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ユニコーンの処遇 4

ハーヴェイの森にある通称精霊の泉で出会ったユニコーンは、確かに変なテンションで迷惑行為のオンパレードだったけど、真っ白な体に緑色の一本角がとってもキレイだなって思ったの。

ぼくの胸にずうっと残るユニコーンの印象は、そのキレイで気高い一本角なんだ。


だから、もしぼくとお友達になって名前を付けてあげられるなら、こんな名前がいいなぁって想像してたんだよ?

気に入ってくれるかな? と少し不安な気持ちと気恥ずかしい気持ちでモジモジしながらユニコーンの前へと進み出る。


「な、なんだよ」


ユニコーンがズリズリとお尻で後ろに下がっていくけど、気にしない。

真っすぐユニコーンを見つめ、大きな声で彼の名前を呼んだ。


「きみは、ひすい!」


君の名前は、静謐で気品ある宝玉の翡翠の色からイメージしたんだ。


「ひ、ひすい?」


ぼくが考えたユニコーンの名前を聞いて、戸惑いつつその名前を口にしたユニコーンとぼくとの間に、細い細ーい糸がひゅるるると伸びてくる。

蜘蛛の糸のように細いそれはキラキラと光の粒子を纏いながら、ぼくの胸とユニコーンの胸とをクルリとリボン結びで繋ぎ、パアッと光るとすぐに消えてしまった。

白銀たちのときよりもリボンが細くて光も弱かったけど、ぼくと聖獣ユニコーンとの間には繋がりが無事にできたのかな?

どうやら、ぼくとユニコーンはお友達になれました……たぶん。


「いい名前ですね。これからこの駄馬を翡翠と呼ぶことにしましょう」


セバスがぼくに丁寧にお辞儀して褒めてくれた。


「うん!」


トテトテテと兄様のところに足早に戻り、ぎゅっと兄様の腕に抱き着くと、兄様が蕩けるような笑顔でぼくの頭を撫でてくれる。


「いい名前を付けてあげられたね。いいこ」


「えへへへ」


「いや、お前たち、そんなほのぼのとしているなよ。あっちは揉めてんぞ?」


ぼくと兄様の間にぬうっと顔を出したアリスターが半眼で見る先には、わちゃわちゃしている白銀たちがいた。


「これからよろしくな、翡翠」


「大人しくしててよ、翡翠」


「俺様のほうが先輩だからなっ、翡翠」


「ふむ。いい名前じゃな。翡翠よ」


「翡翠ちゃん、他の人に迷惑かけちゃダメよ?」


「……お、お前たちっ、僕を変な名前で呼ばないでよっ」


ユニコーンが「ウッキー」と両手を振り回して怒っていると、ポンッと気軽に肩を叩いた父様がいい笑顔でユニコーン、翡翠に話しかける。


「翡翠。ここにいるなら、ちゃんと人族のルールを守れよっ」


「な、なんだよ、お前。ちょっ、イタッ、イタタタ」


父様が満面な笑顔で翡翠の肩を掴んでいるけど、手に血管がビキビキ浮き出るほどの強さで掴んでいるようです。

父様の万力の握りを決死の力で振り払い、涙目で翡翠は叫ぶ。


「お前たちたかが人が、軽々しく人の名前を呼ぶなっ! 様を付けろ、せめて尊称を!」


「あ、翡翠が自分の名前を認めたね」


兄様の鋭い指摘に、一同シーンと静まり返ったあと、約一名を覗いて爆笑の渦だった。

翡翠が膝から崩れ落ちていたよ。

やっぱり、なーむー?














「さあ、そろそろ遊びの時間は終了ですよ。この駄馬、いや翡翠の処遇を決めなければいけません」


パンパンッとセバスが両手を二、三度叩いて場を鎮め、ぼくたちは大人しくソファーに座り直すことにした。


「セバス、処遇たってなぁ、こんな危ない奴を女性のいるところには放置はできんぞ?」


父様が困り顔なのを鼻で笑った翡翠に、白銀の鉄拳制裁が飛ぶ。


「痛いなぁ、もう」


「もういいわよ、ギル。こいつは騎士団の厩にでも繋いでちょうだい」


紫紺がため息を吐きつつ頭を左右に振って諦めモードに入ってしまった。


「紫紺……。こいつ牝馬に変なことしないよな?」


「し、失礼なっ」


またまた翡翠が「ムッキー」と怒るけど、なんだかそんなに怖くない。

それよりも、ぼくは重大なことに気づいてしまった!


「セバス?」


「はい、なんでしょう」


「ひすい、セバスのおともだち? それとも……じゅ、じゅーま?」


「従魔でこざいます」


それって、セバスの言うことをちゃんと聞くってことだよね?


「なら、セバス、ひすいにのれるの?」


他のお馬さんみたいに、パッカラパッカラとセバスは翡翠の背に乗ることができるのかな?


「えっ? 人族のくせにこの聖獣ユニコーンの背に乗るつもり? この神界一美しくて清らかな僕の背に?」


信じられないとオーバーにリアクションする翡翠に、真紅がボソッと「白銀たち乗せてたじゃん」と呟いた。

真紅はいつの間にか人化して、セバスが用意したお菓子をムシャムシャと貪り食べている。


「レン様。どうしてもレン様が乗りたいのであれば翡翠に騎乗することも構いませんが、私には賢くてかわいい愛馬がもういますので翡翠に乗ることはありません」


ズバッとセバスは翡翠に乗らない宣言をすると、乗せたくないはずの翡翠がグムムと悔しがっていた。


「うーん、ぼくもユニコーンには、のらなくてもいい。あのね、あのね、ペガサスさんのりたーい!」


「おや、私もペガサスなら乗ってみたいですね」


セバスと顔を見合わせてにこーっと笑うと、翡翠が「ペガサスよりユニコーンだろうがっ!」と喚いていた。

だってペガサスさんは翼があってビョーンって空を飛べるんだよ? すごくない?




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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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