ユニコーンの処遇 3
誤字脱字報告ありがとうございます!
いつも、ありがとうございます。
では、順番にご紹介しましょう。
神獣フェンリル、白銀。
聖獣レオノワール、紫紺。
聖獣リヴァイアサン、瑠璃。
神獣フェニックス、真紅。
聖獣ホーリーサーペント、桜花。
みんな、みんな、ぼくの大事なお友達です!
あ、ぼくの名前はレン・ブルーベルで、この人は大好きな兄様でヒューバート・ブルーベルってお名前なの。
それでそれで、こっちのもふもふな人はアリスターでぼくと兄様のお友達で、アリスターと兄様は騎士団で剣を習っていて、あの偉くてかっこいい人が騎士団の団長様で、なんとぼくと兄様の自慢の父様です!
お名前はギルバート・ブルーベルだよ、間違えないでね。
そして、ぼくたちのお世話を完璧にしてくれる有能でとっても優しいお兄さんがセバスです!
「セバスは、ほんとうは、えっとぉ」
本当のお名前はもっと長いんだけど、ぼくたちは「セバス」って呼んでいるから、えっとぉ。
「セバスティーノ、でございます」
セバスはぼくに向かって名前を言うとキレイにお辞儀をした。
んゆ? 今はユニコーンにお名前を教えているから、ユニコーンに向かって教えてあげて。
「嫌でございます」
「んゆ?」
な、なんか鮮やかな笑顔でものすごいことを言われた気がする……。
「……どうしてみんなに名前があるの? も、ももももしかして、あの方に付けてもらったの?」
やや呆然とした顔のユニコーンに問われたみんなは、頭を振って無言で否定する。
「じゃ、じゃあ、誰が?」
なんか、ここで「はい、ぼくです」って主張したらダメな気がします。
兄様も何気にぼくの手を強く握ってるし、アリスターはぼくの両肩を両手でしっかりと掴んでいる。
散々ユニコーンの前でお互いに名前で呼び合っていたのに、みんな口をギュッと結んでいるけど、目だけはギラギラと神獣聖獣の名付けをバラした父様を攻めている。
しかし、ここで思わぬ伏兵が現れた!
「そうですね。レン様。この駄馬に名前を付けてくださいませんか?」
「おおおぉぉいいいぃぃっ! 俺がやらかして白銀たちに冷たい目で見られているのをわかってて頼むのか?」
父様がセバスの首を絞めてギューッと文句を言うけど、セバスは片手でペイッと父様の体を横に押しのけた。
「お願いします、レン様。さすがに駄馬と呼び続けるのも伯爵家として体裁が悪いので」
「んんっ、ぼくはいいけど……」
なんとなく浮かんでいる名前もあるし……、でもセバスのことを射殺しそうに睨んでいるみんなのことは気にしないのかな?
兄様もピキッと青筋を立ててるし、アリスターは小声で「ひええっ」とビビッてますけど。
「何? 何言ってんの? そんなガキが神獣や聖獣たちに名前を付けられるわけないじゃん? だって契約だよ? しかも名前を付ける側が上位なんだ。それなのにこんな取るに足らないガキが……」
ぼくのことを指差してブルブル震える声で信じられないと訴えるのはいいけど、みんなの殺気がね? なんか怖い気が部屋中に溢れててね? 部屋の壁がビシッビシッとひび割れていくんだけど……。
「にいたま、こわい」
部屋が崩壊しそうな様子が怖くて兄様の体にヒシッと抱き着いたら、どうやら兄様はぼくが「ユニコーンが怖い」と震えていると勘違いしてしまったらしい。
スッと立ち上がると、セバスのように壁に飾られた家宝である剣へとスタスタ歩いていく。
「いや、ちょっと待て。待てっ、ヒュー」
アリスターが慌てて追いかけて羽交い絞めにして兄様を押さえてました。
「もう! みんな、めーよ」
ぼくは勇ましく立ち上がり両手を広げてみんなへアピールします。
落ち着いて、深呼吸でもしようよ。
とにかく怒っている人は落ち着いてください。
セバス、みんなに美味しいお茶でも淹れてあげて。
ああ、ユニコーンの前の桶に水を注がないでいいから、ちゃんと温かいお茶を用意してあげて。
白銀と紫紺はぼくが必死に宥めても怒りが静まらなかったのか、ゴツンと一発ずつユニコーンの頭にゲンコツを落としていった。
「痛ーい」
二人に続き真紅がピイピイと鳴いて、ユニコーンの額を嘴で突いていた。
「ひいーっ」
地味に痛そうである。
瑠璃と桜花は名付けの件をうっかり口を滑らせた父様に笑顔で威圧しています。
……父様がかわいそうだから、許してあげてください。
「いいの? ユニコーンに名前を付けたらレンとお友達になってしまうんだよ?」
「んゆ?」
兄様が気遣わし気に確認してきた。
お友達になるにはまだユニコーンのことよく知らない……というか、ぼくのことを気に入らないのかもしれない。
でも、別にぼくはお友達になりたくないわけじゃない。
セバスとはお友達になったんだし、ここで一緒に暮らしていくんだから、もっと仲良くなれると思う。
「いや、セバスさんは友達になったわけじゃ……イテッ、イテテテ」
アリスターが何やらブツブツ呟いていたかと思えば、足の脛を抱えてピョンピョンとジャンプしだした。
「ど、どうしたの?」
「さあ? 急に運動でもしたくなったんじゃないの」
兄様がさりげなくアリスターからぼくを離してしまう。
「くっそう、ヒュー。覚えてろよ」
アリスターの言葉に兄様はフンッと鼻で笑って応えていた。
「レン。このバカに名前を付けてやってくれ。ここに残る以上、戒める鎖は多いほうがいいじゃろう」
瑠璃が申し訳なさそうに眉を下げてぼくに頼む。
隣の桜花もうんうんと頷くので、ぼくがユニコーンに名前を付けることで瑠璃たちの心労が減るのだろか?
「ぼく、がんばる」
むんっと胸を張って力強くユニコーンの前まで歩き、ジッと見つめた。
「……なんだよ」
温かいお茶が入ったカップを両手で包むように持ったユニコーンがぶすくれた顔をしている。
ぼくがユニコーンに付けようと思った名前、それはとってもキレイなその一本角のイメージだった。