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【11月コミックス2巻発売!】ちびっ子転生日記帳~お友達いっぱいつくりましゅ!~  作者: 沢野りお
火山の街~温泉編~

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火の精霊王 7

昨日と同じくゆらりと歪む空間を通り過ぎると、オルグレン山の麓の洞窟前にあっという間に移動していた。

今日は、留守組だったセバスも一緒に精霊界へ行くから、まず洞窟前に何人か騎士さんを配置して、洞窟の奥手前で残りの騎士さんたちを待たして、ぼくと兄様、アリスターとセバスで妖精の輪(フェアリーサークル)を潜ります。


薄暗い洞窟の中から眩い光に包まれて、そうっと瞑っていた目を開けたら……、そこは綺麗に輝く精霊界でした!


「しゅごいっ」


水の精霊王様がいた精霊界はキラキラ輝く世界だったけど、火の精霊王様の精霊界はキラキラというかギラギラ?チカチカ?とにかく色が鮮やかです!


「ふうん。咲いている花も大輪な花が多いし、色も濃いね」


「花だけじゃなくて、葉の緑も色が濃いぞ」


「それより……、この湖から湯気が出ているんですが?」


「んゆ?」


セバスの困惑した言葉に惹かれて湖を見てみると、カラカラに涸れていた湖には水がたっぷりとあって、ユラユラと白い湯気が立ち昇っていた。


「これって……」


湖に手を入れて確かめたいけど、この水の色からは温度がいまいち分からないしな……。

躊躇したぼくの代わりにトカゲがボチャンと湖に入って、頭まで潜ってぷはあっと顔を出してみせた。

その姿を見て、ぼくも恐る恐る手の先を入れてみる。


「わっ!わわわ!」


あったかーい!

これってやっぱり温泉だよね?

瑠璃が教えてくれたのは、この温泉のことなんだよね?


「……はいりたい」


温泉って入ったことがないの、ぼく。

でも日本人って温泉大好きな人が多いよね?

よくひとりで見ていたテレビでも、温泉を巡る旅番組や秘境の湯なんて特番もあって、ぼくも入りたいなーって思ってた。


「どうしたの?レン」


兄様が、湖に手を突っ込んでるぼくを心配して声を掛けてくれた。


「にいたま。おんちぇん……はいりゅ」


「おんちぇん?……ああ、本当だ。この湖の水は随分温かいね」


兄様も手を湖に浸して、ほうっと息を吐く。

え?この世界って温泉ってないの?

ぼくたちの行動を訝しんだセバスも手を入れて、アリスターは湖に入ったトカゲに手を咥えられて湖の温かさに気づいた。


「セバス。レンが湖に入りたいらしいんだが……」


「そうですね。お風呂?みたいな感覚ですし、よろしいのでは?」


「あ、俺も入りたい!」


「その前に、火の精霊王様にご挨拶しなきゃね」


兄様が残念そうに手を拭いて、ぼくの手も拭いて湖から離れて歩き出す。

ああ、温泉が……。

でも火の精霊王様にご挨拶しなきゃ、ダメダメです。




「此度は誠に世話になった」


火の精霊王様は、平たい大きな岩にしどけなく横になり、赤い魅惑の唇をニィと上げてぼくたちを歓迎してくれた。

とってもお綺麗で素敵なんですが、相手がぼくたちお子ちゃまなのが残念です。

昨日と違って、金色の瞳は強い光を宿し波打つ金髪も色艶が増したような?


「ふふふ。どうやらあ奴に奪い取られた力が少し戻されたのじゃ。お陰でここもいくらかマシな姿に戻ったようだ」


火の精霊王様はトカゲをナデナデしながら、そう教えてくれた。

でも戻された力は僅かで、まだまだ不足しているんだそう。

トカゲたち精霊様の力も全盛期と比べたら弱いままなんだけど、避難していた精霊様たちがこちらに戻ってくるから、精霊界もすぐに元に戻るだろうし、ハーヴェイの森に影響も無いだろうって。


「よかったぁ」


くふくふと笑ってたら、火の精霊王様に「愛らしいのぅ」と褒めていただいた。

兄様とセバスが「そうでしょう、そうでしょう」と相槌を打つので、ぼく恥ずかしい。


「ところで、そこの狼坊や」


「へ?俺ですか?」


いきなりのアリスターご指名。


「ふむ。火の属性持ち。魔力はそこそこじゃな……本当に、こ奴がいいのか?」


「ギャウ!」


「……ふむ。仕方ない。坊や、こっちに来い」


「は……はあ」


アリスターがチョイチョイと火の精霊王様に呼ばれて、腰が引けながらも岩の前まで近づき片膝を付く。

火の精霊王様は細い指をアリスターの額に押し当て、ブツブツと口の中で何かを呟いた。


「にいたま。なにしてりゅの?」


「さあ?」


ぼくたちが揃って首を傾げていると、セバスが「まさか……」と焦りだす。

そして、辺り一面に青白い炎が立ち昇り、上空で重なり散って消えた。


「これでいいじゃろう。ほれ、大事にするのじゃぞ」


ほいっとトカゲを手渡されて、呆然とするアリスター。

何が起こったのか分からないぼくと兄様。


「もしかして……アリスターは、火の精霊様と契約が可能になったのでは?」


セバスが呆然としながらも、ぼくたちに状況を説明してくれる。

え?でも、精霊様と契約って相性も大事だけど、魔力も多くないとダメなんでしょう?

アリスターは火の属性持ちだけど、魔力はそんなに多かったのかな?


「いやいやいや、ほいって、こいつ精霊様でしょう?しかも中級の精霊様でしょう?なんで、俺に渡すんですか?」


パニック状態のアリスターは、果敢にも精霊王様にトカゲを返そうとする。

トカゲは尻尾をアリスターの腕や腹にバシンバシン当てて、「ギャウギャウ」と抗議している。


「あー、これって契約しなきゃ精霊界から帰してもらえないパターンだね」


兄様が、やれやれと気の抜けた声でそう言った。

トカゲ……アリスターの妹のキャロルちゃんはトカゲ大丈夫かな?





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◆◇◆コミカライズ連載中!◆◇◆ b7ejano05nv23pnc3dem4uc3nz1_k0u_10o_og_9iq4.jpg
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