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穢れ 6

じーっと待つ。


パチッと片目だけ開けて、神様の像の様子を窺う。

もう一度、目を閉じてお祈り。


――神様。シエル様? いらっしゃいませんかー?


返答なし。

あれれ? お留守なのかな? それともここじゃぼくの声が届かないのかな?


またまた、パチッと片目を開けて、周りを窺う。

神様の像、異常なしで、父様たちはお祈り中で、白銀と紫紺はのんびり欠伸してたり毛繕いしてたり。

むー、もう一度、チャレンジだ!


――かーみーさーまー! レンでーす! おおーい! もしもーし!


…………………………。

…………………………。

諦めかけたそのとき、ノイズのひどいトランシーバーからの音声みたいな声が微かに聞こえた。


――レンくん!


――シエル様?


――そ……だよ。ご……んね……とおい……ころにいる……ら、あえ……い……よ。


んゆ? シエル様は今は遠い所にお出かけしているから会えないってことかな?


――また……いに……てほし……。


んん? 「また会いに来てほしい」かな?


――あい! また来ます。でも……兄様の穢れを綺麗にしてほしいんです!


それも、今すぐに!


――えっ! け……れが? どおし……う。あ、そう……。あした…………を、いかせ……ね!


え? 何を? 誰を? シエル様にもっと詳しいことを聞きたいと思ったら「ブツッ」と通信が切れたときの音とよく似た音と共にシエル様の声が聞こえなくなった。


「ああーっ」


目を開けて神様の像に縋るように駆け寄ったら、ひょいと父様に抱き上げられた。


「こらこら。ダメだろう? 大人しく座っておいで」


「…………あい」


しゅんとして、父様が椅子に座らせてくれるのに大人しく従うと、左右から白銀と紫紺がポテンと頭を膝に乗せる。


「どうした?」


「会えなかったの?」


ぼくはガッカリとした顔を隠しもせずにコクンと頷く。

シエル様はこちらの世界の創造神様で、あちらの世界でも土地神様だから忙しいのはわかるけど、兄様の穢れを綺麗にしてほしかった……。


「明日って言ってたのか?」


「遠い所ってどこよ? この世界で()()方が遠い所なんてあったかしら?」


とにかく、兄様の穢れについては明日、何かまたは誰かがなんとかしてくれるらしい。

若しくは、今から神官様から兄様がお清めを受けて効果があればいいんだけど。


お祈りが終わった父様が扉の外で待っていたシスターに声をかけて、祈祷室から出てぞろぞろとまた移動します。

二階にある部屋の一つで、「解呪解毒」の処置を行っているそう。

その部屋には、光属性の魔法が使える神官様と兄様と付き添いの父様だけか入っていく。

ぼくたちはしばらく隣のお部屋で待ちます。

お茶の一杯を飲む時間よりも早く兄様たちが戻ってきました。


「じゃあ、城に行くか…………嫌だけど」


父様が正直な感想を漏らすけど、それはきっと言ってはいけないことだと思います。

フィルがいい笑顔で父様の耳に何か吹き込んでいるし、父様の顔色は段々と冴えなくなってきます。


「まったく、あの子は。いつまでたっても腹芸のできない」


ナディアお祖母様が、やれやれとそんなことを呟きました。










「ダメだったみたいだね」


兄様が眉をしょんぼりさせて、馬車の窓の外を見ます。

ああ、いや、窓に張り付いてる水妖精のチロを見ています。

チルとチロは朝から外へパトロールと言いつつ遊びに行っていて、ようやく戻ってきたんだけど……兄様の穢れが祓われていないので馬車の中には入らず窓の外にへばり付いています。

チルはぼくの側に行こうとするんだけど、チロに掴まれていて動けないみたい。


「神官でもダメか。やっぱり浄化が必要か」


父様までムムムと難しい顔をして黙り込みます。


「おねがいする?」


「は? 誰に?」


明日まで待てないなら、浄化できる人にお願いするのはどうでしょう?


「んとね、みずのせーれーおうしゃま? ひのせーれーおうしゃま?」


水の精霊王様はおっかないけど、チルに頼めば連れて行ってもらえると思うし、火の精霊王様はディディに頼めば連れて行ってもらえる。

どこにいるのかわかるのかって?

だって妖精の輪(フェアリーサークル)を使えば、異次元にある精霊界と繋がることができるんでしょ?


「……レン。僕の心配をしてくれるのは嬉しいけど……さすがに精霊王様に頼むのは……不敬」


「んゆ?」


ダメなのかな?


「いいんじゃねぇの。あいつらの仕事の一つが浄化なんだから、ヒューの穢れぐらい祓ってくれるだろうよ」


「そうね、水のは気難しいからアレだけど、火のはこの間の貸しがあるから大丈夫だと思うわよ」


ほら、白銀と紫紺も賛成してくれたよ?


「コホン。それは、最終手段にしましょうか。ほら、お城に着いたわよ」


ナディアお祖母様が扇をバアッと開いて口元を隠し、つうーっと顔を背ける。

ガタンと馬車が停止して、外から馬車の扉がそっと開けられた。

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