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精霊王様を助けよう 8

紫紺の奴が、倒れたレンのまだ幼い体を魔力検知で診ている。

緊張する瞬間だ。

契約しているレンの命の火が燃え尽きようとしているならば、俺にもその感覚はわかる……ハズだが、重篤な状態だとイマイチ認識できないやもしれん。

だから、紫紺の奴からレンは無事だと告げてもらわないと……ムムム。


「ふうーっ。レンは魔力枯渇状態で熟睡しているだけ、みたい。よかったわーっ」


ふうっと頭を下げて紫紺は大きく息を吐いた。

同時に、俺、ヒュー、セバスたちも息を大きく吐き出した。


しかし、安穏とはしていられない。

さっきから頭にパラパラと土塊が落ちてきている。


「……崩れるか?」


「いえ。元々はワームたちが掘った地下通路です。全て崩れることはないと思いますが、ここ一帯は例の道化師たちの魔力によって補強されていた部分。魔法陣の瓦解と共に朽ちる可能性はあるかもしれませんが……」


あっ!

俺と紫紺が顔を見合わせる。

やべっ、忘れていた。


「おいっ。ディディ。今、石柱はどうなっているっ」


俺の咆哮にビクンと丸い体を反応させた火の中級精霊ディディは、アリスターの足に隠れながらも報告してくる。


「石柱の破壊は始まっているよ。先にアルバートたちが取りかかっているけど、まだ破壊には至ってない。でもすぐだよ」


ディディは子供のような高い声で、()()()()()()にも聞こえるように話した。


「セバス。救出は完了した、撤退だ」


「かしこまりました、ヒューバート様」


セバスは深く眠って体がぐにゃんとしたレンをひょいと軽々と抱き上げると、スタスタと歩き始める。


「ドロシー。貴方が先頭です。アリスター、ドロシーと並走を。移動しながらチャドと土魔法で新たにこの通路を補強してください」


「え?……ええーっ」


モグラ少女がセバスの無茶ブリに悲鳴を上げたが、それどころじゃない。


「いいから、早く走れ。この部屋は崩れるぞ」


通路を土魔法で広げ補強したこの部屋、土の精霊王を閉じ込めていた土牢のある部屋は、奥から土砂が少しずつ流れ出しているみたいだ。


「アタシが後ろから加勢するわ。いいから、早く行きなさいっ」


紫紺が尻尾をひょんと一振りさせて精霊王が捕まっていた部屋の入口を、土魔法で築いた土壁で塞いでしまった。

これで、ここからの土砂からの被害は押さえられるだろう。


「は、はいっ」


モグラ少女が両手に同じようなモグラ精霊を乗せて、トタトタと危なっかしく走り出した。

その周辺から柔らかい光が土が剥き出しの床、壁、天井を覆っていく。


「……なかなかね」


紫紺がニヤリと笑って、その光を覆うように自分の土魔法を展開させていく。


「ああー、スマン」


「なによ?」


だってなぁ……、俺は土魔法とか……得意じゃない。


「わかってるわよ、そんなこと。得意な奴がやればいいのよ。それより落ちて来る土塊からみんなを守ってよ」


パチンとウィンクする紫紺に苦笑で返して、俺は自分の体の周りに風魔法で風壁を築く。


「おうっ。まかせろっ」


その風でできた防御壁を、全員を守るように薄く広げていく。


「あと、ちゃんと真紅のことも守ってよ。落とさないでよっ!」


「あっ」


ごめん、忘れてた。

真紅もレンと同じく、土の精霊王を次元の裂け目に放り込んだあとバタリと倒れていた。

こいつは瘴気と邪気に当てられたことが主な理由で、浄化能力のあるレンより状態は悪いようだ。

なんといっても、倒れて即時に小鳥の姿に戻り、その翼の先が邪気で黒く染まっていた。

レンの浄化の力でも、直接土の精霊王に触った部分までは防げなかったのだ。


今は俺の頭の上で眠っている……邪気を振りまかないようにセバスが持っていたハンカチに瑠璃の鱗と一緒に包まれながら。


「行くよ、紫紺、白銀。殿(しんがり)は任せたよ」


ヒューが一度俺たちに振り向き声をかけ、その後は後ろを向くことなく真っ直ぐに進んで行く。

俺たちもその後に続く。

もう少しでモグラ少女が寝泊まりしていた小部屋に辿り着く頃、ディディが叫ぶ。


「石柱、全部破壊されました! 魔法陣が消えます」


たちまち、ピカッと強い光に目を奪われる。


――作戦は成功したのか?











その日、アイビー国には不可思議な光景が広がった。

いつの間にか設置されていた国境沿いの六本の白い石で築かれた高い柱。

害虫から農作物を守る魔道具だと説明を受けていたが、その後、原因不明の不作に悩まされていた国民たちはその存在を忘れつつあった。


なのに、クラク森に聳える一本がピシッビシッとひび割れグシャリと潰れていったかと思うと、その隣の柱は突然細切れに壊れ倒れていった。


何事か! と目を見張った農民たちは、まさかその反対方向にある石柱が水、火によって崩壊していることも、内側から光が溢れ消滅していったことも、そして……。


「お前、聖獣らしくどんな魔法でも自在に使えるのに、なぜ物理で壊したんじゃ?」


瑠璃が本当に理解できないと首を傾げると、たおやかな女性の姿をした聖獣ホーリーサーペントが困ったように微笑む。


「だ、だって本体でぎゅっと締めつけたら、すぐに壊れるでしょ? ぎゅっ、て」


そりゃ、バカデカイ蛇の体で柱に巻きついて締めつけたら、石でできた柱なんざ、一瞬で壊れるだろうよ。

瑠璃はちょっと遠い目をして、仲間である聖獣ホーリーサーペントの言い訳を黙って聞いていた。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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