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石柱の魔法陣 2

神の箱庭『カラーズ』の創造神であるシエルは頭を抱えていた。

自分がこの世界に創り出した神獣聖獣たちの仲が期待していたようなモノではなかったことは把握していた。

でも、それぞれが守護する地は離れていたから大丈夫だと思っていた。

なのに、ちょっと本来の地の仕事で箱庭(せかい)を訪れるのに月日が経ってしまったら、箱庭(せかい)が崩壊寸前に追い込まれているなんて想像もしなかったのだ。


「どうします? もういっそのこと創り直します?」


狸の神使たちがたいして興味もなさそうに提案してくるが、そう簡単に創り直す選択はしたくない。


「うーん、うーん、どうにかならないかな?」


こうしている間にも、水鏡で世界を監視している狐の神使たちの切迫した声が重なりあう。


「北の大地の氷が神獣フェニックスの炎で融け、川が氾濫。いくつかの村が水没」


「西の大地の中心、草原が氷で覆われ農作物が壊滅。このままでは餓死者が出ます」


「東の森が枯れ、魔獣、動物が人里に出没。東の大地は地割れ多数、いくつかの街が沈没」


「大変です! 南の火山帯が次々と噴火。噴石とマグマで被害が甚大です!」


……これで神獣エンシェントドラゴンが守護する地と聖獣リヴァイアサンが守護する海まで荒れていたら、問答無用で『カラーズ』は消滅させないといけなかったけど、この状態もかなり酷いが、ああ、どうすればいいんだろう?


「大地の荒れ様も酷いですが、人心の乱れもそうとうですよ。瘴気に神獣聖獣の神気が混じりましたから。放っておくと邪神誕生とかになりませんかね?」


狸の神使が他人事のように進言してくるのが、忌々しい。


「まずは神獣聖獣たちを神界に戻す」


創造神シエルはキリッと今までに見たこともない真摯な表情で、悠々と下界に降りて……降りて……。


「ダメですよ。ルールです。神様は下界に手を出してはいけません」


「いや……。でも、僕が創ったモノたちが暴れているのに。ちょっと回収を……」


しかし、狐の神使は吊り目をさらに吊り上げて、シエルの後ろ襟首を掴みズルズルと引きずっていく。


「ダメです。貴方様ができるのはこの世界の終焉を決意するか……。あの瘴気を鎮めることぐらいですかね。あの瘴気に神気が混じったので、ルール的にはイレギュラー扱いできますから」


「ふむ」


人の悪心などから湧き出る瘴気をどうこうすることはルールに触れるが、創造神が創りだしたモノの神気であればこちらのモノと同意。


「瘴気を浄化するモノを創るか……」


しょんぼりしたシエルの言葉を聞いた狐の神使たち一同は、ピクッとこめかみを引き攣らせた。










結局、新しく()かを創るならと複数の神使たちの監視が付いた。


「うーん。神気が混じった瘴気を浄化できる能力を持つモノ。……で普段は人の世界に無関心なモノ」


シエルは腕を組んで暫し眉を顰めて考える。


「あっ! そういえば妖精がいたじゃん」


別にこの世界に妖精を生み出すつもりはなかったが、自然発生していた妖精とその上位の存在の精霊。

自然エネルギーからのファンタジー生物だ。


「ふむ。力の強い精霊を創り浄化の能力を与えよう。元々自然から生み出された精霊たちなら人に興味などないだろう」


安易にそう考えたシエルは、狐の神使たちに「火・水・風・土」を持ってくるように命じた。

……が断られた。


「ひ、ひどい! 今は非常時だよ? 僕の命令に従ってよー!」


ジタバタする神の姿など見たくはないが、このまま放置してもいいことはないと悟った一人の狐の神使は重々しく奏上する。


「嫌な前例がございますので、まずは今いる精霊から格上げされてみては?」


その精霊のレベルアップが成功したら、いちから精霊王なる存在を創ればいいかと。


「えーっ。あるモノから創りかえるのは難しいんだよ? ゼロから創るほうがおもしろい……」


「貴方ねぇ……」


ヤバい、狐の神使の口から低っい声が出た。

気は進まないが、水鏡で下界を確認し水の精霊の中でも一番力の強いモノを神界に呼び寄せた。

そして、有無を言わさずに精霊王へと勝手にレベルアップさせてしまう。


「どう? どっか気持ち悪い所はない?」


ニコニコと満足気に問いかける創造神の顔を殴ってやりたいと、誕生したばかりの水の精霊王は右手を握りしめた。


「ふむ。貴方様にしては上出来ですね。ではこの経験を活かして火と風と土を創りましょう。早くしないと世界が崩壊しますよ」


「わーっ! 急ごう、急ごう」


勝手にレベルアップさせて、理由も言わずに放置された水の精霊王は不機嫌に眉間にシワを刻む。

自分の見ている前で、同朋である火の精霊王、風の精霊王、土の精霊王が誕生した。


「君たちには、下界に溢れている瘴気を浄化してもらう。しかも神獣聖獣たちが撒き散らした神気が混じった瘴気だ」


四人並んで創造神の腹立たしい精霊王の誕生理由を聞いて、ギリッと奥歯を噛んだ。


「浄化の力を与える。君たちは急いで力の強い精霊たちを創り出し、そのモノたちにも浄化の力を与え、すぐさま使命を果たしてもらおう」


使命? 創造神が創りそこなった神獣聖獣たちの尻ぬぐいが我たちの使命だというのか!

ふざけるなっ!


「断る!」


「……へ?」


断じて、我はあ奴等の尻ぬぐいなどしてやるものかっ。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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