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救出作戦 3

闇の上級精霊ダイアナさんは、神獣聖獣たちだけじゃなく同じ精霊からも人気がないみたいです。

なんで?


「なんでって……あの鼻持ちならない態度に何度拳を握りしめたことか……」


火の精霊王様の右拳がブルブルと力の入れすぎで細かく震えています。


「我は精霊王だ。なのに、たかだか上級精霊如きがいちいち我に指図をする居丈高な態度に腹が立つ」


水の精霊王様の後ろから湯気のような煙がモクモクと湧きだしてきました。

……ダイアナさん、嫌われています。


「いやだわ、精霊王たちと意見が一致するなんて。でもあの女だったらしょうがないわよね。ホント、憎らしい奴よ」


「おい、紫紺。あいつの性格が悪くても、とりあえず敵対するのはやめろ。粘着質なタイプだからな、後が面倒くせぇ」


白銀が紫紺にギュッと鼻にシワを寄せて言い捨てます。

……みんな、そんなに嫌なの? おかしいなぁ? ダイアナさん、キレイでいい精霊さんだと思ってたんだけど……。


「んー、これは白銀たちのやる気を削がないためにも、ダイアナには遠慮してもらったほうがいいかな?」


兄様も困ったように笑います。


「ピーイッ、ピイ」

<そうしろ。いいから瑠璃を呼べよ>


真紅が小さな翼をバサッと広げる。


「るり……か。うん、るり、よぶね」


そうだね。

こんなにダイアナさんの評判が悪かったら、無理に仲間に入れないほうがいいもんね。

ぼくは瑠璃にもらった彼の鱗を両手に握って、大きな声で瑠璃に呼びかけた。


「るーりー!」









瑠璃はぼくが呼ぶとあっという間に現れた。

転移魔法は行ったことがある場所にしか正確には転移できないけど、ぼくは瑠璃からもらった瑠璃本体の鱗を持っているので、それを目印に瑠璃は転移してくることができるんだって。


そして、兄様たちからこれまでのことを説明されて、瑠璃はうむと腕を組んで考えこんでしまった。

暫しの時間が過ぎ、ゆっくりと瑠璃の閉じていた眼が開かれる。


「わかった。その石柱の破壊、一本を受け持とう。正直に言えばレンと共にいたいが、儂が適任だろう」


うむうむと頷いて、心配そうに見つめていたアルバート様たちにヒラヒラと手を振って応える。


「水の精霊王よ。その後の土地の浄化に海にいる精霊たちに声をかけようと思うが?」


「……よろしいのですか?」


「かまわんだろう。そもそも、あやつらはお主の、水の精霊王の臣下じゃろうて。長い間海に棲むことで多少、水の精霊と違いはあるだろうが、浄化もできるしな」


瑠璃の言葉にぼくはブルーベル騎士団でお世話になっているプリシラお姉さんの契約精霊であるエメを思い出す。

確かに海にいた水の精霊、エメは浄化ができたし、なんだったら水の妖精であるチルとチロに浄化を教えている。


「よかったな、水の。正直、精霊不足で頭が痛かったところだったのだ」


火の精霊王様は口を大きく開いて笑った。

そんなに精霊って数が少ないの?

なんか、チルの毎日の報告を聞いているとあちこちに妖精や精霊が溢れているイメージでしたが?


「そうじゃ。あちこち至る所に我らの子供たちはいる。だがな、こんなに酷い瘴気に侵されている場所を浄化できる精霊ともなれば限られるのじゃ。しかも土の精霊は精霊王と共に被害に遭っているし、残った土の精霊たちを精霊界から連れて来ると、土の精霊界のバランスが崩れ精霊界自体が危うくなってしまう」


それぞれの精霊が棲まう精霊界は、精霊力で別次元に存続を維持しているので、精霊力が減少すれば瓦解してしまう恐れかあるとか。

だから、今回の件で精霊王様が捕まっていて多くの精霊が行動不能になっている、土の精霊たちには協力を求めない。


「問題は風のじゃ。まったく、あそこは精霊王からして好き勝手をしているので、捕まえることもままならん」


水の精霊王様が不満気にトントンと指で腕を叩いてる。

風の精霊王様が不在なので、風の精霊界から浄化のできる精霊を連れ出してもいいのかわからないそうだ。

無理に連れてきても、風の精霊の気質として真面目に浄化するとは考えにくく、むしろ邪魔をされるかもしれないと危惧していた。


「だからな、我の火の精霊と水の精霊で此度のことにあたらねばならないと覚悟はしていたが……。瘴気が土の中に充満しているとなると、ちと火の精霊では荷が重いのじゃ」


火の精霊たちの浄化は、浄化の炎でブワッと一気に浄化する方法が主で、繊細なコントロールを必要とすることは苦手。

しかも、土の中の瘴気を浄化するなんて、どうやって炎を巡らせればいいのか? 上から盛大に炎で焼き尽くせばいいのか?


「……いいわけあるまい。いくら燃えない炎といっても、土のエネルギーは燃やし尽くしてしまうだろう。本当の死の大地になるぞ」


水の精霊王様が頭が痛いように手で頭を押さえ、額に深いシワを刻む。


「だから、海の精霊が援軍にくるなら助かったという話じゃ。水であれば地中の中の浄化も容易いであろう?」


ワハハハッと豪快に笑って火の精霊王様はバシンバシンと水の精霊王様の背中を叩いていた。

なんか……水の精霊王様って苦労性っぽいような?


「お主も意地を張っておらんで、いい加減浄化の力を()()方から授けてもらえばいいじゃろうに……」


瑠璃の残念な子を見る視線から、水の精霊王様は頬を少し膨らませて顔を背けていく。

んゆ? 水の精霊王様ってば、ちょっと子供っぽいかも!


「じゃあ、石柱の破壊チーム分けはこれで決まりだな! あとは必要な精霊たちを招集してもらって。……次は土の精霊王様の救出だ」


アルバート様が場を仕切り直すのにパチーンッと両手を合わせて、声を張り上げた。

土の精霊王様の救出チーム……はい! ぼくの出番ですよねっ。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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