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お城へ 3

誤字脱字報告ありがとうございます!

いつも、ありがとうございます。

ぼくの呼びかけに、瑠璃から貰った鱗で作ったペンダントがチカチカと明滅して、中からブワッと煙が噴き出てくる。

室内にいた全員が眩しさと煙で目を瞑り、部屋の壁際に控えていた騎士さんたちが「王を!」「陛下!」とか叫ぶ声とバタバタと走る足音、カチャッと剣を抜く音が聞こえた。


「ふうっ。待ちくたびれたぞ、レン」


「るーりー」


ぼくは座っていたソファーからぴょんと飛び降りて、人化した瑠璃の足にひしっと抱き着く。


「そ……その方は?」


騎士さんたちに四方をガッチリと護られた王様が震える指で差しているのは、瑠璃だよ。


「驚かしてしまったか? 儂は聖獣リヴァイアサン。レンとお友達になって瑠璃の名前を貰った者だ。よろしくな」


瑠璃は王様たちを興味無さそうに一瞥したあと、ぼくの体を抱っこしてソファーに座る。

火の中級精霊のディディは、慌ててソファーの背を駆け上りアリスターの腕の中に戻っていった。

強い水の気は、まだ精霊として修業中のディディには厳しいらしい。

今の瑠璃は、いつもと違って聖獣リヴァイアサンとしての神気を少し出しているらしいから。

ぼくは、全然感じないんだけどね。


「……こちらこそよろしくお願いします。ブリリアント王国、国王アルフレッドです」


王様がわざわざ立ち上がってペコリと頭を下げたのを見て、騎士たちも慌てて膝を付き頭を下げる。

王妃様も王子様も宰相様もみんなが畏まってしまった。


「いい。楽にせよ。レンが気遣うでな」


シッシッと犬を追い払う仕草で瑠璃は王様たちからの挨拶を受け取った。

そこへ、再びボワッボワッと煙が立ち昇る。


「おいっ! 白銀、紫紺。お前たちまでーっ」


煙に咽ながら父様が何か叫んでいたけど、ぼくの足元に控えていた白銀と紫紺は瑠璃に負けじと人化してしまったみたいだ。


「神獣フェンリル。白銀だ」


「聖獣レオノワール。紫紺よ」


瑠璃は、いつも夢の中で会う服装の、着物みたいなズルズルした服を腰の辺りで綺麗な色合いの組み紐で縛っていて、深い緑色の髪をゆるく三つ編みにして左胸に垂らしていた。

白銀は、ブルーベル辺境伯騎士団の騎士の正装に近い鎧姿だけど、鎧の色が白銀の体毛と同じ輝く白銀でペカペカです。

でも髪の毛は相変わらずあちこちに跳ねて無造作に伸ばしたままなんだよね。

紫紺は、最近マイブームって言ってた外国風のお洋服。

前世のテレビで見たことがあるけど、パンクファッションっていうの? お洋服にいっぱいトゲトゲが付いてたり、鎖が巻き付いてたり、ベルトがいっぱいあるの。

綺麗な長い黒紫の髪は高く結い上げて、簪に似た髪飾りをいっぱい挿している。


「「「レンとお友達だ」」」


三人で声を揃えて宣言することじゃないけど、ぼくはとっても嬉しいよ。

白銀たちが人化しちゃったので、慌てて侍従さんたちがソファーを運んできてくれたし、メイドさんは手を震わしながら白銀たちにお茶を淹れてくれたよ。


「なんで俺が席を移るんだ」


ブツブツ文句を言ってたのは父様だ。

ぼくと兄様と白銀たちがソファーに座るから、新しく運ばれたソファーにナディアお祖母様と一緒に移ってもらったんだ。

でも狭いからぼくは瑠璃の膝抱っこです。


「なんで爺が抱っこすんだよ!」


「そうよ、アタシの柔らかい太腿にいらっしゃい」


「お前たちはずっとレンと一緒だろうが! たまには儂に抱っこさせろっ」


というやりとりがあって、ぼくは瑠璃の膝の上になりました。

みんなが改めてソファーに座って、ひと口紅茶を飲んで落ち着いたなーと油断していたら、()()は起きた。


<バカヤロー! 俺様だって神獣様だぞーっ! なんで紹介しねぇんだ! ムカつくから火炎を吐くぞーっ!>


ピイピイ、バササバササッと籠の中の真紅がうるさく喚き始めてしまった。


「あ、忘れてた」


父様が正直に白状するものだから、真紅は余計激しく暴れ出す。


<ふざけんなっ、ギルバート! お前人間ごときの風情で俺様を忘れてただとぅ? この国滅ぼすぞ!>


段々、真紅の脅しも過激な内容になっていくから、ぼくの顔から血の気が引いてしまう。


「ちっ。()るか?」


()っちゃいましょうか?」


白銀と紫紺の目がギラリと光る中、瑠璃がひょいと真紅の首を指で摘まみ上げ、ブラブラと大きく左右に揺らす。


<バッカ、放せよっ、はーなーせー!>


「お主、今は碌に神気もないのだろう? その状態でよく、我らが三人揃っているときに好き勝手に言えたものじゃ。……潰すぞ?」


最後はボソッと真紅の耳元で囁かれたからぼくには聞こえなかったし、そのときぼくは白銀と紫紺に「しんくをいじめるのはだめー!」と諭していたので気づかなかった。


「ほい。これが神獣フェニックスの成れの果てじゃ。お前たちは気にしないでもいいぞ。今はただの体が熱い小鳥ごときじゃし」


瑠璃はニコニコと満面の笑みでポーンと真紅の小さな体を王様に向かって放り投げた。


「わわわっ。わあーっ!」


王様、ナイスキャッチ!


<俺様、神獣フェニックス様なのにぃー。偉いのにぃー。跪けよー、伏せろよー、崇め奉れよー>


真紅は王様の両手の中で、びええんびええんと泣いていたけど、いつものことだよね?


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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