神様の日記帳~いないのは誰だ? 編~
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出会ってからちっとも背が伸びていない……と、水鏡に映った金髪碧眼の美丈夫が下がり眉で思ったことが伝わってくる。
「ぶーっ。ちゃんと背は伸びてまーす。ほんのちょびっとだけど、一緒にいるヒューたちも背が伸びているから気がつかないだけですぅ」
ぷくっと両頬をリスのように膨らませて、水鏡に映る下界を見ていた創造神、シエルは口を尖らせ文句を言う。
今日は神使の狐たちも小言を控え、サッとお茶とお菓子を出してくるサービスの良さ。
「はあああっ。無事にユニコーンとも合流できてよかった。あの子はあちこちに行っては女性問題を起こして、魔物と間違われて討伐にきた冒険者に怪我をさせて、どこも持て余してたいへんだったんだよねぇ」
瑠璃たちが邪険に扱い神界に預けようとなったときには、肝が冷えたものだ。
そんなことになったら神使の狐たちの機嫌が急降下、神界なのに地獄のごとくピリピリした世界になってしまうところだった。
でもレン君はさすがだよねぇ。
「あの子とも友達になってくれたし、翡翠なんて名前まで付けてくれたんだから」
ちょっと、あの、人族と従魔契約を結んでしまったのには驚いたけど、別に何か悪い影響があるわけじゃないし、僕は見なかったことにするよ!
べ、べべべ、別に、あの片眼鏡の人族がこ、こここ、怖いからじゃないよ? 本当だよ?
「今日は幸せな気分だなぁ。このままお布団にダイブして寝ちゃおうかなぁ」
ルンルン気分で振り向くと、そこには白銀たち愛すべき僕の神獣聖獣たちが勢ぞろいしていた。
「へ? どうしたの?」
わけがわからなさ過ぎて、コテンと首を傾げた僕に、白銀がグルルと唸り口から牙を剥き出しにして挨拶をしてきた。
「よおっ、こんのクソ駄神。ちょっと面かせや」
ひいいいいいいっ。
ぼ、僕、お金持ってませえぇぇぇぇぇんっ。
正座した僕を囲むように白銀、紫紺、真紅、瑠璃と桜花が座っている。
あ、ぬいぐるみ状態の翡翠も白銀の背中に括り付けられているね。
あー、涙目になっちゃって、ハハハハ、僕とお揃いだねぇ……と現実逃避している場合ではない。
上目遣いにチラッと瑠璃を盗み見ると、目が合ったのにスウーッと逸らされた!
瑠璃にまで見放された? そんな、僕、神様なのに?
な、なんで、みんな怒っているんだろう……ビクビク。
「ねぇ、シエル様」
「ひゃ、ひゃい!」
ビクビクンと体が反応して、ピンッと背筋が伸びて返事する声が裏返ったよ。
「ここにいる神獣聖獣が六体。そしてエンシェントドラゴン。残りは……わかるわよね?」
紫紺の圧のある笑顔に僕は首を引っ込めてコクンと頷く。
そう、僕が創世記に創り出した神獣聖獣たちは全部八体で、ここに六体が揃っている。
あとは峻厳な山の頂で僕が命じた場所の守護を続けているエンシェントドラゴン。
そして……あっ。
「気づいたか? 瑠璃とアホドラゴン以外の神獣聖獣たちはやらかした後眠りについた。そして再び下界に放たれた。そして、今なお下界には神気が混じった瘴気が残っている。これがどういうことだか説明してもらおうかっ」
ドンッと白銀が強く床を叩くから、僕の体がポンと少し浮き上がったよ、恐ろしい。
「精霊たちが浄化しているのに、まだ残っているのは、なんでだろーな?」
ひょこと真紅が僕の顔を覗き込んで言うけど、セリフの軽い調子とは裏腹にものすごい凄んだ顔をしている。
「えっと、えっとぉ」
ツンツンと人差し指同士を突き合わせて、どんな説明をすれば怒られなくて済むか必死に考える僕……僕、神様だよね?
「もしかして、まだ瘴気は生まれ続けているのかしら?」
おっとりした口調で核心をズボッと突かないで、桜花!
「ふうっ。もうここまでじゃ。あれからのことをこ奴らにも説明してやるがいい。そうでなくては、御身の無事は保障できん」
いやいや、何、怖いこと言ってんの、瑠璃? 僕、神様だよ? まさか、そんな、ねぇ?
ゴクリと唾を飲み込んで、僕の味方である狐や狸の神使たちを見ると、顔を背けられたり笑顔で手を振られたり……。
くっ、誰も助けてくれないっ。
ズイッと目の前に迫る白銀の顔は、真剣でやや悲しみの色を帯びていた。
「まさか、邪神に堕ちたのは……あいつなのか?」
「……まだ、堕ちていないよ……まだ……」
そう、常識派でマジメで優しかった彼は、ギリギリのところで踏みとどまっているハズだ。
そのために、僕が封印した。
誰もいない、寂しいあの地に。
灼熱の太陽が照らし、凍る夜露に震えるあの砂漠の地の深く深く底に沈めたのだから。
僕の愛する神獣……四番目に創った神獣クラウンラビットを。
いつもお読みくださりありがとうございます。
次の章まで少しお休みさせていただきます。
今年の更新は最後となります。
皆様、今年は色々とありがとうございました。
来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
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