出会い 1
パチパチと瞬きをして、よく周りを見てみる。
大きいワンちゃんと猫ちゃんはお行儀よくお座りして、ぼくを見てます。
んっと、周りは木ばかり。
たぶん、シエル様が言ってた「異世界もの」の定番で森の中なのかな?
ぼくは、立ち上がろうとしてグラグラ揺れる頭の重さに驚いた。
あれ?バランスが上手く取れないな…。
ぼく、小さすぎない?幼くなるって教えてもらったけど、5~6歳ぐらいって神使の狐ちゃんが言ってたのに、あちこち体の大きさを見てみるとぼく、3歳ぐらいなんだけど…。
それだけぼくを想ってくれる人が少なかったんだと残念な気持ちを抱えて、ゆっくりと立ち上がる。
よちよちと大きいワンちゃんたちの方へ歩み寄っていこうとして、頭が重くて前に倒れ……グルンとでんぐり返しで転がって、ビックリ眼のワンちゃんとこんにちは!
思わず「にししし」と照れ笑い。
「あらあら、大丈夫?」
黒い猫ちゃんが、そっとぼくの背中を鼻で押して立たせてくれて、ペロッと頬を舐め労わってくれる。
「あい!大丈夫れす。ありゃりゃ」
うー、上手にお喋りもできなくなってるよぅ。困ったな…。
あれ?ちょっと待って…あれあれ?今、猫ちゃん喋った!?
「猫ちゃん……しゃべれるの?」
「ええ、お話できるわよ。アタシはシエル様に話を聞いて、貴方が目覚めるのをここで待っていたのよ」
優し気に微笑みながら、そう教えてくれた。
すっごーい!すごいすごい!!お話できる猫ちゃんだなんて!
しかも、シエル様がわざわざ呼んでくれたんだ…、それって「お友達」候補なのかな?お友達…なりたいな。
グルンと勢いよくワンちゃんの方に顔を向ける。もしかして……ワンちゃんも喋れるの?
「あのぅ…ワンちゃんは?」
「ああ?オレは犬ッコロじゃねぇぞ!誰がお前みたいなガキの面倒みるもんか!あ、イテテテ」
ガウッガウッと大きなお口で怒鳴るように拒否されました。
猫ちゃんの猫パンチを連打でお尻に受けて、飛び上がって痛がってるけど……。
ワンちゃんは「お友達」候補じゃないの?
「犬と変わらないでしょ。ここまで来て往生際が悪いわよっ。まぁ、どうしても嫌なら帰りなさい。アタシひとりでこの子の面倒みるから!」
「誰が帰るって言ったぁ!べ、別にオレは、どうしてもって言うなら…その…」
「もじもじすんな!どうせシエル様に弱み握られて脅されて来たんでしょ。いいわよ、帰って。シエル様にはアタシから話しておくから、はいはい、さようなら」
猫ちゃんがワンちゃんの体をゲシゲシ、後ろ脚で蹴ってます。痛そうです。でも、それより…。
「ワンちゃん…帰るでしゅか……。しゃよなら…でしゅか」
しょぼーんと俯いてしまうぼく。やっぱり、ぼくなんか…誰も仲良くしてくれないのかな…。新しい所でもダメなのかな…。
ぐすぐすっ。
「わー、泣くな!泣くな!オレだって、頼まれて受けたことはちゃんとやる!お前の面倒ぐらい、見てやるぜ!」
「ほんと?」
「ああ」
なんか凄い必死な形相でウンウンと頷くワンちゃん。
隣の猫ちゃんはいい顔で笑ってます。
ふたりとも、表情がとても豊かですね。
「よかったでしゅ」
ぼくもひと安心。ニッコリと笑って見せると、ワンちゃんと猫ちゃんの周りにほわほわとした温かい光が飛び回り、すぐに消えてしまいます。
「?」
こてんと首を傾げるぼく。なんだろう、今のは?でも、胸がポカポカ、あったかい気持ち。うふふふ。
「さて、アタシたちはシエル様の…まあ、眷属みたいな者ね。聖獣レオノワールとあっちが神獣フェンリルよ。よろしくね」
猫ちゃん、じゃなくて聖獣レオノワールがぼくの頬に鼻をスリスリ。
反対の頬にはワンちゃん、じゃなくて神獣フェンリルがペロリとご挨拶。
「はい、よろちく」
ペコリと頭を下げます。おっとと、またバランス崩してよろめいちゃった。