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石柱の魔法陣 1

なんでいつも水の精霊王様って不機嫌そうなんだろう?

ぼくの食べていたお菓子を分けてあげたら、機嫌が良くなってくれるかな?

そぉーっと手に乗せた焼き菓子を水の精霊王様に差し出そうとしたら、その手をガシッとアリスターに握られて緩く頭を振られた。

そっかぁ、ダメかぁ。


しかも、兄様から石柱が魔法陣を形成していると聞いた精霊王様は、ここにいないセバスとアルバート様たちを強制転移で呼び出してしまった。


「いてっ」


「おわっ!」


「「……!」」


アルバート様たちは急に知らない場所に移動させられて、べしゃっと地面に尻もちをついていた。

驚きすぎたミックさんとザカリーさんは、無言で目だけを大きく見開き武器をしっかりと握っている。

セバスはスチャッとかっこよく着地して、素早く四方に視線を巡らせる。


「……ヒューバート様。何か?」


とても冷静に状況を判断して兄様に話しかけるセバスの姿に、白銀たちの顔がヒクヒクと引き攣っているみたい。


「セバス。その……あまりよくないことが判ったんだ」


兄様は精霊王様たちに説明したことを、改めてセバスとアルバート様たちに説明した。

アイビー国に建てられた石柱はぐるりと国境を囲んでいるが、その石柱は魔法陣を形成して媒介に神気が混じった瘴気を使っていること。

その魔法陣の効果が農作物にだけ有効ならまだしも、もっと恐ろしい何かが起きているかもしれないこと。


「神気が混じった瘴気が使われているとなれば、浄化には精霊たちの力を借りなければならないですね」


「そうだね、セバス。しかも六本の石柱をまず浄化して、その後、アイビー国全体の土地を浄化しなければならない」


うーむ、と兄様たちは難しい顔で黙り込んでしまう。

アイビー国に来てから兄様たちは度々難しい顔をする。

それだけ、この国で起きていることがややこしい事なんだろうけど、ぼくはみんなの難しい顔を見るのがあまり好きではないです。

トコトコと水の精霊王のところへ歩いていって、みんなが笑顔になれるように助力をお願いしてみましょう。


「みずのせーれーおーさま」


「……。なんだ(わらし)


ギロッとかなりきつい目で睨まれている気もしますが、ぼくは水の精霊王様が兄様の瀕死の怪我を治してくれた優しい精霊だって知っているので、へっちゃらです。


「あのね。じょーか、してくだたい。おねがいしましゅ」


ペコリと深く深ーくぼくが頭を下げると、白銀たちがダーッとぼくに駆け寄ってきました。

火の精霊王様はなぜか大爆笑しているけど。


「ばかばか! レン。そんな奴に頭を下げるな!」


「そうよ。元はといえばあたしたちの神気のせいよ。頭なら、頭なら……真紅が下げるわっ」


「ピーイッ」

<なんで俺様なんだよっ!>


ぼくを囲んで白銀たちが大声で「頭を下げるな」って騒ぐけど、うるさいです。

顔を顰めて両手で両耳を塞いで白銀たちから離れます。

ついでに水の精霊王様の背後に隠れます。


「……(わらし)。離れよ」


「いやです」


ぼくはフルフルと頭を振って、水の精霊王様の服の裾をギュッと握りました。


「あーはははははっ! 水のが、水のが、子供に懐かれとるわ! そんな、まさか。あーはははははっ」


火の精霊王様は妖艶な美女の姿を裏切る大爆笑で膝をバシバシ叩きながら、ひぃーっひぃーっと引き笑いまでしていて、ちょっと怖い。


「うるさいぞ、火の」


「だって、水のが水の同類以外に懐かれるなんざ初めて見たわ。さすがじゃな、レン。だが、浄化はできん」


「えっ!」


そんな! 浄化できなかったらアイビー国はどうなるの? 農作物が育たなくて土の状態がどんどん悪くなって……。

ううん、石柱から齎される瘴気が土だけじゃなくて大気にまで広がれば、この国自体が瘴気に塗れてしまう。


「ああ、ちがうちがう。そんな大きな目に涙を溜めるんじゃない。いいか、浄化できないのは、こやつだけじゃ」


火の精霊王様はとっても楽しそうな顔で、仏頂面の水の精霊王様を指差してみせた。


「……水の精霊王様が浄化ができない?」


兄様の呆然とした声に、全員が水の精霊王様に注目した。











紫紺が、はあーっと息を深く吐いて、その後何かに納得したのかうんうんと頷く。

白銀と真紅はマジマジと水の精霊王様を見つめ、「嘘だろ」と呟く。


「どうりでヒューの呪いを解くのに、アンタじゃなくてレンが浄化した訳よね。浄化の力が使えないからだったのね」


「そうだ! あのときレンはお前に無理やり力を使われて倒れちまったんだ! ……お前が浄化できなかったからか……」


紫紺と白銀は怪我をした兄様を助けたときのことを思い出して、複雑な気持ちで口をへの字に曲げた。


「んゆ?」


確かにあのとき、ぼくを通して水の精霊王様の力を兄様に注ぐって言われたような?


「……童が命を削って兄を助けようとしていたから、正しい力の使い方を導いただけだ」


水の精霊王様はソッポを向いてしまった。


「治癒魔法の力を導くついでに浄化の力も引き出したんだろうさ。では、なぜこやつが創造神から浄化の力を得なかったのか、話してきかせてやろう」


ニヤニヤ笑い水の精霊王様が浄化の力が使えない理由と、そもそも精霊王様がどうして誕生したかの話を火の精霊王様が語って聞かせてくれた。

みんなが車座になり、火の精霊王様の話を神妙な面持ちで聞き入る。


それは白銀たちも初めて聞く話。

昔、昔の話。


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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