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瘴気と浄化 6

クラク森を馬車で進める所まで進み、その後は馬車を降りて歩いて移動となりました。

でも、ぼくのよちよち歩きでは時間がかかってしまうので、ぼくだけ白銀の背中に乗っています。


「ちゃんと掴っているのよ。あたしも魔法で支えてあげるけど」


「あい」


「レンを落とすわけねぇーだろうっ」


まだ一人で白銀の背中に乗っていられないので、紫紺の注意をよく聞いてしっかりと白銀の後ろ首の毛を掴みます。

真紅は呑気に白銀の頭の天辺で仰向けで寝ているけどね。

聖獣ホーリーサーペント、蛇のお姉さんが張っている結界の近くに来たら、こちらに向かって手を振る人がいました。


「あら、出迎え?」


「ええ。何回もレオノワールに結界を壊されたら懲りるわよ。貴方たちは結界を通り抜けられるようにしたわ。だから。結界を壊さないでね!」


お姉さんは紫紺に必死に頼んでいるけど、紫紺はちょっとつまらなさそう。


「あいつ……。結界壊したかったんだな。ストレス発散したかったのか?」


「そうみたい」


そういえば、最近は冒険者ごっこで魔獣の討伐をしていない白銀と紫紺の二人。

暴れ足りなくて、体がムズムズしちゃうとか?


「んなわけあるか! そういうとき、俺は走っている!」


……体はムズムズするんだね。

今度、父様に頼んで騎士団の見回りに一緒に行けばいいと思う。

いっぱい魔獣を討伐できるし、街のみんなに喜ばれるし、一石二鳥? とてもお得だと思うよ。

白銀は「はいはい」とぼくの提案に適当に相槌をうって、ボワンと人化してしまう。

ぼくをしっかり両腕で抱き込んだままで人化した白銀の頭の上から、ポトリと真紅が落ちていった。


「ピッ!」

<いてーっ!>


「いつまで寝てんだ。そろそろ起きろ、バカ鳥」


上から落ちて地面に打ったプリプリお尻を撫でていた真紅を足先でウリウリと弄る白銀。

紫紺もボワンと人化して、蛇のお姉さんの結界の中へと進みます。

お姉さんに合わせて白銀たちは人化したのに、結界の中に入った途端、お姉さんは大きな大きな蛇さんの姿に戻ってしまいました。


「んゆ?」


「どうしたのよ?」


「だって、あの柱の所まで行くんでしょ? ここからだとかなり遠いわ。私の背中に乗って行きなさい、子供限定で」


「なんで子供限定なんだよっ」


「フェンリルとレオノワールは走ればいいでしょ? フェニックスちゃんは……背中にお乗りなさい」


結局、ぼくは兄様に抱っこしてもらい、恐る恐る蛇のお姉さんの背中に乗ることになった。

アリスターも顔がすごい強張っているけど、震える体を抑え頑張って兄様の後ろに乗った。

真紅は……やっぱり蛇のお姉さんの頭の上にいる。


「紫紺。俺は元の姿に戻るぞ」


「あら、あたしだって」


ボワン、ボワンと二人も獣姿に戻って、競い合うようにダッと走り出した。


「あらあら。元気ねぇ」


お姉さんの体はゆっくりとズルズル動きだす。


「意外と揺れないな」


「ああ。スベスベしていて柔らかい」


兄様とアリスターも乗り心地は抜群のようです。


「にいたま」


クイクイと兄様の上着を引っ張って、期待を込めた目で見つめましょう。


「レン? もしかして、直接乗りたいの?」


ニッコリ笑顔で大きく頷きます。

兄様の手で慎重に蛇のお姉さんの背中へと降ろしてもらいました。


「ふわわわわっ」


アリスターのいうとおりスベスベで柔らかくて気持ちいい。

ぼくは上機嫌で鼻歌まで歌って蛇のお姉さんの背中を楽しんだ。







「わすれてた……」


大事なことをすっかり忘れて浮かれていたぼくは、ついピクニック気分でいたけど、アイビー国に建てられた怪しい石柱を調べに来たんだった。

真っ黒の禍々しい柱を仰ぎ見て、ぼくは反省した。


「レン?」


「にいたま。ぼく、がんばる!」


きっとお役に立ってみせますとも!

まずは観察です。


「じーっ」


真っ黒に見えた柱は、やっぱり真っ黒なんだけど、靄みたいなものが柱に纏わりついて黒く見えているのがわかる。

しかも靄は柱に沿って下に動き、土の中へと移動していく。

柱に纏わりついている靄は消えることなく、何故かモクモクと湧いて出てきているみたい。


「……ヒュー。黒いのわかるか?」


「僕にはただの石にしか見えないよ。残念なことに」


兄様やアリスターにも、この黒い靄は見えないらしい。

チルとチロがいれば黒い靄が見えるのに、チルとチロ、ディディは精霊界からまだ戻ってきていない。

近くで見たら思っていたより太い石柱の周りを、ぼくはウロウロと歩き回る。


「あれれ?」


あれ?

兄様やアリスターがいる所から石柱を見ると黒い靄が纏わりついている。

でも、裏側は普通の石に見える。

ここは国境沿いだから、こちら側はアイビー国のお隣の国の土地。

国境を跨いでひょいひょいと不思議な動きをするぼくを、兄様たちは困った顔で見守ってくれている。


「んゆ?」


なんか……国境を越えるとき……ひゅん! てする。

胸の辺りがひゅん! て。

なんか……気持ち悪い感覚だなぁ。

とりあえず、今わかったことを兄様に報告しよう!


「にいたま~」


「レン。喉が渇いたろう? 果実水とお菓子があるよ」


「わーい!」


あれれ?


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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