お家に帰りましょう 3
すみません、「お家に帰りましょう 1」が抜けてました。
教えてくださった方、ありがとうございます。
そして、いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
ぼくは、蛇のお姉さんからのお願いに、頭をフルフル左右に振りました。
とっても大事なお話なので、白銀に咥えられた状態からぴょんと脱出して、お姉さんとちゃんと向かい合ってお返事しなきゃ。
「えっ、そんな……」
お姉さんはぼくの返答にショックを受けて、ヨロヨロと後ろに二、三歩下がります。
ぼくたちの後ろにいる白銀と紫紺が「よくやった!」と言っているけど、なんで?
クルッと振り向くと、喜色満面な白銀と紫紺、兄様とアリスターはハラハラした顔でぼくを見守っている。
ぼくは、お姉さんへと顔を戻して、緊張にゴクリと喉を鳴らした。
大丈夫、大丈夫。
ぼくは、勇気を出してお姉さんに問いかけた。
「あのね、おともだち。おなまえは、おともだちなの」
「……おともだち?」
ぼくは大きく頷いた。
「そう。おなまえ、おともだち。……おねえさん、ぼくとおともだち?」
「ええっ!」
ドキドキ、ワクワク。
蛇のお姉さんはぼくとお友達になってくれるかな?
アイビー国ではドロシーちゃんとお友達になれたし、きっとお姉さんともお友達になれると思う。
「……いいの? 私なんかと」
お姉さんがもじもじしながら聞いてくるから、ぼくはお姉さんの両手を握って大きな声でお返事しました。
「うん。おねえさんがいいの!」
後ろで白銀と紫紺の「レンーッ、ダメーッ」という叫び声や、兄様の「セバス、どうしよう」という途方に暮れた声が聞こえたけど、みんなのお話は後で聞くから静かにしていて。
今、ぼくはとっても大事な任務があるのです。
むふん!
「おねえしゃんの、おなまえ」
「私にも、名前を付けてくれるのね」
お姉さんの期待の籠った視線が痛いけど、ぼくは頑張るのです。
といっても、白銀たちは色のイメージがあったのでそのままお名前にしちゃったんだけど、お姉さんの場合はちょっと違う。
ぼくは、お姉さんの姿をよく観察しました。
じいーっ。
うん、やっぱり「桜」です。
お姉さんの本当の姿、大きな蛇さんは薄紅色の鱗がピカピカ陽光に光って、まるで桜の花びらのようでした。
この世界には「桜」に似た花も木もありません。
兄様のイメージのお花「天色の剣」を作ったシードさんにも聞きましたが、「桜」と似た花や木はないそうです。
シエル様はこの世界の創造神だけど、日本の神様でもあるのに「桜」を作らないなんて不思議だなぁ。
だから、お姉さんの本体、大きな蛇さんの姿はとってもキレイでどこか懐かしくて、素敵なの。
「おうか。おうかでしゅ」
桜の花で「おうか」ってどうかな?
「おうか?」
蛇のお姉さん、桜花は自分に付けられた名前のイメージが湧かないからか、ちょっと不思議そうな顔。
だから、ぼくは大好きな「桜」を一生懸命に説明しました。
手振り身振りまで付けて説明したつもりだけど、桜花にはいまいち伝わってないみたい、無念。
「ちょっと、ごめんなさいね」
桜花はぼくに謝ると、こつんとお互いの額を合わせた。
「ああ、イメージが伝わってくるわ。とっても素敵なお花ね。このお花の名前かしら」
ぼくは桜花に伝わったことが嬉しくて、ブンブンと頭を上下に動かします。
「ふふふ。ありがとう、レン。私の、お友達」
「あい!」
ぼくと桜花が仲良しのハグをすると、白銀と紫紺の絶望の叫び声が上がりました。
「ああーっ、やっぱり」
「またなの? どうしてよっ!」
兄様は諦め顔でセバスと相談。
「父様の頭がまた痛くなるね」
「仕方ありません。日頃の行いのせいでしょう」
「いや、ヒューもセバスさんも。いいのか、あれ?」
アリスターも何か心配しているようですが、問題なんて何もないよ?
桜花からしゅるるると金色のリボンのような光が伸びて、ぼくの体に巻きつきキュッとリボン結びになった後、パアッと散るように消えていきました。
白銀と紫紺のお名前を付けたときにも、こんなことがあったような?
「あら、神聖契約だわ」
「けいやく?」
はて? 契約なんてしてませんよ?
「私とレンがずっと仲良くお友達でいるっていうお約束よ」
「わーっ。ぼく、うれちい」
ぎゅうっと、再び桜花の体に抱き着いたぼくは、ニコニコと幸せに浸っていました。
相変わらず白銀と紫紺は、この世の終わりみたいな壮絶な顔で、何かを叫んでいたんだけど、どうしたの?
お友達が増えたんだから、みんなで仲良くしようねーっ。