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【11月コミックス2巻発売!】ちびっ子転生日記帳~お友達いっぱいつくりましゅ!~  作者: 沢野りお
火山の街~温泉編~

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温泉大作戦 2

「にいたま。どこにいくの?」


「今日はお客さまが来るから、どこにも行かないよ?」


でも、リリとメグがぼくたちにお着替えさせているお洋服は、ちょっと仕立ての良いものだよね?

セバスが、白銀と紫紺の毛並みをブラシで綺麗に整えながら、お客さまの正体を教えてくれた。


「今日は依頼で出かけていたアルバート様たちのパーティーが街に戻られるので、ここまで拉致……じゃなくて、ヒューバート様の元へご挨拶に来て下さるのですよ」


ん?セバス、今さぁ、「拉致」って言わなかった?


ぼく、ちゃんと知っているんだよ。

父様やハーバード辺境伯様に、ドラゴン騒ぎの真偽を確認に行く兄様の補佐として付くように頼まれていたアルバート様たちは、ぼくたちのことをすっかり忘れて冒険者ギルドの依頼を受けて遠出してたんだよね。

約束を破ったアルバート様たちに、セバスはプンプンなんだ。

兄様もちょっと笑顔が怖い。


でもアルバート様にブルーフレイムの街の街長であるエドガー様の相手をしてもらわないと困るんだよなぁ。

高ランク冒険者としてドラゴン騒ぎを上手に納めてほしいのと、温泉を掘るのに許可をもらってほしい。

特に温泉!

兄様たちはイマイチ盛り上がりに欠けるんだけど、リリとメグは美容にいいと聞いて大興奮なんだ!

温泉の成分にもよるけど、少なくとも血行はよくなるから、美肌にいいと思うよ。


ぼくと兄様がよそ行きの服に着替えて、白銀と紫紺の毛並みもふっわふわのピッカピカになって、おっと!真紅の毛並みも整えてあげよう。


<やめろっ、くすぐったいわ!>


「だめー!きれいきれいにするのー」


バッサバサと羽ばたいたら、羽が抜けちゃうよー!

ぼくが逃げる真紅を追いかけていると、白銀がふんっと乱暴に前足で踏みつけた。


<いってぇーっ>


「うるさい。大人しくしろ」


ぼくに褒めて褒めてと胸を張って白銀がアピールするけど……、白銀が踏んだら真紅の羽がボサボサになっちゃった……。







「まあだ?」


「うーん、お昼前には戻ってくるって聞いてたんだけど……」

レンの何度目かの問いかけに、僕は苦笑して答える。

ブルーフレイムの街の街壁門前には、辺境伯騎士団の小隊をクライヴが率いてアルバート捕獲作戦を決行させているらしい。

街に着いたら問答無用でこの宿まで引っ張ってくると、セバスはいい笑顔で教えてくれた。

戻ってきたらレンを紹介して、一緒にお昼ご飯でも食べようと思っていたけど、あんまり遅いようだったらお腹を空かせたレンが可哀想だな。


「セバス。僕たちだけでお昼にしよう」


「はい。かしこまりました」


セバスも僕と同じことを思っていたのか、ひと声かけただけでリリとメグが動き出し、部屋のテーブルにはいろいろな料理の皿が並べられる。


「さあ、レン。お昼を食べようか」


「あい!」


白銀と紫紺用のお皿にも肉をたっぷりと用意をさせてあるし、小鳥姿の神獣フェニックス様用のお皿も用意してあるけど……、あれでいいのかな?


<なんで、俺様は肉じゃないんだよっ!野菜や果物ばっかり食えるか!>


剥かれた果物が美しく飾られたお皿を、小鳥の足がゲシッと蹴るが、お皿はびくともしない。


<くっ……>


「たべもの、だいじなの。けったらめー!」


レンが小さな手で、小鳥からお皿を離して、フォークで桃をひとつ差して「あい」と小鳥の口元まで持って行く。


「どーじょ」


<うっ。だから……肉……>


ピィと何故か悲しそうに鳴いて、嘴で差し出された桃を啄む。

小鳥の話していることがわかるのが、白銀たちとレンだけだから、いまいちどう接していいのかわからないな。

小鳥のレンに対しての態度には不満があるが、白銀と紫紺が監視しているから酷いことはしないだろう。

それより、気になるのが……。


「しんく。おいちぃ?」


こてんと首を傾げて小鳥に話しかけるレンの愛らしさ。


<……けっ。あめぇ>


レンとは会話ができているらしいが、僕たちにはピィピィとしか聞こえない。

ただ……、レン、しんくって真紅かな?名前、付けちゃったのか……。

神獣フェニックス様に名付け。

神獣フェンリル様と聖獣レオノワール様、聖獣リヴァイアサン様に名付けていて、今更だけど……。


「契約はしてないよね……」


「そうですね。フェニックス様が拒否されている間は大丈夫だと思いますが。レン様相手にいつまでその態度でいられることか……」


セバスの言っている意味がよく分かる。

あの愛らしいレン相手に、つれない態度などいつまでもキープできるわけがない。


「レンは愛されるために、僕たちの側にいるからね」


僕たち家族や神獣聖獣、妖精精霊に愛されるレン。


僕は、疑うこともなかった。

レンに疑いの眼を向ける人間がいることを。

それが、自分に近しい人間だということを。



「ヒューバート様。アルバート様たちをお連れしました!」


食後のお茶を嗜んでいる頃、クライヴがアルバート叔父様を拉致……じゃなかった、連れてきてくれた。





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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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