火の小鳥 4
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いつも、ありがとうございます。
ぼくは、テーブルの上に乗ってひょこひょこ動いている赤い小鳥を、ほんわかした気分で見つめていた。
両隣に苦虫を噛み潰したような顔の白銀と紫紺がお座りしていて、ぼくの頭の上をふよふよとチルが飛んでいる状況の中で。
兄様はセバスとアリスターを連れて、人を探しにブルーフレイムの冒険者ギルドへお出かけしている。
ぼくの護衛にと、騎士団のクライヴとレイフがお宿に残っていてくれています。
みんなの迷惑にならないように、お部屋にじっとしているんだけど、楽しいよ?
神獣フェニックス様の小鳥姿を見ていると和むんだぁ。
ドラゴンがいなかったのはちょっと残念だけど、街や人に被害が無かったから良いことだったし、もしかしたらこの街に温泉ができるかもしれないんだもん。
もう、ぼくの気持ちはこの真ん丸小鳥と温泉に持っていかれているのだ!
ま、温泉発掘のためには「掘ってもいーよ」と、例の意地悪エドガーさんに許可をもらわなければいけないらしいけど。
「にいたま、あえたかな?」
エドガーさんに交渉するために、父様の弟のアルバートさんを探しに行っている兄様を思い浮かべてしまった。
アルバートさんはブルーベル家の末っ子で、辺境伯を継いだハーバード様、辺境伯騎士団を率いている父様と違って、半ば出奔する形で冒険者になり、あちこちフラフラしていたそうだ。
兄様とぼくが拉致されたあの事件のとき、本来はブルーベル家の一員として働かなければならないところ、うっかりダンジョン攻略に夢中になり、気が付いたらすっかり終わっていたという失態を犯した。
そのペナルティでしばらくはブルーベル辺境伯領地に留まり、父様たちのお手伝いをすることになったんだけど……。
「どこにいりゅんだろうね?」
今回も兄様の補佐として、ドラゴン騒ぎがあったブルーフレイムの街を訪れているはずなのに……、全然会わなかったよね?ぼくたち。
アルバートさんは冒険者パーティーと一緒に、ぼくたちより先に着いている予定なのに、ブルーフレイムの街でもオルグレン山の付近でもそれらしい冒険者パーティーはいなかったような?
どんな人か兄様に聞いても、兄様も自分が幼い頃に家を出て行ったアルバートさんの記憶が曖昧らしい。
たぶん、兄様と父様と同じ金髪碧眼のキラキラフェイスだと、ぼくは確信している!
それと、アルバートさんの冒険者パーティーには、あのセバス兄弟の末っ子がいるんだって!
会うのが楽しみだなぁ。
セバスは、別の意味で弟と会うのを楽しみにしていたけど。
なんか、「父上から受けた再教育を弟にも仕込まなければ」と黒い笑みで呟いていたよ?
ふぅっ。
背中に白銀と紫紺の尻尾がぱたりぱたりとリズムよく当たって、目の前の小鳥は愛らしい足取りで動いていて。
「かーいーね」
この幸せ空間に、ぼくもニコニッコです。
「あ、おなまえないと、ふべんなの」
いつまでも小鳥さん呼ばわりは失礼でしょう?
ちょっと太り気味の赤い小鳥の正体は、神獣フェニックス様なのだから。
うーん、と。
短い腕を組んで、小鳥の名前をどうしようと悩んでいるぼくの耳に、白銀と紫紺の内緒話が聞こえてくる。
「どうすんのよっ!レンったらあいつに名前を付けるつもりよ!」
「あ?大丈夫だろう。レンはともかく、あいつがレンを拒否してんだから、繋がりなんか結べねぇよ」
「そう?そうかしら……。なんとなくレンのことだから、やっちゃう気がするんだけど……」
「そりゃ、レンのことだから妖精でも神獣聖獣構わず契約しちまうけど、流石に嫌がられている相手と契約は無理だろう」
…………、そんなに嫌われているとか言わないで欲しいなぁ。
ぼくだって、この小鳥から好かれていないのは分かっているけど、これから仲良くなるんだもん!
そのためにも、まずは名前を付けて、ぼくの名前も呼んでもらって、友達の第一歩を踏み出さないとね!
さて、改めて小鳥を観察してみよう。
ひよこみたいなフォルムと赤い羽毛。長い尾羽と真ん丸なお目々。
うむむむ。
ちょんちょんと小鳥の頭を指で突きながら、白銀と紫紺、瑠璃を並べて考えて。
「……しんく」
やっぱり、フェニックスの羽の色、赤い紅い燃える炎のような色。
真紅。
「しんく!しんくでいーい?」
こてんと首を傾げて、小鳥に尋ねる。