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アイビー国へ 1

誤字脱字報告ありがとうございます!

いつも、ありがとうございます。

数日後、慌ただしく旅支度を終えて隣国アイビー国へと出発する日が来た。

僕が剣の稽古や家庭教師と勉強をしている間、レンはリカと一緒に過ごし母様に存分に甘えられたみたいだった。

恥ずかしそうに頬を染めて母様に抱っこされているレンはかわいい。

僕の弟と妹が、世界一かわいい。


「なに、ボーっとしているんだ? ヒュー」


いつのまにか隣にいたアリスターが眉を少し顰めて僕の顔を覗き込む。


「んんっ。いや、別に。アリスター……冒険者の恰好が似合うな」


アリスターはいつもの騎士見習いの簡易鎧ではなく、冒険者のような皮の胸当てと籠手、ブーツを身に付けている。


「元々は冒険者だからな」


ニッと茶目っ気たっぷりに笑い、腰に佩いた剣を見せてくる。


「鞘だけ変えたのか?」


「ああ。団からの支給品は目立つし金持ちに見えるからな。けど、やっぱり使い慣れた剣じゃないと落ち着かないから鞘だけ変えたんだ」


装飾のない汚れた皮の鞘に収まっているのは、騎士に支給されている長剣らしい。


「俺の恰好だけじゃないぜ? 馬車も裕福な市民仕様になっている」


アリスターの促しに視線を向ければ、用意されていた馬車は辺境伯家や騎士団で利用している馬車ではなく、簡易な箱馬車だった。


「しかも、もう一台は幌馬車か」


塗装されていない木目の箱馬車には、僕とレンが乗るだろう。

もう一台の幌馬車には、荷物と同行者の休憩用か……。


結局、今回の旅には僕とレンの他に、アリスターとアルバート叔父様の冒険者パーティー、そしてセバスとなった。

幌馬車の馭者には、神官でもあるザカリーが座り、アルバート叔父様と猫獣人のミックは馬に乗って移動するみたいだ。


「俺は箱馬車の馭者席にいるから」


ポンッと僕の肩を軽く叩いてアリスターが小脇に火の精霊ディディを抱えて歩いていく。

そろそろ、出発の時間だからか騎士団の方から見送りの者たちがこちらに歩いてくるのが見えるし、屋敷からも使用人たちが出てくる。

さて、レンたちはまだかな?









今日は隣国へ行く日です。

セバスにお願いされた日から、準備を進めてきて忘れ物はない……はずです。

いっぱいリカちゃんと遊んだし、お昼寝もしたし、母様にもいっぱい抱っこしてもらいました。

いや、あのね、ぼくの体は五歳ぐらいだけど、前世も入れたら十歳は越えているんですよ?

ちょっと……恥ずかしかったです。

でも母様は柔らかくてあったかくて、抱っこしてもらっていてなんだか嬉しくて切なくて涙が出そうでした。


だから、隣国に行ってもぼくは大丈夫です!

もう、我儘言いません! て宣言したら、兄様が悲しそうな顔をして「もっと我儘言っていいんだよ?」と抱きしめてくれました。

あれ? 我儘言うと怒られるんじゃないのかな?


「レンは我慢し過ぎだから、我儘を言うぐらいでちょうどいい」


そうかな? ぼくが我慢していると皆が悲しいと訴えてきたので。少しずつ希望は口に出すようにします。

でも……白銀たちみたいには、なれそうもありません。

ねえねえ、まだ納得してないの?


「だーかーら、瑠璃がダメで紫紺もできないんだったら、一か八か俺がやってみるって言ってんだ!」


「だーかーら、アンタがやったら、皆が空中分解しちゃうって言ってんの!」


「ピイッ!ピーィ」

<やめろ、バカ! 俺様はまだ死にたくない>


賑やかだけど、そろそろ出発する時間だからさぁ、大人しく馬車に乗ろうよ。


「レン。どうしたんだ?」


お部屋からなかなか出てこないぼくたちを心配して、父様がひょっこりと顔を見せた。


「とうたまぁ」


ぼくは、父様のいる扉へとてとてと歩いていく。

父様はしゃがんでぼくを待ち構える姿勢をしてくれる。


「しろがねとしこんが、てんいするってぇ」


「はあ? まだ転移魔法は使いこなせていないんだろう?」


父様の言葉にぼくは大きく頷く。

魔法を使うのに一番マトモな紫紺でさえ、ブリリアント王国内でしか転移魔法は成功していない。

というよりも、転移魔法を思い出してから行った場所しか転移できないから、どっちにしてもアイビー国へは転移できない。

真紅はそもそも神気が不足しているから、転移魔法に限らず難しい魔法は使えない。

神気が強いのは白銀だけど、相変わらずコントロールができないので、自分以外の転移魔法は成功率ゼロ%だ。

しかも、頼みの綱の瑠璃は、訪れたことのある海がある国にしか転移できないので、内陸の国であるアイビー国へは転移できない。


「だから、ダイアナに転移してもらうって」


「そうなんだけど……」


ぼくは、そうっと白銀たちの方へ顔を向ける。


「きぃーっ! あんな失礼な女に借りなんて作りたくないわーっ」


「だから、俺がやるって!」


「ピイピイ」

<バカ犬! 俺様を殺す気かっ>


ギャンギャン言い合いながら外へと歩きだした白銀たちに呆れ顔のぼくと父様は、黙って手を繋いでお外へ出て行くのだった。


お外に出る扉の前で、母様とリカちゃんを抱っこした乳母のバドと合流。

リカちゃんはスヤスヤと眠っています。

しばらくお別れだね。


「いいこでまっててね」


起こさないようにそぉーっと頭をナデナデ。


「レンちゃんも気をつけて。無理しないでね」


母様の優しい手がぼくの頭をナデナデ。


「あい!」


さあ、アイビー国へ出発だっ!


「だーかーら、俺が!」


「うるさいわねっ。だったらアタシがやるわ!」


「ピーイ」

<俺様はまだ死にたくなーい>


……まだ、揉めているの?






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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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