラキラと飾り玉が付いているブレスレットが入っている。


「これは、レンがお前の騎士団入団を祝って作ったお守りだ」


「これを願い事をしながら腕に巻くと叶うらしいわよ」


白銀と紫紺がぼくの代わりにアリスターに説明してくれた。


「これを、俺に?」


アリスターの目が見開いてキレイな紫色の瞳も真ん丸だ。

ぼくが何度も頷くと、照れたように笑い「ありがとな」とぼくと目線を合わしてお礼を言ってくれた。

アリスターは袖を少し捲って、早速ブレスレットを身に着けてくれる気らしい。


「ほら、結んでやるよ」


横からにゅっと誰かの手が伸びてきて、アリスターの手からぼくが編んだ飾り紐を取り上げると、器用にクルクルとアリスターの手首に巻き付けた。


「ヒュー。驚かすなよ」


「レンと二人でコソコソしているからだ」


フンッと兄様は鼻で笑うけど、コソコソなんてしてないもん!


「いや、だって。俺……レンからプレゼント貰って、そのう……」


んん? なんだかアリスターが挙動不審だけど、どうしたの?

兄様もそんなアリスターをチラリと冷たく一瞥すると、やや芝居がかった口調で拗ねてみせる。


「いいなぁ。いいなぁーっ。レンから騎士団入団のお祝いなんて、羨ましいなぁーっ」


ちっとも羨ましいと思っていない棒読み状態のセリフだが、アリスターはオロオロと目に見えて狼狽えだした。


「いや、えっ。ちょっ、待って。ええ? おい、レンこれ、これって……」


なぁに? なにが聞きたいの。

ぼくはコテンと首を傾げてじぃーっとアリスターの顔を見つめた。


「んぐっ!」


どうして、アリスターは恐ろしいモノを見たような顔でぼくと兄様を交互に見るのさ?


「……ブッ。あーはははっ。大丈夫だよ、アリスター。僕もレンからプレゼントを貰っている」


ほら、と袖を少し捲って自分の手首を見せるとアリスター「はああああっ」と全身の空気を全部吐いてその場に座り込んでしまった。


「お、驚かすなよ」


「ハハハハ。悪い悪い。ちょっと意地悪してしまった」


兄様もアリスターの隣りにしゃがんで、ポンポンとアリスターの肩を軽く叩いた。


「んゆ?」


もう、なんなんだろう?

二人の姿をパチクリとしながら見ていると、兄様の手首に巻かれた紐に付いた黒い飾り玉がキラリと光ったように見えた。


「ちびっこ転生日記帳~お友達いっぱいつくりましゅ~」

マッグガーデン様より発売中です。

どうかよろしくお願いいたします!

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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