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神様の日記帳~暫しの休息編~

大興奮して自分の冒険話をかなり盛りに盛って久しぶりに会った家族にお話ししたレン君は、突然電池が切れたかのようにパタンと眠ってしまった。

大好きな兄様の隣で、大好きな白銀と紫紺に囲まれて、今は深い眠りの中だ。

その胸には、瑠璃から貰った鱗の欠片と新しく友達になった桜花の鱗の欠片がキラリと光っていた。


「はぁーっ、かわいい」


「変態くさいぞ、お前」


「ヒドイ」


水鏡に映るレン君の健やかな寝顔を堪能していたのに、体も気力もとっくに全快している神獣フェニックス、レン君に付けてもらった名前は真紅に、グサッと一言鋭く刺された。

しくしくとここ『カラーズ』の創造神である僕が泣いているのに、神に仕える神使たちは揃って無視をする。

ヒ、ヒドイ!


「なあ、俺様、いつ戻れるんだよ?」


まだ幼い子供の姿でぷくっと頬を膨らませた真紅を微笑ましく思う。


「なに、ニヤニヤしてんだよ、気持ちわりぃ」


「だから、ヒドイ!」


君を創った親心的な何かを否定しないでよっ。


「プンプンだよっ。真紅はもう大丈夫だ。ふふふ、レン君の所に戻りたいんだね? これを機会に白銀たちとは別の所へ行くと思っていたよ」


ニコニコとした僕の秀麗なお顔に、ゲシッと真紅のドロップキックが決まる。


「いったーい!」


「バ、バカ言ってんじゃねぇ。俺様はレンの所に帰りたいわけじゃねぇわ。俺様は……。お、俺様は……」


どんどん赤くなる顔に真紅はとうとうバササッと小鳥の姿に戻って、バッシャーンと水鏡に突っ込んでいった。


「あーあ、ビシャビシャだよう」


水鏡の水を被って、髪の毛から服まで濡れそぼった僕を見て、狐の神使が一言。


「あ、ちゃんとお掃除してくださいね、そこ」


ヒドイ! 僕、神様だよ? 偉いんだよ?

そして、「はい」と渡される雑巾。

はいはい、掃除しておきますよ……て、その前にタオルと着替えを持ってきてよーっ。




 





お掃除はもちろん、着替えもして狐が淹れてくれたお茶をズズーッと啜っていると、ポワンと黒い煙と共に闇の上級精霊であるダイアナが姿を現した。


「おや?」


「土の精霊王の調子はどうかしら?」


アイビー国で捕らわれ神気の混ざった瘴気と邪気にその体を侵されてい土の精霊王は、ここ神界にて養生中だ。


「調子はいいけど……。ちょっと働かせ過ぎじゃない?」


ダイアナはなにも親切心で土の精霊王の体調を確認したわけじゃない。

ノルマとして課している土の精霊、しかも浄化能力持ちの精霊を生み出す仕事が順調かどうかを気にしただけだ。


「そんな呑気なことはしてられないわ。いつ、瘴気が世の中に蔓延するかわからないのに」


彼女は狐が差し出した椅子に優雅に足を組んで座り、その狐にコポコポと紅茶を淹れてもらっている。

カチャリと自分には出てこなかったケーキがサーブされるのを見て、むきーっとなる。


「ズルい、ズルいよ。僕にもちょーだい」


そ、そんなにアホな子を見る目で見なくていいじゃないか!

まあ、ケーキが出てきたから、どうでもいいけど。

フォークにケーキを刺して、ニコニコのご機嫌の僕は、そういえばとダイアナに気になったことを聞いてみた。


「ねぇ、どうして、白銀たちに誤解させることを言ったのさ。絶対あの子たち、()()子のせいだと思っているよ?」


土の精霊王を穢した邪気の持ち主を、白銀と紫紺はまったく違う子だと思っている。

その誤解をわかった上で、「探してこい」と仕事を任じたのはダイアナだ。


「あら? なんのことかしら? ああ、ご自分で創ったのに制御ができず後始末を人任せにしておきながら、結局誰一人として恭順してくれなかった徳薄い貴きお方は気になりますよね? 今度こそ精霊族が神獣聖獣をどうするのか?」


「……少し、言葉が過ぎるんじゃないのかな?」


「だって、邪気を纏うとなれば、邪神です。そのような輩と我が君が対峙すればどうなるのか! 今度はご自分たちで決着をつけてくださいな」


ダイアナは僕の怒りなど気にもせず、ぷいっと顔を背けてしまう。


「まだ、()()子は邪神になっていない。封印して眠っているのだから」


神界に連れてきてもどうしても癒せなかった()()子。

白銀たちと違って悲しみではなく、怒りに捕らわれ、恨みに溢れ、自虐の沼に堕ちた()()子。

今は、僕の箱庭(せかい)のどこかで静かに眠っている……はずなのに。


「白銀たちには仲間を見つけてもらい、いつかの決戦に備えてもらいます。今度は神獣聖獣同士で解決してくださいませ。我が君や精霊族の犠牲は許しません!」


バンッと両手をテーブルに叩きつけ、ダイアナはそのままブリリアント王国へと転移してしまった。


「はああああっ」


もう、どうしてこうなるのかな?

レン君のおかげで、バラバラだった神獣聖獣たちも仲良くなってきて、光と闇の精霊王の力も徐々に取り戻しつつあったのに、まさか()()子の力を利用する奴らが出てくるとは……。


「おかしいな……。箱庭遊びって、こんなにハードだったけ?」


「遊びといはいえ、創造神となるのです。ご苦労があるのは当たり前ですよ」


乱暴に席を立ったダイアナのせいで茶器が欠けていないかチェックする狐は、チロリと僕を見てそう言った。


はああああっ。

あーあ、かわいいレン君を眺めて癒されたい。


封印している()()子のことも、邪神に堕ちたと仲間に疑われているあの子のことも、いまだに一人ぼっちで、でも寂しいという感情がわからないあの子のことも気になることはあるけれど……。

ここは僕のストレス発散の場所、憩いの場所だから。


「あ、そういえば、風の精霊王はどこに行ってしまったんだろうね?」


火と水の精霊王やダイアナが探しても見つからなかった彼は、どこにフラフラ飛んでいるんだろう?


「お探ししますか?」


「んー、いいよ。僕は別に用があるわけじゃないから」


僕は、よっこいしょと立ち上がると水面が静かになった水鏡へと足を向けた。


いつも「ちびっこ転生日記帳」をお読みくださりありがとうございます。

誤字脱字報告もありがとうございます。

ここで「精霊を探せ編」は終了です。

次章スタートまで、しばらくお休みします。

再開するまでお待ちください。

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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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