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帰ってきたブルーベル辺境伯領 4

誤字脱字報告ありがとうございます!

いつも、ありがとうございます。

兄様がブルーフレイムの街へ行っている間、お世話ができなかったお馬の様子を見に行って、一緒にブラッシングをしました。

白いお馬はまだ若くて、もう少し大きくなるそうです。


「にんじん、たべゆ?」


「人参だけじゃなくて、いっぱい食べるよ。この仔はリンゴが好きみたいだ」


兄様が優しい顔をして、お馬さんのお鼻をなでなでしました。

お馬さんはブヒヒヒンと嘶いて、リンゴや野菜が入った餌桶に顔を突っ込みます。

そこへ、バーニーさんが顔を出して兄様とアリスターに騎士寮近くの空き地に近づかないようにと。


「なんでです?」


朝は特に変なことはなかったとアリスターが言うと、どうやら雨も降っていないのにぬかるんだ箇所があり、知らないで足を踏み入れると靴やズボンが汚れるから、バーニーさんたち何人かが手分けして注意して回っているんだって。

むむむ、気を付けないと、ぼくの身長だとかなりずっぽり嵌ってしまいそう。


「大丈夫だよ。レンのことは僕や白銀、紫紺がちゃんと守るから」


「ああ。だけど泥だらけにはなりたくねぇなー」


鼻にくしゃとシワを寄せて白銀が言うと、紫紺がボソッと「風呂嫌いのくせに」と揶揄する。

怒って紫紺を追いかけ回す白銀を、みんなで笑いながら眺めてました。








夕食後、家族みんなでサロンでまったりと食休みをしていると、辺境伯邸から戻ってからずっと暗い顔していた父様がゴクリと喉を鳴らしぼくたちに話しかけます。


「あ、あのなヒュー」


「はい、なんですか?」


ぼくを膝抱っこしたまま、兄様が父様に顔を向けます。

ぼくは母様の大きいお腹をなでなで。


「そのぅ……。あのなぁ……。ちょっと、お願いがあるんだが……」


「……?なんですか?」


挙動不審な父様に、訝し気な兄様。

白銀と紫紺は伏せの体勢でゆっくりと尻尾をユラユラ。

真紅は小っちゃい嘴で羽をチョンチョン。


「……セ、セバス!頼む代わりに話してくれっ!」


あ、逃げた。

父様以外の全員が同じことを思った。


「ふーっ。しょうがないですね。ヒューバート様、レン様。お二人に王家から招待状が届いています。王都にある王城へ、陛下への謁見命令です」


ひええええっ!王様とお会いするの?


「なんで僕が?……それになんでこの招待状は、くちゃくちゃなんだろう?」


兄様の疑問に、父様はすうーっと顔を背けました。

くちゃくちゃに変わり果てた招待状をゆっくりと読む兄様は、ふうっと短く息を吐いて僕を向き合うように抱き直す。


「んゆ?」


「レン。王様が僕たちとお会いしたいって。たぶん白銀と紫紺、瑠璃と会いたいんだと思う。それに今は真紅もいるし。僕も本当ならもっと前に会うことになっていたんだけど」


兄様は視線を落として自分の足を見る。

兄様は馬車の事故で足を怪我して車椅子の生活だった。

その怪我がポーションでも治癒魔法でも治らなかったのは「呪い」のせいだったんだけど。

本当だったら王子様と同年代の貴族の子息子女を集めたお茶会に参加する予定だったらしい。


「でも……あかちゃん」


王様に会うのが嫌な訳じゃないよ?緊張するけどね。

でも今ここを離れて王都に行ったら、母様が産む赤ちゃんに会えないよ?


「あかちゃん……あいたいでしゅ」


なでなでするとね、たまに母様のお腹がボコンとするんだよ?それは赤ちゃんが元気な証拠だよね。

しょんぼりする僕の頭をセバスが優しく撫でた。


「大丈夫ですよ。ちゃんと交渉しましたから。王都に行くのは奥様のご出産後で、最短距離を行きます。行って帰ってくるのに約一ヶ月を予定しています」


キリッとセバスは言うけど……王都って行くだけで一ヶ月ぐらいかかるんじゃなかった?


「どうするの?最短距離なんてあったっけ?」


兄様もどういうこと?と眉を寄せている。


「転移門を使わせてもらうことになりました!」


転移門って……何?

セバスの説明でぼくが想像したのは「ワープ」でした。

ここブループールの街から馬車で四日かかる公爵領地に移動して、転移門で「ワープ」して王都の手前の村に到着、その後一日馬車に揺られていると王都に辿り着く、その旅程は五日間。

帰りも同じルートで帰ってこれるから、移動に約十日間、王都滞在が二十日間……もしないから、一ヶ月で行って帰ってくる計算なんだって。


「でもな……。でもな……。赤ちゃんの成長は早いから一ヶ月でも本当は離れたくないんだよぅぅぅ」


父様が涙目……いや、泣いてます。


「ごめんねぇ。ギルはヒューのときも魔獣討伐で三週間ほど森に籠っていたから。今度こそは、て気合が入ってたのよー」


「とうたまもいっしょ?」


ぼくはコテンと首を傾げた。


「そうよ。ヒューとレンちゃんだけなんて危ないもの。ブルーベル辺境伯領地内ならまだしも。王都にはギルも一緒だしナディアお義母様も一緒よ」


「えっ!ナディアお祖母様もですか?」


ナディア様は、ブルーパドルの街に住む父様の母様だ。

ぼくはナディアお祖母様といえないので「ばあば」と呼んでいます。


なんと!ハーバード様は色々と片付けないといけない案件が重なったのでブルーパドルの街から一足早く帰ってきたけど、プリシラお姉さんはまだ帰ってきていないとか。


「向こうでちょっとトラブルがあってな。二、三日すれば帰ってくるんだが、母上も一緒に来る」


元々、母様の出産の手伝いでこちらに滞在する予定だったそうだけど……じゃあ一緒に王都に行ったら母様が困るのでは?


「大丈夫よ。ナディアお義母様の代わりに私のお母様が来てくださることになったから」


ええーっ、シェリーお祖母様が?


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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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