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火の小鳥 3

とにかく、ぼくと兄様はブルーフレイムの街へ戻ってきました。

アリスターと契約した火の中級精霊のディディと、面倒臭い泣き虫神獣フェニックス様の小鳥と一緒に。

ぼくたちの護衛の騎士さんも一緒に戻ってきたけど、オルグレン山の監視のために別行動している騎士さんたちはまだ戻っていない。


「あー、どうしょうかな。冒険者たちが見たのはドラゴンじゃなくて神獣フェニックス様だった……て正直に報告しても、誰も信じてくれないだろうし」


兄様がうーんと腕を組んでそんなことを嘆くと、白銀の背中に乗った小鳥が「ぴぃぴぃ」と姦しく騒ぐ。


<俺様は本物のフェニックス様だぞーっ!>


自己主張を激しくしているけど、ぼくと白銀と紫紺以外に言葉が通じないから、赤いぽっちゃり小鳥がぴぃぴぃ囀っているだけにしか聞こえない。

ぼくも、君が神獣フェニックス様だと人に紹介するのは、ちょっと躊躇します。


「ヒューバート様。とりあえずオルグレン山の監視は続けましょう。期日までに発見できなかったとして報告して終わりです」


「……文句を言われそうな展開だな」


あー、あの意地悪そうな人、エドガーさんね。

ドラゴンはいませんでしたって報告したら、またネチネチと嫌味を言って鼻で笑われそうな予感。


「僕がいろいろ言われるのは構わないけど、父様にまで迷惑はかけたくないな……」


兄様がちょっとしょんぼりするから、ぼくの眉もへにょりと下がります。


「仕方ありません。神獣フェニックス様の話をしても騒ぎを大きくするだけです。しかも今は脆弱な小鳥のお姿ですし……」


そうだよねぇ。

白銀や紫紺みたいに体をわざと小さくしている訳じゃなくて、神獣フェニックスとしての力が枯渇状態なので省エネモードとして小鳥の姿をしているんだって。

だから、小鳥は小鳥のままで本来の姿を取り戻すためには、失った力を時間をかけてゆっくりと取り戻すしかないのだ。


「……ことりしゃん…よわそー」


ボソッとぼくが呟いた声が聞こえたのか、小鳥はバササッと羽を大きく羽ばたかせ、嘴をクワッと開き、


「ぴぃーっ!」

<がきんちょ!喧嘩売ってんのか!やるぞ、やっちまうぞ!コノヤロー>


と威嚇された。

白銀と紫紺はすぐに小鳥を叩き落として、ぺちんと前足で踏みつける。


「かーいいね」


威嚇されても怖くないよ?

赤いヒヨコが強がっているみたいで、とても愛らしいんだ。





さて、困った。


アリスターが火の中級精霊と契約したのは僥倖といえる。

僕の専属護衛として教育中のアリスターにとって、精霊との契約は彼の持つ火の属性魔法の強化が期待できる。

僕の側付きとしても、辺境伯騎士団としても、戦力としては申し分ない。


問題は、神獣フェニックス様の処遇とオルグレン山のドラゴン騒ぎだ。

神獣フェニックス様のことは、僕にはどうにもできない案件だろう。

たぶん、人社会においてどうにかできる者はいないしね。

白銀と紫紺の監視の元、ブルーベル家で保護しないとダメなんだろうな……。


珍しく、レンとは相性が悪いみたいで、彼が神獣フェニックス様と契約するなんて恐ろしいことにはなっていない。

レンは既に神獣フェンリル様と聖獣レオノワール様、聖獣リヴァイアサン様と魂の契約を結んでいるし、水の妖精チルとも契約している。

これ以上の契約は、レンの幼い体に負担がかかり過ぎると思う。

ただ、レンは普通の子供や人族よりも魔力が多い……、いや魔力が無尽蔵にある気がするんだけど。


神獣フェニックス様のことは、手紙で父様と叔父上様に伝えておこう。

そのさらに上への報告は、二人の仕事だし。


ああ、一番の問題はブルーフォン家の兄弟仲だよ。

エドガーとローレンスの兄弟は、幼い頃は仲の良い兄弟だったと聞いたけど、今はエドガーが一方的にローレンスを嫌っている。

二人の仲を決定的にしたのは辺境伯の側近問題だけど、その前から仲がギクシャクするようなことがあったんだろうな……。


僕はつい最近まで一人っ子だったし、年上の従兄弟ユージーンとは仲が良かったからか、兄弟仲が悪くなるなんて想像もできない。

だってそうでしょ?

僕がレンを嫌って嫌って意地悪するってことでしょう?

え、なにそれ?嫌なんだけど……。


エドガーは完全に逆恨みだけど、弟のローレンスを評価したブルーベル家を敵対視している。

そんな奴に「今回のことは、こちらの間違いでした」という内容の報告をするのは悪手なんだよなぁ。

ただでさえ、父様や辺境伯騎士団の副団長ではなく、子供の僕が来ていることで神経を逆撫でしているのに。


「あ!」


僕は唐突に思い出した。

そうだよ!僕たちだけじゃ不安だから、父様と叔父上様はちゃんと保護者を付けてくれていたじゃないか!

今の今まで、すっかり忘れていて、これっぽちも思い出しもしなかったけど。

僕は隣に立つセバスを見上げて。


「ねぇ、セバス。アルバート叔父様はどこにいるのかな?」


ブルーベル辺境伯家に生まれて、自由気ままに冒険者としてフラフラしていたアルバート叔父様が、冒険者パーティーと一緒にブルーフレイムへ来ているはずだったよね?






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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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