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帰ってきたブルーベル辺境伯領 5

急遽、母様の出産とぼくと兄様の王都行きが重なって、お屋敷の中はてんやわんやの状態です。

あの、ゆったりと優しい微笑みを絶やさないマーサまでが、お屋敷の中を早足でパタパタとしています!

あ、セバスはいつもどおりでした。

ナディアお祖母様だけでなく、シェリーお祖母様までがやってくるので、客間の用意もしなきゃ!とリリとメグまでが洗濯や掃除をしているんだよ。


そして、ビックリすることがもう一つ!

エドガー様がお帰りになる前に辺境伯邸でディナーパーティーが催されることになって、ぼくたちも参加。

そこで、母様のようにお腹が大きく膨れたレイラ様と再会して、思わず「わあっ!」て声が出ちゃった。

母様より一ヶ月遅く赤ちゃんが産まれる予定なんだって!

ハーバード様はいつものように無表情に見えたけど、なんとなく嬉しそうでした。

ユージーン様は……なんか今は産まれてくる弟か妹より彫金に興味があって、両手の指全部に自分で作った指輪を嵌めていたよ。

正直、彫金のセンスはないと思う……。


エドガー様はその後、父様に挨拶をしてブルーフレイムの街へ帰っていきました。

ほんの数日で……すごいやつれてたけど、どうしたんだろうね?


父様は朝ご飯を食べたら辺境伯邸に行ってハーバード様とお仕事や王都に行ったときのお仕事の確認、お昼ご飯を食べたら騎士団の執務室でお仕事をして、夕ご飯のときにはゲッソリしながらお酒を飲んでいます。

なんでも、ナディアお祖母様と一緒に、騎士団の副団長マイルズさん(ぼくは「マイじい」と呼んでいる)がブループールの街に戻ってくるまで、父様が二人分のお仕事をしなきゃダメなんだって。

いつもはセバスが手伝ってくれるんだけど、セバスは母様のフォローで忙しいからね。


「……このままだと、俺は死んでしまう」


フォークでツンツンと野菜をつついて、小声でブツブツ言っている父様が不気味です。


「そんなに大変ならアル君にお手伝いを頼んだら?リン君でもいいし」


母様のナイスな提案に、父様は苦虫を噛み潰した顔を見せました。


「あいつらに頼むなら、ヒューのほうが頼りになる」


……兄様はまだ十三歳では?こちらの世界では、子供でも働くんだとはアリスターから教えてもらっていたけど?


「父様。僕にはまだ早いですよ?」


兄様が困ったように笑うと、セバスが父様の皿から苦い野菜を選んでまとめて父様の口に突っ込んだ!


「んぐぐぐぐ」


「いいから、早く食べろ」


セバスはそのまま涼しい顔で、ぼくのグラスに果実水を足してくれたよ。


「ありがと、セバス」


うん、セバスに逆らってはいけません。










夜、兄様とさらに小さい子犬子猫みたいな白銀と紫紺と同じベッドに入って、スヤスヤと眠っている静かな夜。

真紅?真紅はせっかくアルバート様が取ってきてくれた太い止まり木が気に入らないから使わず、リリとメグが用意した籠にふかふかのタオルを敷いて眠っているよ。

ぼくとは一緒に寝てくれない。


夢の中に不思議な部屋が出てきた。

でも、ぼくはここを知っているから、短い足を頑張って動かして走る。


「るーりー!」


椅子に足を組んで座っていた人化した瑠璃が、走ってくるぼくを見て目を嬉しそうに細める。


「るーりー!こんばんは!」


ぼくは眠っているから夢の中だけどね、挨拶は大事です。


「こんばんは、レン」


瑠璃がぼくの頭を撫でてくれたあと、両脇に手を入れてよいしょと対面の椅子にぼくを腰かけさせる。


「レンが心配していると思ってな。遅れていたナディアたちは明日の朝には屋敷に着くぞ」


「ほんとう?」


ナディアお祖母様は予定していた日に到着せず、早馬の伝令だけが来た。

どうやらブルーパドルの街で起きたトラブルが長引いて、出発が遅れてしまったらしい。

トラブルについては、父様もセバスも教えてくれないから、何が起きたのかは知らないけど。


「よかった。ばあばにあえる」


ぼくは、ナディアお祖母様を思い出してニコニコです。

あんまり遅れるなら瑠璃に頼んで送ってもらおうかなぁて企んでいたんだけど、白銀と紫紺がダメって反対するんだもん。

瑠璃にそのことを話してもダメって。

ぶー、だよ。

その後、白銀と紫紺だけでこしょこしょと「瑠璃がこっちに来たら……」「そのまま居座る……」「帰らないぞあいつ……」とかブチブチ文句を言ってたっけ?


「レン。白銀と紫紺のことは放っておけ、儂は全部知っている」


瑠璃がお茶のカップを口に運びながら、ふふふと忍び笑いをしているんだけど、ちょっとぼくの背中がゾクッとしたよ?


「そうそう、レンに伝えたいことがあったのじゃ。プリシラだが見事人魚族として一段成長していたぞ。会うのを楽しみにしているがいい。それと……レンが待ちわびているものはすぐに会える。心配しなくてもよい。だが」


瑠璃は少し言いにくそうに口を引き結んだ後、僕の頬を撫でて悲しそうな顔をした。

なんで?


「もう一方は厳しいかもしれん。どちらか一方……もしかしたら両方……諦めなければならん。心を強く持てよ」


「んゆ?」


なんのこと?ぼく……わからないよ。

ちゃんと瑠璃に教えてもらおうとしたら、部屋がユラユラと揺らいで霞んでいく。

あ、夢が覚めちゃう!


「るり?なあに?ぼく、わからな……。るーりー?」


ああ……目が覚めちゃったよう。



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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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