表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
243/473

救出作戦 4

「えっ……と、そのぅ、次は土の精霊王の救出だけど……」


なんでか、アルバート様がものすごく言いにくそうに、つっかえながら言葉を紡ぎだしていく。

しかも、ぼくの顔をチラチラと盗み見ているのだ。


「んゆ?」


気のせいか、アリスターの額からつぅーっと汗が滴り落ちているような?


「まず、土の精霊王様までの道案内としてドロシーとチャドには同行してもらわないと。いいですか?」


セバスが落ち着いた声でドロシーちゃんに同意を求めると、ドロシーちゃんはチャドと顔を合わせる。


「……はい。あのぅ、邪魔にならないよう、頑張ります」


ぐっと右手を握って決意を現すドロシーちゃんの頭を、セバスは柔らかく笑んで撫でる。


「ありがとうございます。大丈夫ですよ。貴方のことはセシリアからも頼まれています。私がちゃんと守りますから」


「は、はいっ」


ドロシーちゃんはいつもぼくがメロメロになってしまうセバスのなでなでを受けて、ぴきんっと体を固まらせた。


「戦力としては石柱の破壊に回してしまったから、あとは僕とアリスターだね。アリスター、行けるか?」


「へ? あ、ああ、俺は大丈夫だ……ぞ」


なんでか、アリスターまでぼくのことをチラチラと見るんだけど?


「白銀と紫紺にも同行してもらう。土の精霊が侵されている邪気を祓うのに協力してもらわないと」


兄様が顎に手を当てて、これからのことを考えるように顔つき研ぎ澄ませていく。


「ええ。同行するのはかまわないし、邪気のことはわからないけど、最悪、土の精霊王を次元を裂いて神界に送るわよ」


「そうだな。俺たちでは手に負えなくても、()()方ならなんとかするだろう」


紫紺と白銀がお互い意見を補い合いながら方針を決めていく。

ああ……もう! いつになったらぼくの出番がくるの!


「はいっ! ぼくもいく!」


ビシッと手を挙げて主張します!


「ピイッ!」

<俺様も行くぞ。無視すんなっ!>


『おれもーいくー』


『ヒューがいくなら、いくわ』


ぼくと真紅、チルとチロが参戦です。

あれれ? なんで兄様はそんなにビックリしたお顔をしているの?












ぼくの頭の上に真紅がいて、肩にはいつものチル。

そして、ぼくの周りには兄様とアリスターと白銀と紫紺が集っていて、さっきから「お留守番」と連呼しているのが嫌い。


「レン? お願いだから留守番してておくれ」


兄様がへにょりと情けない顔でぼくに懇願してくるけど、やー、です。

ぷいっと顔を背けると、今度はアリスターが眉をちょっと吊り上げて。


「おい。危ないんだぞ? 大人しく宿で待っていろよ」


い・や・で・す! とべーっとアリスターに向かって舌を出して、またまたぷいっ。


「レン……土の中は面白くないぞ」


「そうよ。宿でおいしいお菓子を食べて真紅と一緒に待っていてちょーだい」


白銀と紫紺がぼくの機嫌を取るように言い募るけど、聞こえませーん、だ。

ちなみに、ぼくの頭の上の真紅は白銀たちに向かって「ピイピイ」と文句を言っているけど、無視されている。


「はーっ、ここでレンのわがままが始まるとは思わなかった」


兄様、ひどい。

ぼくが一緒に行きたいのはわがままじゃない……、あれ? わがままかな?


「いいじゃないか、連れて行けば。セバスがいればだいたいは切り抜けられるだろうし、神獣と聖獣が一緒にいてヤバいこともないだろう」


巻き込まれるのが嫌になったのか、アルバート様がぼくの味方になった。

たぶん、面倒になったんだと思う。


「でも、何が起きるかわからないし……」


過保護の兄様はなかなか折れてくれない……、アルバート様、もっと頑張って!


「その獣人のお嬢ちゃんが見てきたことには、肝心の悪党たちは始末されて首謀者は作戦の失敗で立ち去ったんだろう? 土の精霊王を助けに行くだけだし、地下通路が崩落しても土の精霊がついてれば安全は保障されているし、大丈夫、大丈夫」


そう、ドロシーちゃんがこっそり聞いていた悪党たちの会話では、残念ながら作戦を決行していた悪い人たちは主犯の道化師にむにゃむにゃされてしまった。

本人も石柱を使った魔法陣が聖獣ホーリーサーペントの結界によって邪魔されたことを知ると、このアイビー国からは去ったらしい。

つまり、地下通路の土牢に捕まっている土の精霊王様を助けにいくのに、危険などないのだ! たぶん。

どうだ! と胸を張ってピカピカの笑顔を向けるぼくと目を合わせてくれる人がいない。


「んゆ?」


え? やっぱりダメなの?


「アルバート様に説得された形では甚だ不愉快ですが、私も賛成ですよ。それに、レン様はわがままで一緒に行きたいと言っているのではないのでしょう。一人で残される寂しさからでもなく……」


ひょいとぼくの体を抱き上げたセバスが、何かを促すような瞳でぼくの顔を覗き込む。

ぼくが兄様と一緒に行きたい理由? そんなの決まっているよ!


「にいたまとアリスターと白銀と紫紺。みんな、ぼくがまもりゅの!」


ぼくの知らない所で危ない目に遭わないように、ぼくがみんなを守ってあげられるように、一緒にいたいんだよ?


「もちろん、セバスも。まもってあげりゅ」


ぼくの言葉にセバスはニッコリ笑って「ありがとうございます」とお礼を言ってくれました。


あれ? 兄様たちが蹲っているけどどうしたの?

白銀と紫紺までピクピク震えているけど?


「か……かわいいが……すぎて、つらい」


兄様?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ