表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お気に入り小説1

復讐の女王は、親友の応援もあり、油断ならない宰相と真の幸せを掴む。

作者: ユミヨシ

アレクサルト一世女王陛下、御即位おめでとうございます。


自分に協力してくれた貴族達がこぞって、祝いを述べに来てくれた。


そう、アレクサルト一世を名乗った、フローリアは今、夫であるカルド国王を国庫の金を大量に使いこんだ罪により、国の王として不適切であると、訴えを起こし、それに賛同した貴族達によって、カルド国王は王の位を追われ、フローリアがアレクサルト一世女王として即位したのだ。


カルドは牢獄へ投獄されて、

そして、フローリアは今、一人で王宮の自室で紅茶を飲みながら、窓の外を眺めていた。


長かった。


王太子妃となったのが、18歳の時。それから、10年。国王が早く崩御したせいで、王太子であるカルドが国王へ即位したのが去年の事。そして…国王カルドを追い落としたのが今年で…


カルドとは白い結婚を貫いた。


婚約者の時からカルドは色々な令嬢と付き合っていて、フローリアを大切にしなかったのだ。

愛などなかった。


何よりも前婚約者であったフローリアの親友、ミルディア・アシュラテ公爵令嬢が、カルド王太子の事で悩んで自殺をしているのだ。


許せなかった。


だから、復讐の為にカルドと結婚した。


愛など微塵もない。


いつか、カルドを追い落とす事だけを考えてフローリアはカルドと結婚をし、ひたすら生きていたのだ。



「やっと、カルドを牢獄へ投獄することが出来たわ。」


貴族への根回し…

国王がカルドを追い落とすには邪魔だった。

だから…国王を…


その時、扉をノックする音がして、


「入っていいわ。」


外は稲妻が光り、雷が鳴り響き、雨がザァっと音を立てて降って来た。


「失礼します。このような夜分に。女王陛下。」


「あら、ジェネルド宰相。何か用かしら。」


ジェネルド宰相は、金髪碧眼の若き凄腕の宰相である。歳は35歳。

フローリアの7つ年上である。


フローリアの正面のソファに座ると、ジェネルド宰相は、


「用件を単刀直入に申しましょう。私を王配にしてくれませんか?」


「なんですって?」


「カルド国王陛下とは白い結婚だったと聞き及んでおります。貴方様は憎んでいたのでしょう?カルドを。」


「ええ…憎んでいたわ。」


何故、この男はわたくしがカルドを憎んでいたという事を知っているのかしら…


じっとフローリアをジェネルド宰相は見つめて来て、


「調べはついています。結婚する前、カルドによって、親友の令嬢が自殺に追い込まれている。名前はミルディア・アシュラテ公爵令嬢。」


「さすがね。そうよ。ミルディアは殺されたような物だわ。カルドの浮気に苦しんでいたミルディアは自殺したのよ。湖に身を投げて。2年後に発見されたわ。わたくしは誓ったの。

復讐するって。だからカルドを牢獄へ入れたわ。」


ジェネルド宰相は近づいてきてフローリアの横に座った。

その手を握り締めながら。


「美しいフローリア。国王陛下に毒を盛って殺したのも、復讐の為ですか?」


「何を…何を言っているのかしら…国王陛下は病で亡くなったのだわ。」


「国王は頑健な方だった。それが病で亡くなるなんて…」


「国王陛下の食事には毒見役がいるはずだわ。」


「買収していたとしたら?毒見役の買収。」


この男、危険だわ…


ジェネルド宰相はニンマリ笑って、


「おっと、私は貴方様に簡単に殺されませんぞ。それよりも、貴方様の味方でありたいと思っております。フローリア様。どうか、私を王配兼、宰相に。

私は権力を手にしたい。王配も兼ねれば更に私の思い通りの政が出来る。」


「貴方の優秀さはよくわかっているわ。でも、わたくしを脅すのはよくないわね。わたくしが貴方を敵認定したらどうなるのかしら?」


「私は貴方を敵認定したくはありません。貴方を初めて見た時から、いつかこの手に入れたいと思っていましたから。」


「わたくしを?」


「ええ。貴方は美しい。その銀の髪も、エメラルドのような瞳も…

10年前は私は力が無かった。カルドと結婚した時は絶望に打ちひしがれましたがね。調べましたよ。白い結婚なんて…私は喜びで震えました。

いつか私の物にしたい。そう思っておりました。

フローリア様。どうか私を味方認定してくれませんか。」


フローリアはため息をつく。


人を信じるのはあまりにも、汚れた世界を生きてきてしまった。


「味方認定は出来ません。わたくしは女王になったと同時に、悪女との噂が広がってしまいましたもの。ただ、政治的手腕が優れているから、皆、味方になってくれたわ。

それには貴方の助けもあってこそというのは認めます。ですが貴方を信じる事は出来ません。」


「いいでしょう。今は信じてくれなくても…いずれ信じてくれれば。今はただ、私を王配にして下さればよいのです。」


「信じられない貴方を王配に?」


「貴方だって、子が欲しくはありませんか?貴方の血を引いた子に王の冠を被せたくはありませんか?」


「そうね…女と生まれたからには子が欲しかったわ。でも…カルドに嫁ぐ時に諦めたの。」


「では、私と子を作りましょう。私は貴方の夢を叶える協力者となりましょう。」


「さすが宰相ね。わたくしを何とか説得しようと…仕方がないわね。これからの貴方の態度で決めましょう。それでよろしいのでは?」


「ええ…それでは私はこれから貴方の協力者と認めて貰う為に頑張る事に致しましょう。」


そう言うと、ジェネルド宰相は顔を寄せてキスをしてきた。


そのキスを受けながら、油断は出来ない男だ。流されてはいけないと、

そっとその身体を離して。


「今宵はもう遅いのでお帰り下さいませ。宰相。これはわたくしの命令です。」


「解りました。それではまた後日。」


ジェネルド宰相は礼をして、部屋を去って行った。


流されてはいけない…

人を信じてはいけない…


フローリアはそう思ったのだけれども…




その夜である。


夢を見た。


緑の木々が周りに茂る草地で、白いドレスを着た懐かしい女性が微笑んでいる。


ああ…あれはミルディア。


親友のミルディアだわ。



「久しぶりね。フローリア。」


「ミルディア。」


近づくと、彼女は抱き締めてくれた。


涙がこぼれる。


以前、一度だけ死んだ彼女と会った時は抱きしめる事が出来なかった。

透けてしまって…話しかける時も頭の中に話しかけてきたのだ。

しかし、ここは夢の中…だから彼女も実態があって抱き締められるのだわ。


ミルディアは昔と同じ、18歳の頃の姿をしていた。


彼女は泣きながら、


「わたくしは貴方にカルド王太子に嫁いでほしくなかったの。

貴方を止めようとして、止めたくて…訴えたくて…でも出来なかった。

貴方は王太子に嫁ぐ事を強く心に決めていたから。王太子に復讐する事を強く思っていたから…

でもね…もういいでしょう?貴方自身が幸せになって欲しいの。

あの宰相は油断できない人だけれども、でも…貴方の事を好きだと思っているわ。

わたくしが保証するから…だから幸せになって欲しい。

フローリア。有難う。悲しんでくれて… 復讐してくれて。

わたくしの一番の親友はフローリア貴方だけよ。」


「ミルディア。有難う。会いたかった…ずっと貴方に会いたかった…」


「わたくしもよ。幸せになって…フローリア。わたくしの分も沢山幸せに…」


「解ったわ。幸せになるわ。また会える?」


ミルディアは首を振って、


「これで最後になるわ…もう逝かないと…ずっと貴方の傍にいたの…

ずっと貴方を見ていたの…でも、もうわたくしの魂はとどまる事が出来ないわ。」


「ミルディア…有難う。」


「フローリア。さようなら…」



ミルディアは逝ってしまった。


フローリアは目が覚めて、そして自分は泣いている事に気が付いた。



幸せに…わたくしは幸せになれるのかしら?


翌日、フローリアは、ジェネルド宰相と共に王宮の庭を散歩した。


季節は暖かな春。

綺麗な春の花々が咲き乱れている。



フローリアは赤い花を一輪手に取り、ジェネルド宰相に話しかけた。


「わたくしは、協力者にも裏切られたくはないの。貴方がわたくしを裏切った時、その時は…。」


闇の者のナイフが、ジェネルド宰相を襲う。


しかし、そのナイフは何者かが投げたナイフによって跳ね返された。


ジェネルド宰相はニヤリと笑って、


「そう簡単に私は殺られないと言いましたよ。フローリア様。

それに裏切る理由なんてない。私は貴方に惚れていますから…お美しきアレクサルト女王陛下。私は貴方に忠誠を誓います。」


跪いてドレスに口づけを落とすジェネルド宰相。


フローリアは尋ねる。


「ジェネルド宰相。わたくしは怖いのです。恋に溺れたら…わたくしは強くありたいのに…弱くなりたくはない。」


「私がお守りいたします…愛しいフローリア。だから、どうか私を愛してくれませんか。」


ジェネルド宰相がフローリアを抱き締める。


そして…


「私の名前はカインです。カイン・ジェネルド。どうか、二人の時はカインとお呼び下さい。」


「カイン…」


「フローリア…」


この人を信じてみよう。


誰も信じられずに死ぬのはあまりにも寂しいのではないのか?


ミルディアの言葉を思い出す。


幸せになって…フローリア。


わたくしの幸せは…復讐の為に諦めていた愛する人との生活。


こんな血で汚れたわたくしでも幸せになれるのなら、カインと共に幸せになりたい。



カインが微笑んでくれた。


フローリアはカインに抱き締められたその温かさを、信じる事にしたのである。




カイン・ジェネルド宰相は、王配になってからも更に政の手腕を発揮し、

国は栄えた。


フローリアはカインとの間に一男一女を設け、その息子はアレクサルト二世となって、

更に国を発展させたのである。


フローリアはカインと仲睦まじく幸せな生涯を送ったとされている。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ