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アイビー国へ 4

昨日のお宿で出された夕食を思い出すと、じゅるりと口の中に涎が溢れるようです。

大きな焼いたお肉も、お芋のポタージュスープも、シャキシャキのお野菜も美味しかった……。

白銀と紫紺もガツガツ食べていたし、真紅も果物以外にお肉も啄んでいた。

ぼくもいつもよりモリモリ食べちゃったし、最後のデザートに出されたケーキが! もう! 美味しかったの!


「レン、また昨日のご飯を思い出しているの?」


「ふわわわ。しろいケーキ、おいちかったの」


ぼくは両手を頬に当てて、ほうっと息を吐きうっとりと目を閉じる。


「ふふふ。昨日はいっぱい食べたものね。……アルバート叔父様たちは飲み過ぎていたけど」


そういえば、アルバート様たちはセバスが止めてもワインを飲み続けていたね。

最後はセバスが拳骨して止めていたけど。


「酷い二日酔いらしいよ。頭には瘤もできているらしいし」


瘤は……セバスが殴ったからだと思う。


「……チル、チロ」


『えーっ、なおすのか? ふつかよいだっけ?』


コクリとぼくは頷いてみせた。


『……くさいのも、けすのか?』


ぼくは、またまたコクリと頷いた。

チルは嫌そうな顔をしてみせたけど、ぼくは兄様からクッキーをもらって、それをヒラヒラとチルの目の前に見せびらかしてみた。


『わかった。いってくる。チロ、いくぞー』


『めいれいしないで! ひゅーのためにてつだうのよっ』


ブーンと水妖精たちが馬車の窓から飛び立っていく。


「おしゃけ、くさいの、やー」


ぼくは鼻にシワを寄せて呟いた。











のんびりと馬車が広い道を進む。

賑やかな町と領都を結ぶ街道なので付近の魔獣討伐は万全らしく、アルバート叔父様たちの出番もない。

ぼくの太腿にまあるい頭を乗せて、レンはスヤスヤと眠っている。


「起こしたほうがいいかしら?」


紫紺がかわいいレンの寝顔を覗きこんで呟く。


「いいや。今日はお昼寝ができそうもないからね。いまのうちに寝ていたほうがいい」


サラサラと僕とは違う艶のある黒い髪を撫で梳かしていく。


「ああ、伯爵ンとこに顔を出すんだっけ?」


白銀が大きな口で欠伸をして、つまらなさそうに言い放つ。


「一応ね、挨拶だけはしておかないと。無断で領地で他の国の貴族が好き勝手できないし」


ブルーベル辺境伯はブリリアント王室からの打診を表向き断っているし、ここにいるのは神獣聖獣ではなくて……。


「白い子犬に黒い子猫、ちょっと太り気味の小鳥かな?」


白銀の頭の上でベターッと翼を広げてスピスピと眠っている神獣フェニックスの真紅。


「そうね。どうせ体を小さくしているアタシたちの正体に気がつく奴なんていないし、いいんじゃない? 子猫のフリも」


「犬? 俺が? この見事な銀色の毛並みが白いだと?」


紫紺はどこか面白がっているようだが、白銀は眉間にシワを寄せて難しい顔で悩んでしまった。


「いいの。放っておきましょ。見かけはともかく中身は駄犬なんだから」


相変わらず辛辣だなぁ、とぼくは苦笑して馬車の窓の向こうを見る。


「そろそろ領都が見えてきたね」


レンが喜んだ昨夜の宿の食事のほとんどはブルーベル辺境伯領地から持ってきた物だと教えたら、レンはどんな顔をするだろうか。

レンが絶賛した食事はセバスとリンが作り、最後のデザートのケーキはダイアナが城の料理人に作らせた僕らへの賄賂だ。

アイビー国の町の宿では、あのレベルの食事を用意することは、もう不可能になってきている。


「実際用意された夕食は、アタシたち上客に出す食事じゃなかったわよ。せいぜいマトモなのはお茶ぐらいだったわね」


「肉もマシだったぞ。だがなぁ野菜が小さいし萎れているし、パンは……固いな」


お茶はもともと外国からの輸入品だったろうし、肉があるのは魔獣の数が減るほどの不作ではないからだろう。

でも、野菜の出来は悪く減少していて、小麦は万が一のことを考えて保存しているようだった。


「ブルーベル辺境伯から食材を沢山持ってきてよかった」


「大丈夫! アタシの魔法で無限に収納できるから安心してちょーだい」


レンにひもじい思いはさせないわ! と紫紺は鼻息をふぅんと出して胸を張った。

僕も同じ気持ちだ。

かわいいかわいいレンに、これ以上我慢を強いることはしない。


「早く問題を片付けて帰りたいな」


「ヒュー、安心しろよ。誰だが知らないがちゃんと俺たちが話をつけてやるから」


ニヒヒヒと何かを企むように笑う白銀だけど、神獣なんだから問答無用で力技で問題を片付けようとしないでよ。


「レンが悲しまない方法でね」


念のため、釘を打っておいた。









昼頃にモンステラ伯爵邸に着き簡単な挨拶をと思ったのに、セバスの婚約者やらモンステラ伯爵の下働きの獣人の女の子の事情やらに巻き込まれて。

翌日になんとか例の神獣か聖獣がいる森――クラク森へ調査に行くと、奥に怪しい結界張られていて、それでも奥へそして、そこにいたのは……。


「あら、久しぶり。フェンリルちゃんとレオノワールじゃない! あらあら、そのちんまい小鳥はもしかして、フェニックスちゃん?」


めちゃくちゃ白銀たちとフレンドリーな関係の大きな大きな……だった。


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